2024年、「物流クライシス」と呼ばれている物流業界の問題が立ちはだかっている。とはいえ、日本で暮らす私たち全員にダイレクトに関わる危機なので、果たしてそれを乗り越えられるか? が心配だ。
そこで、マモルとしても真剣に向き合っていきたいと思い、ここに、物流危機に立ち向かう取り組みのいくつかを紹介しよう。
働き方改革で変わる物流業界
物流業界の2024年問題とは、19年に施行された「働き方改革関連法」における時間外労働の上限規制が24年4月1日から適用されることで生じる問題だ。この規制により、トラック運転手の時間外労働時間は、年間960時間に制限されることとなった。
長時間労働が慢性化していた物流業界では、この規制により運転手1人あたりの輸送量や時間が減少する。そのため売上・利益の減少と運賃上昇などの影響があるといわれている。
また残業時間の減少や所属会社の売り上げの低迷により、運転手の収入減も懸念されており、離職などによるドライバーの人材不足や高齢化にさらに拍車をかけることも予想される。
こうした課題を解決するために行われているさまざまな試みの一部を紹介しよう。
連結トレーラーや無人運転も。ドライバー不足解消に向けた一手
日本最大級の連結式トラックで輸送量アップ
人材不足の対応策として考えられるのが、運転手1人あたりの物流量を増やすこと。
宅配会社では、車両の長さ約25メートルの長大連結トレーラー「スーパーフルトレーラ25」(以下、SF25)の導入計画を2017年よりスタート。SF25の積載量は、従来の大型トラックの約2倍となる。
19年1月には連結トレーラーの車両長の基準が最大21メートルから25メートルまで緩和されるなど、物流業界全体でドライバー不足の解消に取り組んでいる。
トラックが隊列を組む“カルガモ走行”を実験
「カルガモ走行」とは正式には「後続車無人隊列走行技術」のこと。
3台の大型トラックが1列になって走行するが、運転手は先頭のトラックだけに乗車し、後続の2台は無人でカメラとレーダーで車間距離を保ち追随。
車間距離10メートル以内、時速80キロメートルで走行でき、2025年の実用化が目標だ。
倉庫の搬入・搬出作業も“カルガモ走行”で効率化
物流倉庫の現場でも“カルガモ走行”で作業効率化や人材不足の解消を図っている。
ビーコン(発信機)を搭載した1台の台車を動かすと、2台の台車が自動で追従する。台車には車間センサーが付いており、台車同士が接触する危険もない。
ルート上に中継地点を設け輸送効率をアップ
自動車部品メーカーが輸送効率化を図るため“幹線中継輸送”を開始。
これは東京~大阪間の場合、中間地点である静岡県浜松市に拠点を設置し、ここで東京から、または大阪から来たトラックが荷台を交換し、再び東京または大阪へ戻る仕組み。
これにより運転手は従来は1人で往復していた東京~大阪間の移動時間が約半分に短縮される。帰路は新たに荷物を受け取り、空荷をつくらないよう輸送の効率化も図っている。
また中継地点で荷物の受け渡しがスムーズに行えるようトラックと荷台が分離できる車両も導入している。
オートマチック限定の第二種大型免許を新設
これまで普通自動車(第一種、第二種)しか取得できなかったオートマチック限定免許を、2027年より旅客運送が可能な第二種大型免許にも導入予定。
トラック・バス運転手不足の解消を目指す。
配達荷物とトラックのマッチングサービスも登場
配達ルート作成にAI導入。最適経路が分かる
日本郵便では、これまで各配達員が経験を頼りに配達していたため、ルート作成にAIを導入し効率化を図ることを決定した。
専用アプリを使い情報を読み込むと最適な配達順や経路をAIが提示する。
配送荷物と空荷トラックのマッチングサービス
荷物を降ろしたあとのトラックが空荷で戻る無駄を省くマッチングアプリが登場。
アプリには空荷トラックや配送希望の情報などが表示され、荷主と運び手は条件に合った案件を検索し、仕事をマッチング。
ドローン配送をへき地などで実証実験中
高知県四万十町はIT企業と連携し、物流が滞りやすい山間部へドローンで生活物資の配送を行う実証実験を開始している。
ドローンによる物流は都市部でも渋滞の影響を受けにくく、高齢者など買い物困難者への支援や緊急時のインフラ構築など、社会課題の解決にも役立つといわれている。
路線バスで荷物を輸送するサービス開始
物流業界のドライバー不足と地方路線バスの乗客減少という2つの課題解決法として、路線バスの空きスペースに貨物を積載して輸送する「客貨混載」が進められている。
これにより、物流効率化とバス路線の維持、地域の生活サービス向上が期待される。
(MAMOR2024年3月号)
<文/古里学>