•  軍事用無人機が初めて実戦投入されたのは、第2次世界大戦だという。それは、有人飛行の航空機に連結した無人の爆撃機をターゲットの付近で切り離し、敵地に突入させるという、ナチス・ドイツが開発した「ミステル」と呼ばれるものだったそうだ。戦後、技術の発展によって、軍事用無人機は進化し続けることになる。無人機の歴史とその現状を、軍事関連の情報に詳しい井上孝司氏に聞いた。

    70年代から現在まで続く軍事用無人機の進化

    「軍事用の無人機は、1970年代、ベトナム戦争で本格的に導入されました。当時、アメリカ軍が敵の地対空ミサイルの発射地点や軍事施設の写真撮影を行うため、偵察用の無人機を開発し、活用したのがはじまりです。

     また、周辺のアラブ諸国との対立などの政治的緊張がある中、人口が少なく、人的資源に乏しいイスラエルが、中東戦争で無人偵察機の使用を開始しています」

     そう話す井上氏は、無人機の活用が定着する起点となったのは、1991年に勃発したユーゴスラビア紛争だという。

    「90年代には、情報通信技術の発達に伴い、無人の偵察機によって現場の状況がリアルタイムで送受信されるようになりました。それが各国の軍事関係者に与えたインパクトは大きくて、ユーゴ紛争は現代戦で無人機の役割の重要性を認識させた歴史的な転換点となったんです」

     2005年にはアメリカのジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社が、攻撃機能を装備した「MQ-1プレデター」を開発し、アメリカ空軍が運用を開始。07年にはプレデターよりも機体が大型化し、性能が向上した同社製の「MQ-9 リーパー」の運用を開始した。

    画像: アメリカが開発したジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社製の無人攻撃機「MQ-9リーパー」(出典/U.S. Air Force)

    アメリカが開発したジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社製の無人攻撃機「MQ-9リーパー」(出典/U.S. Air Force)

    「その一方で、2000年代に入ると、ドローンの一種である民生品の『マルチコプター』が戦場で使用されるようになります。22年にはじまったロシアによるウクライナへの侵攻では、ロシアがイラン製『シャヘド』などの自爆型ドローンを大量投入し、それにウクライナが軍事転用した民生品のドローンで対抗するという、ドローン対ドローンの戦いという様相を呈しています」

     これまでに軍事用ドローンの用途は、偵察機から攻撃機へ、さらに自爆機へと変遷。現在は、海上自衛隊が採用を決定した、ゼネラル・アトミックス社製「MQ-9Bシーガーディアン」にスウェーデンのサーブ社のセンサーを搭載した早期警戒機型が前述の2社によって開発中だという。

     こうした無人機の用途の変遷は、ドローンが実戦で使用される中でニーズが顕在化し、それに応えるように開発が進められてきた歴史でもある。

    「また、敵のドローンを制御不能にするためにジャミング(電波妨害)を行う装置が開発されると、その対抗手段として登場したのが、ジャミングを無効化できる、極細の光ファイバーケーブルで機体と操縦者をつないだ電波干渉に強い『光ファイバードローン』が開発されたり、あるいは敵の防衛網を疲弊させるためにオトリとなる安価な偽ドローンを利用したりするようになるなど、その開発は紛争中の各国間によるイタチごっことなっています」

    続々と開発されているAI搭載の無人機

     以上のような航空機以外でも、軍事用無人機の開発が進められている。

    「無人地上車両では、エストニアのミルレム・ロボティクス社が『THeMIS』を開発していて、これに自爆突入型や、遠隔操作により発砲できる機関銃・機関砲を搭載するという計画があるようです。また、ボーイング社製の大型無人潜水艇『オルカ』がアメリカ海軍に納入されています」

    画像: エストニアのミルレム・ロボティクス社が開発した無人地上車両の『THeMIS』(出典/Milrem Robotics)

    エストニアのミルレム・ロボティクス社が開発した無人地上車両の『THeMIS』(出典/Milrem Robotics)

    画像: アメリカ海軍が導入したボーイング社の大型無人潜水艇「オルカ」(出典/U.S Navy)

    アメリカ海軍が導入したボーイング社の大型無人潜水艇「オルカ」(出典/U.S Navy)

     そのほかにも、ロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナが同国テンコア社製の多用途無人車両「テルミット」の実戦配備を進行中。これは、地雷の敷設や除去、火器を搭載して攻撃を行うこともできる、いわばロボット兵器だ。

     さらに25年12月には、ウクライナ保安庁が自国製の無人潜水艇「サブ(潜水型)・シーベビー」でロシアの潜水艦を攻撃し、成功したと発表。ロシアより人口が少なく、人海戦術で劣るウクライナは、陸・海・空の軍事用ドローンの開発を進め、それらを駆使して反転攻勢をかけようとしている。

     このように現在、軍事用無人機が次々と開発され、実戦投入されている。では今後、それはどのように進化していくのだろうか。

    「AI(人工知能)を搭載した自律型の無人機ですね。すでに有人戦闘機と連携して運用される多用途無人航空機の開発が、『ロイヤル・ウイングマン』という名称の計画として各国で進められています。ボーイング・オーストラリア社が開発中の『MQ-28ゴーストバット』がその代表例です」

    画像: ロイヤル・ウイングマン計画としてボーイング・オーストラリア社が開発中の「MQ-28ゴーストバット」(出典/Boeing MQ-28 Ghost Bat at the 2023 Avalon Airshow Side view)

    ロイヤル・ウイングマン計画としてボーイング・オーストラリア社が開発中の「MQ-28ゴーストバット」(出典/Boeing MQ-28 Ghost Bat at the 2023 Avalon Airshow Side view)

     ただし、無人機のAI化の流れには懸念もあると、井上氏は指摘する。

    「AIを搭載した攻撃型の無人機を、どこまで自律的に運用させるかという問題があります。AIは間違った学習をする可能性があり、攻撃対象を誤ることも考えられるからです。

     だから私は、攻撃に対する最終的な判断は、人間が関わるべきだと思っています。技術的に可能ではあるものの、AIを搭載した自律型の兵器が軍事分野で実装されるためには、そうした倫理的な面で社会的に受け入れられなければなりませんし、大量の無人機の採用による省人化で雇用を脅かされるパイロットなどの任務も予想されるので、組織的に受け入れられることも必要です」

    【井上孝司氏】
     マイクロソフト株式会社(当時)での勤務を経た後、軍事や航空、鉄道関連の執筆活動に入り、『JWings』(イカロス出版)などの雑誌に寄稿。著書に『ドローンの世紀 空撮・宅配から武装無人機まで』(中央公論新社)、『軍用ドローン年鑑』(共著・イカロス出版)など (写真提供/本人)

    (MAMOR2026年4月号)

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    自衛隊ドローン装備年鑑X

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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