•  どうして自衛隊は、陸・海・空と3つに分かれているのか?そして、どう違うのか? それを知るために、今回は航空自衛隊の成り立ちや特徴、任務などを簡単に説明しよう。自然災害時における救助・救援活動のみならず、昨今の世界情勢を見るにつけ、日本が有事に巻き込まれる心配も現実味を帯びてきた今、国と国民を守る各自衛隊への理解を深めるのは重要なことなのだ。

    航空自衛隊:勇猛果敢にスクランブル発進。任務においてはスピーディーが信条

    画像: 空自の主要装備の1つF-15戦闘機

    空自の主要装備の1つF-15戦闘機

    <空自DATA>(数字は2022年3月現在)

    人員(うち女性):約4万4000人(約3700人)
    基地・分屯基地の数:約70
    舞台となったエンタメ作品:映画『ベストガイ』、『空へ―救いの翼 RESCUE WINGS―』、テレビドラマ『空飛ぶ広報室』、『リコカツ』など
    出身の有名人:本宮ひろ志(漫画家)油井亀美也(宇宙飛行士)亘健太郎(フルーツポンチ・お笑い芸人)など

     航空自衛隊は、日本の「空」を守る組織だ。平素は、日本領空および周辺空域の警戒・監視を行うとともに、国籍不明機による領空侵犯行為に対しては、戦闘機を緊急発進させるなどして対処するほか、海上自衛隊とともに弾道ミサイル防衛のため警戒にあたる。

     そのほか、陸上自衛隊・海自同様、災害派遣や国際平和協力活動に従事する。有事には、主に日本に対する空からの攻撃を撃退する役割を担う。

     人員は約4万4000人。全国24カ所に基地、45カ所に分屯基地がある。近年では、宇宙領域の対応能力強化を進めており、2020年に「宇宙作戦隊」を新編。人工衛星を守るため、宇宙ゴミ(スペースデブリ)や不審な人工衛星を監視する態勢を築いた。

    旧空軍はなかったため、独自の風土がある

     空自は3自衛隊の中では最も新しい組織だ。1954年2月、当時の保安庁内に発足した「航空準備室」が母体となり、同年7月、防衛庁発足とともに「航空自衛隊」として誕生。人員6738人、アメリカから供与された航空機148機でのスタートだった。空自は、旧日本軍に空軍がなかったこともあり、過去の歴史・伝統には縛られずに成長していった。そのため、陸・海自とは若干異なる風土があるともいわれている。

    広報活動では、ブルーインパルスが人気

    画像: 大空に白いスモークで芸術を描くブルーインパルスのアクロバット飛行

    大空に白いスモークで芸術を描くブルーインパルスのアクロバット飛行

     自衛隊の広報活動は、その活動を広く知ってもらうために重要な仕事の1つ。空自を代表する、アクロバットチーム「ブルーインパルス」も広報で大活躍する。特別なカラーリングが施されたT−4練習機を使い、航空祭や国民的行事などで「展示飛行」を行っている。

     正式には「第11飛行隊」といい、宮城県松島基地の第4航空団に所属。各地の空自基地で催される航空祭でブルーインパルスは大人気だ。

    戦闘機以外に輸送機、政府専用機も

    弾道ミサイルの迎撃が可能なPAC-3。国土の狭い日本では安全に発射できる演習場がないため、実弾射撃訓練はアメリカ陸軍の協力のもと、ニューメキシコ州にある射場を使用して行われている

     空自の花形装備は戦闘機。主力のF−15J/DJ「イーグル」戦闘機のほか、日本独自の設計が加えられ、国土に迫る敵艦船を撃破する能力にも優れたF−2A/B戦闘機、そして最新のステルス戦闘機F−35A「ライトニングⅡ」がある。また、艦艇にも搭載でき、島しょ部など長い滑走路のない場所でも運用できる、垂直・短距離離着陸能力を持ったF−35B戦闘機の導入も決定している。

     そのほか、高性能なレーダーを搭載し、上空を監視するE−767早期警戒管制機、最新の国産輸送機C−2などのほか、総理大臣など要人輸送を行う政府専用機B−777も空自が運用している。航空機以外にも、各地に上空警戒監視用のレーダーサイトや、弾道ミサイル防衛の一翼を担うPAC−3をはじめとする地対空ミサイルなどの装備を持つ。

    戦闘機部隊やミサイル部隊、航空救難部隊などがある

    画像: 「令和2年7月豪雨」に関わる災害派遣において、熊本県球磨村で、水没した民家から住民をヘリコプターでつり上げて救助にあたった新田原救難隊

    「令和2年7月豪雨」に関わる災害派遣において、熊本県球磨村で、水没した民家から住民をヘリコプターでつり上げて救助にあたった新田原救難隊

     空自には、上空で脅威に対処するための戦闘機部隊を中心に、遠くから敵を発見するためのレーダーを持った航空警戒管制部隊、弾道ミサイルや敵の航空機を迎撃するための地対空誘導弾(ミサイル)部隊、戦闘機部隊が長時間能力を発揮できるよう支援する空中給油・輸送機部隊、たくさんの貨物を遠くまで運ぶ航空輸送部隊、そして事故などの際、搭乗員の捜索・救助を行う航空救難部隊などがある。

    濃紺の制服。略帽のギャリソンキャップは形が独特

    濃紺色を基調としたシングルのスーツの上下、ワイシャツ、ネクタイ、正帽などからなる空自の制服。写真は略帽を着用。舟形が空自ならでは

     空自の制服は濃紺。正帽の帽章は、ワシの脚部分に旭光があり、それを翼で囲んだもの。中央下部には太陽と星、月、雲が配されている。空自の制服で陸・海と違うものといえば、略式の帽子で正帽の代用品として着用できる「ギャリソンキャップ」。舟形帽とも呼ばれる独特の形状をしている。色は制服と同じ濃紺だ。

    空自隊員同士で使われる“業界用語”解説

    ●Cadet(キャ<カ>デット)
    飛行幹部候補生のこと。飛行幹部候補生とは、航空学生(海自・空自のパイロットなどを自衛隊で養成する制度および学生)の課程を修了し、練習機を使って飛行訓練を行う操縦課程などに進んだ隊員。士官候補生を意味する英語に由来する。

    ●ステイ・ウィズ・リーダー
    戦闘機は一般的に、2機以上の編隊で行動するが、編隊の僚機は編隊長機(リーダー)に付き添い、常に行動を共にしなくてはいけないという心得。

    ●ドルフィン・ライダー
    T−4練習機の愛称である「ドルフィン」から転じて、T−4の操縦者のうちブルーインパルスの操縦者を指す。

    ●ピンク
    空自のパイロットになるための飛行教育において、教官による評価で「不可」を意味する言葉で、かつて不可の評価はピンク色の評価票に書き込んでいたことによる。3回連続でピンクの評価が続くと、パイロットとしての道が閉ざされる可能性がでてくる。

    ●ロリ・コン

    ブルーインパルスの展示飛行課目の1つ。正式には「ローリング・コンバット・ピッチ」という。

    (MAMOR2022年1月号)

    <文/臼井総理 写真提供/防衛省>

    自衛隊には陸海空があるの知ってた?

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