15歳から18歳という、遊びたい盛りの青春期を、わが国を守るために、勉学と訓練に費やす若者たちがいます。
その学び舎は、高機能化・システム化された防衛装備品を運用する自衛官となる者を育成する陸上自衛隊高等工科学校。親元を離れ、校内の生徒舎で規律正しい団体生活を送りながら、日々、奮闘する生徒たちにとって、年に1度の「開校祭」は、解き放たれて楽しむ貴重な時間です。
開校祭では、日ごろのクラブ活動の成果や、生徒会主催のイベントを披露。その“青春の爆発”を3本にわたってお届けします。
前編に続き、中編となる今回は、講堂で開催された和太鼓部や吹奏楽部、吟詠剣詩舞部の発表をご紹介します。
腹に響く太鼓の音に大勢の観客が息をのんだ「和太鼓部」
チーム名「桜花太鼓」として活動する和太鼓部。講堂では、オリジナル曲の『桜花』や『一空 ~猛る鼓魂~』などを演奏した。
腹に響く太鼓の音に大勢の観客が息をのんだ。部のコンセプトの1つが「目や耳が不自由な方でも振動を感じ、楽しんでもらうこと」というのもうなずける。
和太鼓部は特定クラブとして、「ワールドフェスタ・ヨコハマ」などのイベントや、他校の文化祭などにも参加。
2021年度の全国高等学校総合文化祭にも出場したという実力派だ。キャプテンの藤岡大輝生徒(3学年)は「今日は部員が心を1つにして打ち切ることができた」と声を弾ませた。
部員たちは、こまめにミーティングを行うことでまとまり、また演奏の細部を詰めていったという。
Family Voice「弟がちゃんと部活を頑張ってたんだな」
和太鼓部の細谷洋佳生徒(3学年)は4人兄弟。長兄は「彼が太鼓を打つ姿はかっこよかった」と語り、「弟がちゃんと部活を頑張ってたんだな、と思いました」と次兄。
三兄は「夏休みの間、彼は太鼓のバチを持って帰省してましたね」
「迫力があって素晴らしかった」と興奮気味に話す母。
入学してからの白石大晃生徒(3学年)の変化を尋ねると「親に感謝するようになりました。集団生活をする中で普通に暮らすことは当たり前じゃないと気付いたみたいです」
厳かな雰囲気を漂わせた演技を披露「吟詠剣詩舞部」
吟詠剣詩舞とは、漢詩や和歌を吟ずる(歌う)「吟詠」と、それに合わせて舞う「剣詩舞」で構成される日本の伝統芸能。
クラブ活動でその稽古をする吟詠剣詩舞部の発表では、詩吟『本能寺』と『富士山』に合わせた舞が披露された。
厳かな雰囲気を漂わせた演技で、部員たちは迷いのない所作を見せたが、当然のことながら、入部したてのころは全員が初心者だ。
「でも、週に4日、1日に2時間くらい練習していると、半年から1年くらいでうまくなっていくんですよ」と、キャプテンの日外智大生徒(3学年)。
では、今日の出来は何点?「もちろん満点です! 皆の演技、最高でした!」
観客の興奮は頂点に…「吹奏楽部」
吹奏楽部の発表では、ブラスバンド用にアレンジされた『ジョジョの奇妙な冒険』のテーマ曲や米津玄師の『KICK BACK』、『星に願いを』や『ミッキーマウス・マーチ』などのディズニー映画のメドレーなどの楽曲を演奏。
その圧巻のサウンドに、観客が大きな手拍子で応えた。曲の合間には、アイドルとオタクに扮した部員によるコントもあり、会場を盛り上げた。
ラストはラテン音楽の代表曲『エル・クンバンチェロ』の演奏で観客の興奮は頂点に。
その後、会場の外ではすぐに反省会が開かれ、部員たちが交互に「疲れました」、「楽しかった」と感想を述べた。
それから、指揮者の佐藤充2等陸曹先生が今日の演奏の反省点を挙げ、「また頑張りましょう!」との言葉で解散となった。
Family Voice「まさかのアイドル役で驚きました」
アイドル役の感想を兵庫県から訪れた母に聞いてみた。
「事前に何らかのコントをやるとは聞いていたので、何事も楽しんでやり切ってきなさいと伝えていました。まさかのアイドル役で驚きましたが、本番ではちゃんとやりきっていたので、えらかったですね」と話した。
吹奏楽部でソロパートを担った二渡千紘生徒(2学年)は「70%くらいしか力を発揮できませんでした」との感想。
ご両親は「まあそんなものでしょう(笑)いつもの演奏はクラシック主体の真面目な感じですが、今回の開校祭ではいろいろな演出があって楽しめました」と話す。
(MAMOR2024年2月号)
<文/魚本拓 撮影/増元幸司 写真提供/防衛省>
―開校祭アルバム―