日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は広島県にある呉教育隊の「呉教特製・茄子とひき肉のカレー」。タマネギと牛ひき肉のみのカレーに、素揚げしたナスとジャガイモをトッピング。地元で親しまれる呉海自カレーです。
広島県の南西部、呉教育隊の任務とは
広島県の南西部にあり、瀬戸内海に面した呉市。かつては旧海軍が、現在は護衛艦、潜水艦、練習艦などを有する海上自衛隊呉基地があります。
その敷地内にある海自呉地方隊の機関の1つが呉教育隊。海上自衛官として各部隊に配属される前に必要な精神的、体力的な基盤を育成、確立するための教育や、一定期間部隊において勤務した隊員に対するステップアップに必要な教育などを担う部隊です。
うま味とコクの深さが自慢!「呉教特製・茄子とひき肉カレー」
今回のメニューは「呉教特製・茄子とひき肉のカレー」。呉教とはもちろん呉教育隊の略です。
鶏ガラとくず野菜を大鍋で長時間煮込んだスープを使い、スパイスやソースにもこだわる本格派カレー。具材が少ない分、素揚げしたナスとジャガイモでボリュームアップ!
海自では航海中の曜日感覚を保つ意味も含めて、おおむね毎週、金曜日にカレーが提供されているといいます。
呉基地に所属する艦艇や陸上部隊で、それぞれ特色あるカレーが食されていることから、2014年に呉市役所内で「海自といえばカレー。呉市の活性化のため、そのカレーを市内の店舗で提供してはどうか」という発案がありました。呉市役所×海自のコラボ「呉海自カレー」の始まりです。
調理員が参加店舗に作り方を直伝して忠実に再現。司令や艦艇長のお墨付きで、今回紹介の「茄子とひき肉のカレー」のほか、「護衛艦かがビーフカレー」、「呉基地業務隊牛すじカレー」など、現在も市内約20店舗で食べることができ、レトルト商品も販売中だそうです。
疲労した体が喜ぶ栄養満点のカレー
「毎日の訓練で疲労した体が喜ぶ栄養満点のカレー。ルウはコクがあり、ひき肉やナスのうまみも凝縮されたすてきな1皿!」(2士/男性・20代)
「仕込みの時間帯からカレーの香りが漂うので、昼食を楽しみに訓練を頑張れます。毎日でも食べたい呉教特製カレーです」(2士/男性・20代)
「ひき肉とナスのバランスが絶妙で、今まで食べたカレーの中で群を抜いておいしいです。呉教育隊に入隊して良かったぁ」(2士/男性・20代)
モットーは"料理は愛情"です
【海上自衛隊 呉教育隊 調理員長 福本英二】(写真左)
【栄養士 佐伯知美】(写真右)
「1988年に入隊し、掃海艇での勤務が15年と最長です。7年前にこちらに異動し、それまでの約40人分から約10倍の人数分の調理に。調理室も調理道具も大きくなり、ギャップを埋めるのが大変でした。今回のカレーは私の考案レシピ。モットーは"料理は愛情"です」(福本)
「入隊は2016年、4年ほど自衛隊呉病院に勤務してこちらに来ました。病院食から健康食づくりに変わり、慣れるまで苦労しました。若い隊員が多いので魚がメインの日は小鉢や汁物を肉系にしたり、ピカタやフライにするなど工夫しています」(佐伯)
「呉教特製・茄子とひき肉のカレー」のレシピを紹介!
材料(4人分)
ご飯:丼4杯分
タマネギ(薄めのくし形切り):大1個
牛ひき肉:300g
おろしニンニク:小さじ1
おろしショウガ:小さじ1
サラダ油:大さじ1
[A]
カレー粉:小さじ1/2
クミン:小さじ1/2
ガラムマサラ:小さじ1/2
[B]
スープ(水3カップに顆粒鶏ガラスープ小さじ2を溶かしたもの):大さじ1と1/2
デミグラスソース:大さじ1と1/2
グレイビーソース:大さじ1と1/2
[C]
カレーフレーク:約1/2カップ(40g)
カレールウ:40g
チャツネ:大さじ1
ハチミツ:小さじ1
[トッピング]
ナス:大1個(乱切り)
ジャガイモ:大1個(6等分くらいに切る)を170~180℃の揚げ油で素揚げしたもの
オリーブ油:適量
福神漬け:適量
作り方
1:鍋または深めのフライパンにサラダ油を熱し、タマネギを入れ、中火弱でアメ色になるまで30〜35分じっくり炒める。
2:小さめのフライパンに[A]を入れ、香りが出るまで弱火で2〜3分、から炒りする。
3:1に牛ひき肉とおろしニンニク、おろしショウガを加えて炒め、ひき肉の色が白っぽくなってきたら2と[B]を加えて中火で10〜15分煮る。
4:3に[C]も加え、さらに混ぜながら中火で7〜8分煮る。
5:器の半分くらいにご飯、もう半分に4を盛り、トッピングのナスとジャガイモの素揚げをのせ、オリーブ油を回しかけ、福神漬けを添える。
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました
注目食材:カレーをおいしくする調味料
カレー粉、クミン、ガラムマサラなどのスパイスは、から炒りして香りを引き出してから使うとよい。デミグラスソース、グレイビーソースは市販されているものでOK。肉汁を元に作られたグレイビーソースは足すと上品な味わいになる。インドの伝統的な調味料のチャツネや、ハチミツなどでまろやかな甘みをプラス。
これら全てではなくても、いずれかを加えると、いつものカレーがワンランクアップする。
(MAMOR2023年7月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです