•  わが国の防衛態勢は、近年、中国の海洋進出や頻発する北朝鮮のミサイル発射実験などを念頭に、日本の南西地域で自衛隊を増強する方針、いわゆる南西シフトが進んでいる。それに伴い、ここ10年の間に、島しょ部に新たな駐屯地・基地が次々と新設された。

     宮古島にやって来た"自衛隊さん"たちは、どのような設備で、いかなる任務についているのか、案内しよう。そして美しい島を守る隊員たちにも話を聞いてみた。

    宮古島駐屯地:沖縄本島と台湾の中間にあり南西防衛の要となる宮古島

    【宮古島の基本情報】
    面積:約158平方キロメートル/人口:約4万9000人/主要産業:水産業、農業、観光業

    画像: 宮古島と伊良部島を結ぶ全長3540メートルの伊良部大橋 ⓒOCVB

    宮古島と伊良部島を結ぶ全長3540メートルの伊良部大橋 ⓒOCVB

     沖縄本島の南西約300キロメートル、台湾の東約320キロメートルに浮かぶ宮古島は、正三角形のような形をした平坦な島だ。ここに2019年3月、離島防衛態勢強化の目的で陸上自衛隊宮古島駐屯地が開設された。

     当初は新編された宮古警備隊の約380人が駐屯していたが、その後、高射特科部隊や地対艦ミサイル部隊が移設され、23年には駐屯地内の業務および演習場、射撃場などの管理を担当する駐屯地業務隊が新編された。現在は総勢約700人態勢となっている。なお、宮古警備隊長は駐屯地司令も兼ねている。

    「美しい島の自然と優しい“島人”たち。それを守る自衛隊を紹介します!」(陸自宮古警備隊/神㟢慎介2等陸曹)

     駐屯地の正門ゲートの門柱には守り神であるシーサーが鎮座、入り口の警衛所の屋根には沖縄伝統の赤瓦が使用されているなど、南国情緒にあふれている。

    画像: 陸上自衛隊宮古島駐屯地の正門

    陸上自衛隊宮古島駐屯地の正門

     一方、駐屯地から約1.5キロメートルほど離れた所にある航空自衛隊宮古島分屯基地は、沖縄が本土復帰した1972年に、アメリカ軍のレーダー任務を引き継ぐ形で発足し、翌73年に第53警戒群が新編され、2003年には第53警戒隊となった。ここは全国28カ所にある固定式レーダーサイトの1つである。

    宮古島に所在する陸自と空自の主な部隊

    画像: 射撃姿勢を取りづらい場合でも、隊員の連携によって射撃する訓練も行っている

    射撃姿勢を取りづらい場合でも、隊員の連携によって射撃する訓練も行っている

    対空、海、サイバーと多角的に守りを固める

     陸自の宮古島駐屯地には、那覇駐屯地にある第15旅団隷下の宮古警備隊を主力とし、西部方面隊隷下の第346高射中隊、第302地対艦ミサイル中隊、西部方面後方支援隊の支援部隊や新編された駐屯地業務隊が所在している。

     このうち、宮古警備隊は本部中隊、普通科中隊、後方支援隊で構成され、宮古列島の防衛・警備や災害派遣任務を担当する。防空任務は火砲やミサイルを運用する第7高射特科群が、海からの脅威に対しては、12式地対艦誘導弾を装備する第302地対艦ミサイル中隊が担当する。

     一方、空自の宮古島分屯基地には、レーダーで領空内に侵入する航空機、弾道ミサイルなどを探知する第53警戒隊が所在。

     また、情報本部の分室もあり、周辺各国の電子関連情報の収集も行っている。

    宮古島に所在する隊員たち

    山口修平3等空曹

    「最前線部隊の一員としての誇りを持って勤務しています」(空自第53警戒隊/山口修平3等空曹)

    杉原彩加3等陸曹

    「宮古島を守るため、ワークライフバランスのとれた部隊で、元気はつらつ隊員一丸となって訓練に励んでいます!」(陸自第302地対艦ミサイル中隊/杉原彩加3等陸曹)

    新城政秀2等陸曹

    「宮古島の強い日差しと高い湿度によるジメッとした暑さに負けず、日々訓練に取り組んでいます!」(陸自第7高射特科群本部管理中隊/新城政秀2等陸曹)

    荒巻阿美2等陸曹

    「広報担当として、イベントの支援や海岸清掃などのボランティアなどを行い、地域住民の方々とのつながりを大切にしています!」(陸自宮古警備隊/荒巻阿美2等陸曹)

    主要部隊の任務に欠かせない、代表的な装備品と担当する隊員

    中距離多目的誘導弾

    画像: 中距離多目的誘導弾

    舟艇や装甲車などさまざまな目標に対処が可能な誘導弾システム。赤外線とレーダーを用いた捜索・標定機能により、効率的に目標を探知できるほか、車両への搭載や空輸、空中投下も可能。写真は搭載車両から発射される誘導弾。

    <SPEC>全長:約1.4m 直径:約0.14m 重量:約26kg(数値は誘導弾本体)

    荒巻阿美2等陸曹

    「子どもが生まれたので、一層強い思いで家族と宮古島を守ります!」(陸自宮古警備隊/仲村翔平3等陸曹)

    03式中距離地対空誘導弾

    画像: 03式中距離地対空誘導弾

    旧防衛省技術研究本部が開発した、純国産の低空目標用の誘導弾。部隊や重要地域などの防空を行うため、対空戦闘を行う部隊などに装備される。発射装置を自走式にすることで、旧型の地対空誘導弾よりも高い機動性をもつ。通称「中SAM(ちゅうさむ)」。

    <SPEC>全長:約4900mm 直径:約320mm 重量:約570kg

    髙橋東暉3等陸曹

    「宮古島の空ときれいな宮古ブルーの海は俺が守る!」(陸自第346高射中隊/髙橋東暉3等陸曹)

    J/FPS-7(B)

    画像: J/FPS-7(B)

    2015年から運用されている、飛来する航空機や弾道ミサイルなどを探知・追尾するレーダー。遠距離・広範囲を警戒することができる。見島分屯基地(山口県)のほか、高畑山分屯基地(宮崎県)、海栗島分屯基地(長崎県)などに配備されている。

    「防空の最前線で勤務していることに日々誇りを感じ、整備にあたっています」(空自第53警戒隊/青木舞子空士長)

    12式地対艦誘導弾

    画像: 12式地対艦誘導弾

    あらかじめプログラミングされたコースに従って山などを避けてう回し、洋上に出たら低高度で飛び目標に命中させるミサイル。土浦駐屯地(茨城県)や富士駐屯地(静岡県)、健軍駐屯地(熊本県)などに配備されている。

    <SPEC>全長:約5m 胴体直径:約350mm 重量:約700kg(寸法はミサイル本体)

    太田達也陸士長

    「南西防衛の要の隊員として、日々はつらつと精進していきます」(陸自第302地対艦ミサイル中隊/太田達也陸士長)

    隊員食堂で人気の料理を紹介

    空自宮古島分屯基地の「宮古そば」

    画像: 空自宮古島分屯基地の「宮古そば」

     昆布とカツオ節がベースのスープはあっさり味で、濃い味つけの豚肉との相性も抜群という「宮古そば」。

     前日から仕込んだ豚肉はやわらかくジューシーで、隊員いわく、「しばらく食べないと無性に食べたくなる味」なんだとか。

    宮古島で働く隊員のお気に入りスポット

     宮古島で働き、生活をする自衛隊員たちが、生活者として島のお気に入りスポットを紹介してくれた。

    ガッツリ食べたい人にイチ推しの人気食堂

    画像: 器からあふれんばかりの野菜そば

    器からあふれんばかりの野菜そば

     老若男女を問わず地元で絶大な人気を誇る「新和食堂」。

    「ボリューム満点でおいしい!」と隊員が太鼓判を押す野菜そばだけでなく、ソーキそば、カツ丼、ヤギ汁、定食類などどれも食べ応え十分だ。

    【新和食堂】
    住所:沖縄県宮古島市平良西里688-3 電話:0980-73-2811 営業時間:火~木曜日11:00~16:00、17:00~19:00 金曜日11:00~16:00 土・日曜日、祝日11:00~14:30 定休日:月曜日

    海と一体感を味わえるマリンスポーツが楽しい

    画像: 海の上を優雅に進む馬場1曹

    海の上を優雅に進む馬場1曹

     東洋一の砂浜といわれる与那覇前浜ビーチをはじめ、とにかく海がきれいな宮古島。

    「最近はボードの上に立ってパドルをこいで進む『SUP』にはまっています」と、休日はマリンスポーツにチャレンジする隊員が続出だ。

    馬場嵩亘1等陸曹

    「最近はSUPにハマってます!」(陸自宮古警備隊/馬場嵩亘1等陸曹)

    トライアスロンの聖地。日本全国から鉄人が集う

    画像: 2023年大会では、与那覇前浜ビーチからスイム3キロメートル、バイクは123キロメートル、ランは周回コースを30キロメートル走った

    2023年大会では、与那覇前浜ビーチからスイム3キロメートル、バイクは123キロメートル、ランは周回コースを30キロメートル走った

     宮古島はトライアスロンの聖地。1985年以来、ロングディスタンス・レース(長距離)の全日本大会が開催されており、隊員も憧れる舞台だ。大会には毎年1000人以上もの選手が参加している。

    (MAMOR2023年11月号)

    <文/古里学 写真提供/防衛省>

    美ら島まもる自衛隊さん

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