•  自衛隊には、指揮官を補佐する「副官」という任務があるが、一般的にはあまり知られていないのではないか?

    「副官」とは、軍隊において司令官などの指揮官を補佐する将校(自衛隊でいう幹部)のことを指し、主に事務的な仕事を担うとされている。副官の具体的な業務は規定されておらず、部隊の本部、総務部署などに属する形をとっていることが多いが、直接の上司は指揮官本人のみであり、指揮官の指揮統制に従って動く。

    「副官」は実際にどんな任務をしているのか、またどんな点に気を配って務めているのかが気になるところ。そこで、副官のごく一般的な日常に密着。とある副官のとある1日を追ってみよう。

    実際の任務を知るべく、ある副官のある1日に密着!

    画像: 実際の任務を知るべく、ある副官のある1日に密着!

     航空自衛隊の戦闘機部隊や高射部隊警戒管制部隊、そして救難部隊などを指揮する航空総隊司令部。日本の空を守る、弾道ミサイル防衛の統合任務部隊指揮官が、航空総隊司令官だ。

     今回の取材では、在日アメリカ軍横田基地内にある航空総隊司令部の司令官付として活躍する副官の1日に密着。特別なイベントなどは計画されていない、平常の1日に、副官はどんな仕事をしているのだろうか。後を追い、見せてもらった。

    7時、副官登庁

    写真提供/防衛省

     副官の朝は早い。司令官の登庁前に仕事の準備をしておかねばならないため、だいたい毎朝7時ごろに登庁する。 

    7時30分に朝礼。1日のスケジュールを確認

    画像2: 写真提供/防衛省

    写真提供/防衛省

     朝礼では、司令官や副司令官のサポートを行う副官や庶務のメンバーなどが集まり、1日のスケジュールを確認。来客の予定や、司令官らの動きをチェックし、漏れがないように備える。

    8時、司令官登庁のお出迎え

    画像: 8時、司令官登庁のお出迎え

     司令官が専用車に乗って司令部に登庁。お出迎えのため、到着前には玄関で待ち構えている。何度か腕時計を確認するうち、遠くから近付くのが見える。

     姿勢を正す副官。やがて到着した専用車のドアが開き、敬礼。答礼する司令官。副官は司令官に随行して執務室まで移動する。歩く速度も速い!

    9時から司令官が会議に出席。事前に必要書類を配布

    画像: 9時から司令官が会議に出席。事前に必要書類を配布

     司令官が出席する会議の準備。庶務担当の隊員たちと協力して準備を行う。会議によっては会議室に入り、角のほうで待機しつつ、内容を聞いていることもあるという。こうして耳にして勉強したことが後の仕事に役立つことも多い。

    11時、司令官に表敬訪問の来客。約束の時間ぴったりに呼びに行く

    画像: 11時、司令官に表敬訪問の来客。約束の時間ぴったりに呼びに行く

     庶務担当が客を応接室へと案内するのを確認。お茶出しなどは庶務の役目だ。

     司令官を予定の時間ちょうどに案内するため、たびたび腕時計に目をやる。

     予定時刻ぴったりに司令官を呼びに行く。1秒のズレもない。

     司令官が応接室に向かうのを確認。

     司令官が客にあいさつを始めたことを確認し、さりげなくドアを閉める。

     ドアの端に指を添え、音を立てないようにそっと閉める。副官としての細やかな心配りが感じられる。

    12時から昼食タイム。司令官をVIP食堂までお送りする

    画像: 12時から昼食タイム。司令官をVIP食堂までお送りする

     午前中の任務を終えて昼食に向かう司令官に同行し、高官専用の「VIP食堂」まで送る。この日は、副司令官も一緒。

     2人の脇に控え、歩調を合わせて歩く。歩きながら午後の業務スケジュールなどについて会話を交わすことも。食堂に着いたらサッと扉を開ける。

    幹部食堂に移動。副官も素早く食事を取る

    画像: 幹部食堂に移動。副官も素早く食事を取る

     VIP食堂への案内を終えたら、自身も隣の幹部食堂に移動し、食事を取る。

     忙しい副官だからといって特別扱いはなく、長い行列に並ぶ。食事時間はだいたい5分から、長くて10分。隣席の人と会話をすることもなく、黙々と食べる。ちなみに自衛官は早食いの人が多いようだ。

    自身の食事を終えたら、司令官の食事が終わるのを待つ

     さっと自分の食事を終えたら、VIP食堂の出口で司令官の食事終了を待つ。司令官の食事の終わりそうな時間の5分くらい前に出て待っているのだとか。

    画像: 自身の食事を終えたら、司令官の食事が終わるのを待つ

     司令官の姿が見えたら、素早く扉を開けてお迎え。

    午後は、司令官のもとに「指導受け」に訪れる幕僚の対応

    画像1: 午後は、司令官のもとに「指導受け」に訪れる幕僚の対応

     この日の午後は、司令官のもとを続々と訪れる幕僚たちの対応に追われた。「指導受け」といわれる、各種の報告をしたり、書類の確認や司令官の指示を受けたりする幕僚が司令官室にやって来る。

    画像2: 午後は、司令官のもとに「指導受け」に訪れる幕僚の対応

     事前にスケジュールが決まっている訪問のほか、突発的に予定外の訪問もある。それらをさばき優先順位を付けるのも副官の重要な任務。司令官に報告したい内容を確認したうえで、スケジュールを調整する。

    スケジュール調整のため、関係部署に電話やEメール。時には調べものも

    画像: スケジュール調整のため、関係部署に電話やEメール。時には調べものも

     司令官の行動にまつわるスケジュール調整は、副官の大きな仕事の1つだ。調整の相談をするため、自衛隊内外の関係各所に電話やEメールで連絡することも多い。

     また、幅広い任務をこなす司令官のサポートをするにあたっては、副官も勉強の連続。空き時間には、これまで配属された部隊では出合わなかった規則や法令について調べることもしばしばだ。

    17時、司令官が帰る前に、明日のスケジュールを報告

    写真提供/防衛省

     司令官の帰宅前に、明日どのようなスケジュールになっているかを簡単にまとめて報告。翌日のスムーズな任務のためにも、手は抜けない。これを終えると、司令官のお見送り。

    17時過ぎに終礼。庶務班長らと明日のスケジュールを確認

    画像4: 写真提供/防衛省

    写真提供/防衛省

     司令官が隊を離れた後、終礼を実施。朝礼同様に司令官と副司令官周辺のスタッフが集まり、庶務班長を中心に明日のスケジュールや注意事項を確認する。

    18~19時、副官帰宅

     1日の業務を終えてホッとする瞬間。やや緊張感も解けたような表情で、副官も家路につく。

    【副官 重松 紀 3等空佐】
    特技は航空管制で、千歳(北海道)・入間(埼玉県)両基地の管制隊防衛大学校の教官、府中基地(東京都)の航空保安管制群本部などで勤務。2023年4月より現職

    【指揮官 鈴木康彦 空将】
    第50代航空総隊司令官。F-4のパイロットとして活躍。第83航空隊司令兼那覇基地司令、南西航空方面隊司令官、統合幕僚副長などを歴任、2023年3月より現職

    (MAMOR2024年2月号)

    指揮官を支える自衛隊・副官という任務

    <文/臼井総理 撮影/村上淳 写真提供/防衛省>

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

    This article is a sponsored article by
    ''.