海上自衛隊の施設の中には、弾薬整備補給所や通信施設など、侵入者に立ち入らせてはいけない施設がある。海自の港湾などの警備を担う陸警隊(りっけいたい)はそうした事態に備え、訓練を実施している。だが、任務は基地警備にとどまらない。部隊の概要を説明しよう。
あらゆる事態を想定し、日々、訓練を欠かさない
海上自衛隊の横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各地方隊には、それぞれ警備隊が置かれ、地方総監の指揮監督を受ける警備隊司令が、下の構成図に示した各部隊を統括する。これから紹介する陸警隊は警備隊隷下の部隊となる。
マモルが同行した訓練(※)について、横須賀陸警隊の隊長・伊藤俊貴2等海尉は、「今日、見ていただいた訓練は、あくまで想定される事態の1つに過ぎません。われわれの訓練に決まったパターンはなく、2日間以上かけて行われる大規模訓練では、隊員たちに事前にシナリオを明かさないこともあります。最も懸念するのは、訓練への“慣れ”だからです。特定の想定のもとでの訓練に慣れてしまうと、練度が高くなる反面、想定外の事態に対する注意が疎かになりかねません。常に今、何が起きているのかを把握し、自ら考えながら、臨機応変に対応する訓練を行うことで、 実際に問題が発生したときに、冷静に対処できるのです」。
※前回記事『警備犬との完璧なチームプレー! 海自の「不審者捜索訓練」をリポート』
基地警備にとどまらない陸警隊のさまざまな任務
陸警隊の通常の任務を伊藤2尉に聞いてみた。
「横須賀地方総監部など、横須賀市の計6地区に点在する海自施設の警備を一手に引き受けています」
それに加えて、警戒任務にあたる犬「警備犬」の運用を行うという。「ほかにも、観音崎礼砲台を管理・運営する陸警隊では、国際観艦式など外国艦艇が入港する際には、礼砲の交換を行うことで入港を歓迎し、国際親善に寄与しています。また、国会議員や諸外国軍のVIPが来隊される際は、儀仗隊を編成し、敬意を表して栄誉礼を実施しています」と伊藤2尉。
次回記事では、それぞれの活動の詳細を紹介していく。
<文/魚本拓 写真/村上由美>
(MAMOR2023年6月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです