毎日のようにテレビ画面に映し出される戦争の最前線シーンを見ていると、兵士の任務は迫撃砲やミサイルを撃ったり、戦車や装甲車で進撃することと理解されている方も多いのではないだろうか?
しかし、その数百倍の兵士が後方で戦っている。自衛隊も同様だ。領空侵犯を阻止するため緊急発進する戦闘機や、領海への侵入を防ぐために監視する護衛艦、潜水艦、哨戒機などの任務は、報道などで国民の目に触れる機会もあるが、その任務を支えるために、国民の目に触れない多くの隊員が日本を守るために戦っているのだ。そんな“あなたが知らない自衛隊の仕事”を、マンガで紹介しよう。
ドラム缶整備
11もの作業工程を経てドラム缶をリサイクル
【陸上自衛隊の各燃料支処】
ドラム缶整備は、空になったドラム缶の内と外を清掃し、再度燃料を注入して使用可能な状態にする任務だ。
約30キログラムあるドラム缶から残っている燃料を抜き、専用の機械でドラム缶のボディの形を整えた後、内部の洗浄と乾燥、外部の洗浄と塗装をし、燃料の種類や「火気厳禁」などの表示を行う。体力を使う上に危険物を取り扱うという大変な仕事だ。
物品の整備
シーツから自転車まで生活用品を製作・修理している
【陸上自衛隊の補給処および整備工場】
陸上自衛隊では、車両や火器などの装備品の整備のほかにも、隊員の生活に関わる物品の整備も行っている。例えば、枕カバーやシーツも、その縫製や使用後の洗濯、プレス(アイロンがけ)と、物品の製作から修理までを、各駐屯地の担当部署が実施するのだ。そこで使用する洗濯機やアイロンの修理ももちろん隊員自ら行う。
ほかにも、自転車、リヤカー、ブラインド……と、身の回りのものはなんでも整備し、しかもそのクオリティーも高い。業者に頼んだり、買ったりしたほうが早いのでは? というのは一般人の考え方。「限られた予算の中、直して使えるものは自分たちで直して使うのが自衛隊」なのだ。
機体塗装業務
航空機の特別塗装はデザインから塗装まで隊員自ら作業する
【航空自衛隊各航空部隊】
航空機の特別塗装をする際は、まずデザインの「下描き」を行う。次に、機体表面を洗浄する。その後、塗装箇所以外を汚さないようにするためにマスキングを行い、ようやく塗装となる。仕上がり具合はマスキングを取るまで分からない。マスキングは骨の折れる作業だか、仕上がりを左右する大事な工程だ。これらの根気のいる作業は、航空機を運用する部隊の航空整備員が行うのだ。
最近では、小松基地航空祭で披露された、映画「トップガンマーヴェリック」に登場した戦闘機と同じデザインの特別塗装が話題となった。特別塗装機は、目的が終了したら剥がさなくてはならない。とてもはかない塗装なのである。
排水の水質検査
周囲の環境に配慮し駐屯地から出る排水の水質を検査
【陸上自衛隊の補給処など】
陸自の補給処では、水質検査の業務も実施。駐屯地から出る排水は、周囲の環境に悪影響を与えないよう、下水道法や水質汚濁防止法、各地方自治体の条例にのっとって各駐屯地が処理をする。この処理をした排水が法や条例の基準値内の水質になっているかを調べるのが水質検査だ。
霞ヶ浦駐屯地(茨城県)にある関東補給処では、東部方面隊の各駐屯地が処理した排水の、酸性やアルカリ性の数値、油の量などが基準値内かを検査。検査に使う溶剤には毒性のものもあるため、防毒マスクを着用して作業をすることも。時には危険なこの作業を日々、行うことで環境を守り、地域の信頼獲得へとつなげている。
(MAMOR2022年2月号)
<文/魚本拓 漫画原案/岡田真理 漫画/日辻 彩>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです