•  わが国の防衛体制は、近年、中国の海洋進出や北朝鮮のミサイル発射実験などを念頭に、日本の南西地域での自衛隊の活動を増強する方針が進んでいる。

     これに伴い部隊の新設や新装備の導入が進み、補給や輸送に関わる体制も変化の時を迎えた。新時代に対応する海上自衛隊の補給と輸送の取り組みを紹介しよう。

    災害派遣でも活躍する5隻の補給艦

    画像: 『ましゅう』型補給艦『おうみ』。インド洋や東シナ海での任務や東日本大震災などにも派遣されている

    『ましゅう』型補給艦『おうみ』。インド洋や東シナ海での任務や東日本大震災などにも派遣されている

    「補給艦」とは、洋上でほかの艦へ燃料や物資を補給する艦艇のこと。

     現在、海上自衛隊には基準排水量1万3500トンの『ましゅう』型が2隻、8100トンの『とわだ」型が3隻就航しており、横須賀の第1海上補給隊に配備されている。

    艦長の補佐をする『おうみ』副長・大野茂2等海佐は「補給品ごとに6つの補給場所を使い分け、洋上部隊を支援します」と話す

     補給艦はヘリコプター甲板も設置。自衛隊艦艇への補給だけでなく、災害派遣や国際平和協力活動における人員と物資の運搬、緊急時の在外邦人の輸送など、近年その任務が多様化しており、『ましゅう』型には手術室やレントゲン室もある。

    世界トップレベルの正確な洋上補給

    画像: 護衛艦『やまぎり』(左)に洋上補給する補給艦『おうみ』。海自の洋上補給技術は世界随一といわれる

    護衛艦『やまぎり』(左)に洋上補給する補給艦『おうみ』。海自の洋上補給技術は世界随一といわれる

     艦艇が洋上で継続的に任務に従事するためには、母港に帰らずに洋上で燃料や食料などを補給する必要がある。

     そのために行われるのが、補給艦による洋上での補給だ。洋上補給は補給艦と受給艦が約40~50メートルの距離を保って並行して航行。

     両艦の間をワイヤーとホースでつないで補給する。必ずしも海が穏やかとは限らない環境で速度を一定に保ち行う洋上補給は、高度な技術が必要。

     訓練では自衛艦だけでなくアメリカ軍などの艦艇にも洋上補給を実施している。

    油槽船『YOT-01』が就役

    画像: 油槽船の船名『YOT-01』のYOTとは、港内支援船を示す「Yard」、燃料船を示す「Oiler」、そして「Tanker」の頭文字から取っている

    油槽船の船名『YOT-01』のYOTとは、港内支援船を示す「Yard」、燃料船を示す「Oiler」、そして「Tanker」の頭文字から取っている

    「油槽船」とは基地から別の基地へ護衛艦などが使う燃料を運ぶタンカーだ。海自ではこれまで燃料輸送を民間船舶に頼っていたが、2022年に油槽船『YOT−01』と『YOT−02』の2隻を就役。

     呉警備隊に配備された。基準排水量は約3500トン、全長約104・9メートル、全幅約16メートルで、船内には12個のタンクに約4900トンの燃料を積載。

    『YOT-01』船長・永山文彦3等海佐は「海上から離れた陸上施設へホースを使用した送油も可能です」と話す

     これにより燃料輸送も自己完結できるようになり、輸送期間も民間への委託より短縮できるようになった。

    (MAMOR2024年3月号)
    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

    <文/古里学 写真提供/防衛省>

    物流クライシス2024 日本は乗り越えられるか?

    This article is a sponsored article by
    ''.