わが国の防衛体制は、近年、中国の海洋進出や北朝鮮のミサイル発射実験などを念頭に、日本の南西地域での自衛隊の活動を増強する方針が進んでいる。
これに伴い部隊の新設や新装備の導入が進み、補給や輸送に関わる体制も変化の時を迎えた。新時代に対応する航空自衛隊の補給と輸送の取り組みを紹介しよう。
C-2輸送機の運用に切り替え中
航空自衛隊では、2018年以来、新型国産輸送機「C−2」の運用が進められ、23年11月現在では十数機が配備されている。
これまで運用されている輸送機C−1に比べ、C−2は航続距離で約4倍、搭載貨物量で約3倍と輸送能力が向上。積み降ろし作業もコンピュータで集中管理ができ省人化も進んでいる。
床面積約63平方メートルある貨物室には、16式機動戦闘車や水陸両用車AAV7、UH−60JAなど多彩な装備品の搭載が可能になっている。
空を飛びながら給油するKC-767
空中給油機は、戦闘機や輸送機が基地に帰投することなく任務を続行できるよう、上空で燃料を補給する航空機だ。
現在航空自衛隊には3機種の空中給油機があり、このうち世界にたった8機しかないKC−767の4機を小牧基地(愛知県)の第404飛行隊が運用している。
給油を受ける受油機はKC−767の進行方向左側に待機し、1機ずつ順番に給油ポジションに移動。給油ブーム(管)の位置を調整し給油する。
1機あたりにかかる給油作業の所要時間は、わずか5分ほどだ。
空中投下で物資を届ける
人力や車両で運べない場所に物資を届ける方法が、物資を航空機で運び空中から地表に落下傘で投下する空中投下だ。天候や風向きなどを計算し、目標地点にピンポイントで投下。
食料や弾薬など約250キログラムから1トンくらいまでの物資は約1.2メートル四方のパレットに固定して落とす「CDS(大型投下容器投下方式)」、それより重い物資は大型の台に載せる「PDS(プラットフォーム投下方式)」で投下。
PDSは最大16トンまで積載可能で、車両などの投下に使われる。
(MAMOR2024年3月号)
<文/古里学 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです