•  自衛隊における「女性の配置制限」が見直されて以降、男性しか就けなかった任務・職域に、女性が次々と進出している。近年初配置された女性たちの活躍を紹介しよう。

    2018年、ついに女性の配置制限が全面的に撤廃

    画像: 10年前、女性自衛官の配置制限があった職域。現在これらの配置制限は全て解除されている(MAMOR2021年5月号より)

    10年前、女性自衛官の配置制限があった職域。現在これらの配置制限は全て解除されている(MAMOR2021年5月号より)

     かつて自衛隊では、直接戦闘職域、戦闘部隊を直接支援する職域、肉体負担の大きい職域に、子どもを産み育てる、いわゆる「母性保護」の観点から女性自衛官が配置されることはなかった。これが「女性の配置制限」だ。しかし少子化などにより自衛隊員の人材確保が難しくなったことを背景に防衛庁(当時)が1993年に隊員の配置制度などの見直しを始めて以降、自衛隊の任務の多様化などに的確に対応し、女性が活躍できるフィールドを拡大するため、配置制限は段階的に緩和されてきた。

     2015年に航空自衛隊の戦闘機や偵察機について、17年に陸上自衛隊普通科中隊や戦車中隊、偵察隊などの直接戦闘職域、戦闘部隊を直接支援する職域について、さらに18年、海上自衛隊の潜水艦について配置制限が解除されると、「母性の保護」の観点から女性を配置できない部隊(陸自の有害物質を扱う特殊武器(化学)防護隊の現場部隊と粉じんが発生する現場で活動する坑道中隊を除き、現在自衛隊における女性自衛官の配置制限は全て解除されている。

    女性初のイージス艦長、戦闘機パイロットなどが続々誕生

     陸自では、20年1月に女性初の戦車小隊長が、3月には空てい隊員と機動戦闘車乗員が誕生している。

     海自では、19年7月に女性初となる救難飛行艇機長が、そして同年12月には護衛艦『みょうこう』において、女性初のイージス艦艦長が誕生。潜水艦においては、男女間のプライバシーの確保など環境整備についても慎重な試行錯誤が重ねられてきた結果、20年10月、ついに初の女性潜水艦乗組員5人が誕生した。

     空自における女性パイロットの誕生は1997年。以来、輸送機や救難機を操縦してきたが、体に強い重力がかかる戦闘機や偵察機の操縦に関しては、女性の身体的負担への懸念や、出産や育児などで任務を継続できない可能性もあるとして、起用を制限してきた。一方、海外ではアメリカや中国など、各国が女性の戦闘機パイロットを採用。データの蓄積や女性の能力の活用拡大を踏まえ、15年、空自における全ての配置が女性に開放された。

     女性初の戦闘機(F−15戦闘機)パイロットが誕生したのはその3年後、18年のことだった。また、20年11月には、女性搭乗員のみでの技量向上を目的とした初の練成訓練飛行も実施された。今後も女性自衛官の活躍の場は、ますます広がっていくことだろう。

    第一線で活躍する女性の自衛官たち

    戦車小隊長

    画像: 90式戦車(※)のハッチから顔を出し、小隊に適切な指示を出す黒川3尉

    90式戦車(※)のハッチから顔を出し、小隊に適切な指示を出す黒川3尉

     女性初の戦車小隊長になったのは第72戦車連隊(北恵庭)の黒川慈3等陸尉。最前線で戦車小隊を指揮しながら、自らが乗る戦車の指揮も執る。「幹部候補生時代に見学した戦車部隊の乗員に、『戦車部隊は乗員のチームワーク、一体感の強い職場』と伺い、戦車に乗りたいと思いました」

    機動戦闘車乗員

    画像: 16式機動戦闘車に105ミリ砲弾を搭載する藤原陸士長

    16式機動戦闘車に105ミリ砲弾を搭載する藤原陸士長

     第42即応機動連隊の藤原愛咲陸士長は16式機動戦闘車乗員に。車長、砲手、操縦手、装填手の4人1チームの中で装填手の役割を担う。「車長からの『誰でも初めての射撃は緊張するが、不安を自信に変えることが必要。何でも俺たちに聞いてこい』という言葉で、気持ちを落ち着かせることができました」

    空てい隊員

    画像: 落下傘降下訓練中の橋場3曹。ヘリの中で「降下!」の号令を待つ

    落下傘降下訓練中の橋場3曹。ヘリの中で「降下!」の号令を待つ

     橋場麗奈3等陸曹は、上空300メートル以上の高さからパラシュートで飛び降り、任務を遂行する空てい隊員に、女性で初めて配属された。男性と同じ水準が求められる厳しい体力テストを突破しての配置だった。空てい隊員が降下するのを初めて見た小学生のときからの夢がかなったのだ。

    全クルーを女性が担う初の訓練飛行を実施

    救難飛行艇機長

    画像: US-2で600時間の飛行経験を経て、機長に昇格した岡田2尉

    US-2で600時間の飛行経験を経て、機長に昇格した岡田2尉

     US−2救難飛行艇の機長の任に女性として初めて就いたのは、第71航空隊(岩国)の岡田めぐみ2等海尉。入隊式でUS−2の姿形と人命救助をする任務のかっこよさにひと目ぼれし、操縦士として腕を磨いてきた岡田2尉は、「救助を必要とする国民の期待に応える」と誓った。

    イージス艦艦長

    画像: イージス艦『みょうこう』に乗り込み、乗組員の出迎えを受ける大谷1佐

    イージス艦『みょうこう』に乗り込み、乗組員の出迎えを受ける大谷1佐

     女性初のイージス艦艦長に着任した大谷三穂1等海佐は、「防衛省は女性が活躍できる環境整備に取り組んでおり、その一端を担えたのではないか。厳しい任務と理解しているが、不安はない。与えられた任務をまっとうしたい」と抱負を語った。大谷1佐が艦長を務める『みょうこう』は舞鶴基地が母港。

    潜水艦乗組員

    画像: 練習潜水艦『みちしお』が係留される呉基地潜水艦さん橋でのき章授与式に臨む5人

    練習潜水艦『みちしお』が係留される呉基地潜水艦さん橋でのき章授与式に臨む5人

     初の女性潜水艦乗員となった5人のうちの1人、田口夢花3等海曹は、「さまざまな職種で道を切り開いてきた女性の先輩方のように、潜水艦でも多くの女性が活躍できるよう力になりたい」と語った。5人は潜水艦隊(司令部・横須賀)隷下部隊の艦に配属された。

    戦闘機パイロット

    画像: 耐Gスーツを着用し、F-15戦闘機のコックピットに座る松島2尉(当時・旧姓)

    耐Gスーツを着用し、F-15戦闘機のコックピットに座る松島2尉(当時・旧姓)

     女性初のF−15戦闘機パイロットとなったのは、新田原基地第5航空団に配属されている伊藤美紗1等空尉だ。当初は輸送機パイロットを目指していたが、2015年の配置制限解除を受け、戦闘機パイロットに志願。主に九州や四国、中国地方の空域を防衛する任務に就いている。

    全クルーが女性の訓練飛行

    画像: 左から梅田航法士(※)、髙取副機長、樋口機長、荒川機上整備員、伊藤空中輸送員

    左から梅田航法士(※)、髙取副機長、樋口機長、荒川機上整備員、伊藤空中輸送員

     全てのクルーを女性が担うという初の訓練飛行をC−130H輸送機にて実施したのは第401飛行隊(小牧)だ。隊長の樋口美登里2等空佐は、「今後は意図せずとも編組できるくらいに女性乗組員が増え、働き続けられる環境を構築できたらと思います」と願いを口にした。

    (MAMOR2021年3月号)

    <文/真嶋夏歩 写真提供/防衛省>

    「女性自衛官」という職種はない!

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