高性能の戦闘機も、前線に弾薬や燃料を運ぶ輸送機も、滑走路がなければ任務を果たすことができない。敵に滑走路が狙われる理由はそこにある。よって攻撃されて破損した滑走路は、すぐさま復旧せねばならないのだ。その任務を担う航空施設隊が、実際の爆薬を使って模擬滑走路を爆破して復旧を行うという、大がかりな訓練を行っている。中部航空施設隊がメインとなり、最新鋭の機器を導入して行った滑走路被害復旧訓練をリポートしよう。
航空自衛隊航空施設隊は、どのような任務を行っているのか?
航空自衛隊の各方面隊隷下の基地、分屯基地の施設の維持・管理の支援を任務とする航空施設隊。攻撃を受けた滑走路の復旧のほかにも、さまざまな役割を担っている。航空施設隊の任務や編成について紹介しよう。
主力の戦力維持のため縁の下の力持ちとなる部隊
航空自衛隊は、日本とその周囲の上空を4つの防衛区域に分けている。そして、各区域の防衛は、北海道と東北北部エリアを北部航空方面隊が、東北南部、関東甲信越、中部、近畿エリアを中部航空方面隊が、中国、四国、九州エリアを西部航空方面隊が、南西諸島エリアを南西航空方面隊が、それぞれ担当している。この各方面隊に所属する基地や分屯基地(レーダーサイトなど)の土木作業や除雪作業のほか、ボイラーや空調設備の検査、災害発生時の道路の補修、さらに破壊された滑走路の復旧を任務とするのが航空施設隊だ。各航空施設隊には、それぞれ1~3の作業隊が配置されている。
4つの航空方面隊の中でも1都2府30県にまたがる広範なエリアを担当する中部航空方面隊の航空施設隊は1961年に新編された。現在、中部航空施設隊を統括する隊本部、第1作業隊は入間基地(埼玉県)に、第2作業隊は第6航空団のある小松基地(石川県)に、第3作業隊は第7航空団のある百里基地(茨城県)に所在している。
各作業隊にはそれぞれの担当区分があるが、作業の内容や規模によっては、各作業隊が協同で任務に当たることがある。また第2作業隊の所在する小松基地は、冬季は降雪量が多いため、航空機が緊急発進できるように24時間態勢で飛行場の除雪作業に当たっている。
航空施設隊の隊員は、ブルドーザーやパワーショベルなどそれぞれ器材、重機の操縦を担当する。近年では土木作業機器にもさまざまなハイテクが導入され、新しい機種も次々と取り入れられているため、実作業を想定した日ごろからの習熟訓練が欠かせない。全ての隊員が大がかりな工事、復旧などに携わる土木作業のプロフェッショナルとしてのプライドを胸に、被害を受けた滑走路を復旧するという任務に当たっているのだ。
<文/古里学 写真/荒井健>
(MAMOR2021年12月号)