小銃は、入隊した陸上自衛官1人に1丁が貸与されるミニマムな火器の1つ。
防衛装備品がどれだけ進化しても、最後に国土と国民を守るのは近接戦闘といわれている。そのときに威力を発揮する小銃の最新モデルが2020年に登場し、高性能ぶりが話題に。そこで、これまでの小銃の歴史にも触れて小銃を特集した。
戦略アナリスト・かのよしのり氏に監修をいただき、本記事では自衛隊発足以降に使われた小銃と、小銃の未来を紹介する。
1930年ころ〜 自動式
引き金をひく度に弾丸が発射され、同時に次の弾丸の装てんなどが行われる自動式。世界の小銃の主流になっている仕組みだ。
自衛隊制式採用 1950〜70年ころ:M1カービン(アメリカ)

<SPEC>全長:約900mm 口径:7.62mm 重量:約2.6kg
1950年の警察予備隊発足から自衛隊の創早期に使われていたアメリカ軍供与の小銃。比較的小型で日本人の体格にもマッチしていた。

M1カービンの弾倉。15発入りで、この弾倉の中に7.62ミリの弾丸を入れて装てんをする
自衛隊制式採用 1964年:64式7.62mm小銃(日本)

<SPEC>全長:約990mm 口径:7.62mm 重量:約4.3kg 発射速度:最大約500発/分
日本人の体格に合わせて1960年ころから開発された、戦後初の国産自動小銃。現在も海・空両自衛隊を中心に配備されている。
自衛隊制式採用 1989年:89式5.56mm小銃(日本)

<SPEC>全長:約920mm 口径:5.56mm 重量:約3.5kg 発射速度:最大約850発/分
弾丸が5.56ミリに小口径化された国産自動小銃。引き金をひくと3発発射される3点制限射(3点バースト)機能が付加されている。
折り曲げ式の89式小銃

戦車などの車両乗員などが使用する銃床を折り曲げると全長670ミリメートルまで小さくなる89式小銃。銃床を折り畳んだ状態でも射撃が可能だ。

自動式は、薬きょう内の火薬が爆発した際に生じるガスの圧力を利用し、排きょうや次弾の装てんを自動的に行う仕組み。
装てんのみ自動で、引き金をひく度に弾丸が発射される「半自動小銃」(セミオートマチック)と、機関銃のように引き金をひけば連続で発射される「自動小銃」(フルオートマチック)がある。
1880年代には開発が始まっていたが、本格的な普及は1930年代で、今もなお軍用小銃の主力となっている仕組みだ。
20XX年〜 電気式
レールガン(日本)

2023年10月17日、海上自衛隊の試験艦『あすか』にレールガンを搭載し、世界初となる洋上での射撃試験が行われた 写真提供/防衛装備庁
防衛省は約10年前から電気の力で弾丸を発射する『レールガン』の研究に本格的に着手。2023年に世界初の洋上試射まで到達しているのだ。
電気で極超音速弾を発射。火薬を使わない未来装備
レールガンに電流を流すと砲身レールに磁界が発生。これにより発生した電磁力を利用して電気エネルギーで弾丸を発射する仕組みだ
レールガンの原動力は、火薬ではなく電気エネルギー。その仕組みは、電気を通しやすい素材で作ったレールの間に弾丸を置き、電流で磁界を発生させ、磁界のなかで電気を流すと発生する力で弾丸を発射する。
これは中学校の理科で習う「フレミングの左手の法則」が元で、モーターや発電機など身近に使われる技術が基礎になっている。

レールガンの弾丸。左の銀色に光る部分は電気が通る「電機子」で、中央にある黄色のロケット状の部分が弾丸の本体「飛しょう体」だ 写真提供/防衛装備庁
レールガンの利点は、火薬を使う砲よりもさらに高速で弾を撃ち出せること。これにより弾の威力は増し、射程が伸び、目標到達までの時間が短くなり、命中率の向上が見込めるという。さらに極超音速で飛ぶため、探知・迎撃されにくく、発射に火薬を使わないので安全性も高い。
防衛省では2022年度より早期実用化へ向けた各種試験が進行中で、装備品化を目指している。
写真/本人提供
【戦略アナリスト かのよしのり氏】
1950年生まれ。戦略アナリスト。著作に『銃大全』(SBクリエイティブ刊)など
(MAMOR2024年6月号)
<文/臼井総理 撮影(特記を除く)/山川修一(扶桑社) イラスト/ナーブエイト>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです