15歳から18歳という、遊びたい盛りの青春期を、わが国を守るために、勉学と訓練に費やす若者たちがいる。
その学び舎は、高機能化・システム化された防衛装備品を運用する自衛官となる者を育成する陸上自衛隊高等工科学校。
親元を離れ、校内の生徒舎で規律正しい団体生活を送りながら、日々、奮闘する生徒たちの様子をお届けしよう。
未来の日本防衛を育てる、陸上自衛隊高等工科学校とは?
横須賀(神奈川県)にある高等工科学校は防衛大臣直轄の教育機関。
組織改編で名前を変えつつ68年の歴史を持ち、現在は中卒(見込含)、17歳未満の男子に応募資格があるが、2028年度からは男女共学化される予定。その教育の概要を紹介しよう。
【陸上自衛隊高等工科学校】
所在地:神奈川県横須賀市御幸浜2-1
生徒数:988人
受験倍率:推薦採用試験3.4倍、一般採用試験6.5倍(2023年)
学校長:今井俊夫陸将補
陸曹候補者を育成する、高等工科学校の教育
高等工科学校(以下工科学校)の教育理念は「技術的な識能を有し、『知・徳・体』を兼ね備えた伸展性ある陸上自衛官としてふさわしい人材を育成する」こと。
同校の生徒は特別職国家公務員の自衛隊員として3年間、「生徒手当」(月額10万6900円)を支給されながら教育を受ける。
工科学校で行われる主な教育は3つだ。1つ目は「一般教育」。普通科高校と同様の教育を受け、社会人として必要な知識や教養などを習得する。3学年修了時には高等学校の卒業資格が得られる。
2つ目の「専門教育」は、高機能化し、システム化された車両や航空機、通信電子機器、火器などの陸自の装備品を操作し、その能力を発揮できる専門的な知識や技能を身に付けるための教育を行う。
3つ目の「防衛基礎学」は、陸上自衛官の陸曹候補者に求められる防衛に関わる教養を学習。自衛隊法をはじめとした法令などを学ぶ「防衛教養」と、野外での基礎的な行動のノウハウを体得する「戦闘および戦技訓練」などを学ぶ。
なお、専門教育と防衛基礎学は、現役の自衛官が教員を担当する。
規則正しい共同生活で絆が深まる
生徒は、全員が校内の学生寮「生徒舎」で生活し、規律のある団体行動をとる。
午前6時の起床にはじまり、点呼と清掃、朝食、午前の授業、昼食、午後の授業、クラブ活動、入浴、夕食、自習、清掃、点呼、そして午後10時30分の消灯までを、決められた時間どおりに行う。
日課以外では、体力や気力、チームワークを養うため、各学年ごとに持続走競技会や銃剣道競技会などの競技会を実施。
さらに陸自部隊での研修なども行い、理解と知識を深める。こうして共同生活をしながら勉学に励むため、卒業時までの3年間で生徒同士の絆は深まるという。
(MAMOR2024年2月号)
<文/魚本拓 撮影/増元幸司 写真提供/防衛省>
―開校祭アルバム―