•  わが国の防衛態勢は、近年、中国の海洋進出や頻発する北朝鮮のミサイル発射実験などを念頭に、日本の南西地域で自衛隊を増強する方針、いわゆる南西シフトが進んでいる。それに伴い、ここ10年の間に、島しょ部に新たな駐屯地・基地が次々と新設された。

     奄美大島にやって来た“自衛隊さん”たちは、どのような設備で、いかなる任務についているのか、案内しよう。そして美しい島を守る隊員たちにも話を聞いてみた。

    本土と沖縄を結ぶ重要地点に陸・海・空の施設がそろう

    画像: 奄美大島の油井岳から望む大島海峡。美しいリアス式海岸が続き、奄美十景にも選ばれている ⓒK.P.V.B

    奄美大島の油井岳から望む大島海峡。美しいリアス式海岸が続き、奄美十景にも選ばれている ⓒK.P.V.B

    【奄美大島の基本情報】
    面積:約712平方キロメートル /人口:約5万8000人 /主要産業:農業、製造業、観光業、建設業

     奄美大島は、鹿児島市と那覇市のほぼ中間地点の洋上に浮かぶ。動植物の固有種が数多く生息し、2021年にはユネスコの世界自然遺産に登録された。そんな美しい島には、陸・海・空各自衛隊の施設がある。

     陸自の奄美駐屯地と瀬戸内分屯地は19年3月に開設。駐屯地は島の中心地の奄美市内にあるが、分屯地はそこから自動車で1時間ほどかかる島南東部に所在する。西南地域、特に奄美大島と喜界島に対する初動対応を任務とする警備隊と、対空戦闘部隊、地対艦ミサイル部隊、電子戦部隊など、総勢約600人が駐屯している。

     島南部にある海自の奄美基地には、1962年に新編された奄美基地分遣隊が配置されている。

    「東洋のガラパゴスともいわれる奄美大島。大切にしたいです!」(空自奄美大島分屯基地総括班/宮澤勉空曹長

     奄美大島は旧軍時代から、本土から沖縄、台湾へ向かう艦船の補給や輸送の拠点であり、南西地域での緊張が高まる今でも、その重要性は変わっておらず、隊員が基地の警備・管理の任務に就く。

    画像: 標高約180メートルの大刈山山頂にある航空自衛隊奄美分屯基地

    標高約180メートルの大刈山山頂にある航空自衛隊奄美分屯基地

     75年開設の空自奄美大島分屯基地は、島北部、奄美空港を眼下に見下ろす大刈山山頂に位置しており、九州と沖縄を結ぶ通信基地の任務を担っている。

    奄美大島に所在する陸自と空自の主な部隊

    画像: 03式中距離地対空誘導弾に弾薬を積載する訓練を行う、陸自第344高射中隊

    03式中距離地対空誘導弾に弾薬を積載する訓練を行う、陸自第344高射中隊

    対空、海、通信と鉄壁の守りを誇る

     奄美駐屯地には、奄美大島と喜界島の防衛警備と災害派遣を任務とする奄美警備隊、03式中距離地対空誘導弾を装備する対空戦闘部隊の第344高射中隊が駐屯している。

     一方、12式地対艦誘導弾を操作して敵艦船を洋上で撃破する第301地対艦ミサイル中隊は、瀬戸内分屯地に配備。

     通信科部隊である第319基地通信中隊は両施設に分遣隊を置いている。

     海自の奄美基地には基地の警備などにあたる奄美基地分遣隊が配置。

     空自の奄美大島分屯基地には、奄美通信隊が所在しており、基地運営の主力である総括班と機器などの保守・整備を行う整備班からなり、多重通信装置を装備している。

    奄美大島に所在する隊員たち

    丸目浩志2等空曹

    「自然豊かな奄美大島でのイベントなどで、島民の方々から寄せられる温かい声にやりがいを感じます」(空自奄美大島分屯基地整備班/丸目浩志2等空曹)

    福本武志2等陸曹

    「南西諸島の最前線部隊で勤務していることに誇りを持ち、訓練に励んでいます!」(陸自第301地対艦ミサイル中隊/福本武志2等陸曹)

    田原国真3等陸曹

    「生まれも育ちも奄美大島。島の人たちのためになれるように頑張りたいです! 南西の空は私たちが守ります!」(陸自第344高射中隊/田原国真3等陸曹)

    伊藤優真3等陸曹

    「奄美大島出身者として隊員同士の絆を深めるため、日ごろの訓練から上司、部下を問わず、自身の意見や考えを伝え、お互いを高められるようにしています」(陸自奄美警備隊本部中隊/伊藤優真3等陸曹)

    主要部隊の任務に欠かせない、代表的な装備品と担当する隊員たち

    中距離多目的誘導弾

    画像: 中距離多目的誘導弾

    舟艇や装甲車などさまざまな目標に対処が可能な誘導弾システム。赤外線とレーダーを用いた捜索・標定機能により、効率的に目標を探知できるほか、車両への搭載や空輸、空中投下も可能。写真は搭載車両から発射される誘導弾。

    <SPEC>全長:約1.4m 直径:約0.14m 重量:約26kg(数値は誘導弾本体)

    田浦哲1等陸曹

    「対戦車小隊のメンバーは、全国から集まった経験も視野も広い頼もしい隊員ばかりです!」(陸自奄美警備隊本部中隊/田浦哲1等陸曹)

    12式地対艦誘導弾

    画像: 12式地対艦誘導弾

    あらかじめプログラミングされたコースに従って山などを避けてう回し、洋上に出たら低高度で飛び目標に命中させるミサイル。土浦駐屯地(茨城県)や富士駐屯地(静岡県)、健軍駐屯地(熊本県)などに配備されている。

    <SPEC>全長:約5m 胴体直径:約350mm 重量:約700kg(寸法はミサイル本体)

    田浦哲1等陸曹

    「島しょ防衛の要となるミサイルを装備し、国民が安心して奄美大島に来られるよう、日々訓練しています」(陸自第301地対艦ミサイル中隊/藤原淳1等陸曹)

    03式中距離地対空誘導弾

    画像: 03式中距離地対空誘導弾

    旧防衛省技術研究本部が開発した、純国産の低空目標用の誘導弾。部隊や重要地域などの防空を行うため、対空戦闘を行う部隊などに装備される。発射装置を自走式にすることで、旧型の地対空誘導弾よりも高い機動性をもつ。通称「中SAM(ちゅうさむ)」。

    <SPEC>全長:約4900mm 直径:約320mm 重量:約570kg

    田浦哲1等陸曹

    「アメリカでの実射訓練において、評価ナンバー1になれるよう、訓練に励んでいます」(陸自第344高射中隊/乾良祐3等陸曹)

    多重通信装置

    画像: 多重通信装置

    基地間の通信などに使用される通信装置。鉄塔に設置されたパラボラアンテナで、音声などのデータの送受信を行う。入間基地(埼玉県)や峯岡山分屯基地(千葉県)、奄美大島分屯基地(鹿児島県)など、多くの基地などに配置されており、各基地の通信部隊が保守・管理を行っている。

    古軸一輝3等空曹

    「多重通信装置は九州本土と沖縄を結ぶ重要な通信機器であり、保守・整備を昼夜実施しています」(空自奄美通信隊/古軸一輝3等空曹)

    隊員食堂で人気の料理を紹介

    陸自奄美駐屯地の「島豚肉みそラーメン」

    画像: 陸自奄美駐屯地の「島豚肉みそラーメン」

     締まった肉質と甘い脂身が特徴の奄美産島豚。そのひき肉で作ったピリ辛味の肉みそが絶品のラーメン。

     パイタンスープに肉みそを少しずつ溶きながら食べると味変が楽しめる。肉みその半分をご飯にのせて食べる隊員もいるとか。

    奄美大島で働く自衛官のおすすめスポットは?

     奄美大島で働き、生活をする自衛隊員たちが、生活者として島のお気に入りスポットを紹介してくれた。

    手作りシロップが美味!果肉たっぷりのかき氷

    画像: パッションフルーツの食感も楽しい

    パッションフルーツの食感も楽しい

    「農家さん直営のかき氷がスゴイ!」と隊員の間でも評判なのが得田農園だ。

     タンカン、パッションフルーツ、スモモなど、旬のフルーツのかき氷が人気。シロップは果肉がたっぷり。南国ならではの逸品だ。

    【得田農園】
    住所:鹿児島県大島郡龍郷町嘉渡430
    電話:0997-62-4431 営業時間:13:00~18:00 定休日:不定休

    福崎梨花3等陸曹

    「ふわっふわのかき氷、最高です」(陸自奄美警備隊本部中隊/福崎梨花3等陸曹)

    トンネルの中に夕日が入る、年に数日の不思議な光景

    画像: 奄美空港から自動車で約35分の、大島郡龍郷町円にある「かがんばなトンネル」。竜の顔に目が入るように見えることから、「ドラゴンアイ」ともいわれる

    奄美空港から自動車で約35分の、大島郡龍郷町円にある「かがんばなトンネル」。竜の顔に目が入るように見えることから、「ドラゴンアイ」ともいわれる

    「かがんばなトンネル」は、春分の日と秋分の日の前後数日間だけ、トンネルの中に夕日がすっぽり入る不思議な光景が見られる。

    「天候不良もあるので、見れたらラッキーです」と隊員。

    長谷川蓮3等陸曹

    「ドラゴンアイになる瞬間はとても神秘的!」(陸自第344高射中隊/長谷川蓮3等陸曹)

    ジャングルの中を突き進むカヤックツアーが人気

    画像: 基本的なこぎ方を教わってから出発。波が穏やかなので初心者でも安心なのだとか。各ツアー会社で申し込みを

    基本的なこぎ方を教わってから出発。波が穏やかなので初心者でも安心なのだとか。各ツアー会社で申し込みを

     亜熱帯気候に属する奄美大島は、日本最大級のマングローブの原生林が有名。

     海からカヌーやカヤックをこいでマングローブに入っていくツアーが人気だそう。「奄美ならではの貴重な動植物を間近で見てほしい」と隊員もオススメする。

    (MAMOR2023年11月号)

    <文/古里学 写真提供/防衛省>

    美ら島まもる自衛隊さん

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