日々、厳しい任務に取り組む自衛隊員の健康と鋭気を生み出す隊員食堂。マモル本誌では連載ページ「隊員食堂」で全国の隊員食堂の自慢メニューを紹介しているが、本記事では、その調理場に注目!
今回は給養員の任務や、航空自衛隊熊谷基地(埼玉県)ではたらく給養員の勤務体制を紹介する。
【熊谷基地隊員食堂情報】
喫食数:最大1400食
特徴:1度に約700人が食事できる広さ。大きな窓から光が入り明るい
雰囲気:新入隊員教育を行っているので、若い隊員が多く活気に満ちあふれている
人気メニュー:熊谷基地オリジナル空上げ(深谷ねぎを使用したオリジナルソースをかける)
25人の給養員が分担して毎回の食事を調理、提供

真剣な面持ちで味見をする給養員。自分の舌で確かめた味が、1400人の口に入るのだから、責任も重大だ。必要なら調味料を加えて味の微調整を行う
航空自衛隊と海上自衛隊の隊員食堂で食事を作っているのは、主に調理を任務とする給養員だ。陸上自衛隊は業務隊糧食班の隊員、または、委託している民間業者の調理員が作っている。
陸自の駐屯地は一時的な拠点という考えから、給養員という任務を設けていないのだ。空自の場合、給養員は一般空曹候補生または自衛官候補生として入隊後、芦屋基地(福岡県)第3術科学校初級給養員課程で調理などを学び、各基地に配属される。
現在、熊谷基地で隊員食堂を担当しているのは第4術科学校業務課給食班である。その人員は事務員と給養員からなり、事務員の9人は給食班長の東原1尉以下、献立を作る栄養士、食材を調達する発注係、その日提供する食事の数を調整する食需伝票係などに分かれる。

調理場で出来上がった料理は、カートに積んでエレベーターに乗せ、2階にある食堂まで運ばれる。食堂オープンの30分前には配食の準備が進められる
一方調理を担当する給養員は、8時15分から17時までの日勤の13人と交代制勤務の12人からなる。交代制勤務のシフトは4時30分から13時までの早番2日、9時から18時45分までの遅番2日、休み2日の1クールを繰り返す。
毎週金曜の夕食だけはレトルト食になるので(調理場の清掃時間にあてるため)、その日の遅番は8時15分から17時までの勤務となる。

隊員食堂が開場すると、調理場にいた給養員たちは2階の食堂に上がり、配食を行う。配食待ちの列ができるので、手際よくスピーディーに盛っていく
物価高騰の今、コスト調整の課題もある

裁断場では、大量のピーマンが次々と切られ、ヘタと種が除かれていく。3人は動きを止めることなく、流れ作業をこなしていく。昼食の準備がひと段落した午前中の調理場では、早くも夕食の準備が始まっていた
給養員の主な仕事は食材をカットする裁断、調理、配食で、熊谷基地の隊員食堂の開場時間が、朝が6時15分から7時30分、昼が11時30分から13時、夜が16時30分から18時なので、それに合わせて早番は朝食の調理(米炊き)、配食、昼食の調理、配食を、遅番は昼食の裁断、仕込み、洗浄作業、夕食の調理、配食、洗浄作業を担当する。
通常一般成人男性の1日の摂取カロリーの目安は2200キロカロリーといわれているが、自衛隊では約3000~3200キロカロリーを基準としており、任務内容によってはカロリーを補給する増加食が提供される。

昼食時間が終わり、食堂のテーブルも片付け終えた13時過ぎ、ようやく給養員らも昼食に。自分たちで作った料理の味を確かめながら、つかの間のリフレッシュ
東原1尉によると、単なる高カロリー食を提供するわけではないという。「ビタミンや炭水化物など各種栄養の摂取基準やバランスも決められているので、それを考慮して担当の技官が献立を作成し、基本は一汁三菜になります。ただし、1日の食事の金額は空自の場合1人当たり約1000円と決まっているので、物価高騰の昨今、どの基地でも頭を悩ませていると思いますね」と東原1尉は課題を語る。

空き缶は、ふたと底を切り抜いて平らにつぶし、コンパクトにしてからゴミに出す。使用する量が多いと、何もかもが大仕事だ。調理作業の隙を見て、手の空いた人が行う
(MAMOR2024年10月号)
<文/古里学 撮影/山田耕司 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです