自動車の自動運転に代表されるように、これまで人間が担ってきた仕事を機械に代行させる世の中がやってきた。人間以上の効率をもって作業を進め、人間では不可能な仕事をもこなしている。それを可能にしている技術の1つがAI(人工知能)だ。
その先進技術を軍事の領域に導入すべく世界各国がしのぎを削っている。もちろん、わが国でも研究が進められているが、AIの導入で、自衛隊の任務はどう変わるのか? マンガでシミュレーションしてみた。
Case1. 一瞬で目標を探知
海上自衛隊の哨戒機や哨戒・掃海ヘリコプターは、搭載するレーダーやソナーなどで海上の艦艇や海中の潜水艦、機雷などを探査する。
こうした機器類は肉眼では不可能な、広範囲の探索ができるメリットがあるが、反面、対象物をキャッチした場合、それがはたして目標としている艦船などなのか、それとも関係のない一般の船なのか解析する必要がある。
現在の自衛隊では…
これまでは、センサー画面に現れたシグナルの識別を手作業で行っていた。そのため、時間がかかる上に人によって判断にばらつきが出る可能性があった。
将来のAI部隊では…
AIは、過去の画像や各種データを大量に学習し、艦艇などの特徴を分類、把握することができる。センサー画面の反応から瞬時に対象物の種類や大きさ、位置、スピード、国籍などを識別する。長時間に及ぶ作業でも疲労することがない。また回数を重ねるごとに、その精度は向上するのだ。
Case2. 暗闇でも遭難者を発見
現在の自衛隊では…
海上保安庁などからの要請により、海上自衛隊では船舶の転覆や沈没による遭難者の捜索、救助に派遣されることがある。しかし、広大な海面を漂う人を肉眼で見つけるのは難しい。ましてや荒天の場合や夜間など、視界が著しく悪い条件下での捜索は困難を極める。
将来のAI部隊では…
こうした洋上救難にAIを導入することにより、これまでは隊員の経験や勘に頼っていた捜索をより確実に短時間で行えることになる。
過去の遭難や救助で解析した光学カメラの画像データに加え、気象や潮流のデータを加えて解析し、遭難した船舶がSOSを発した地点からどの方向へ遭難者が流されるかを割り出し、人では気付けないわずかなレーダーやセンサーの反応からでも遭難者を発見することができる。
訓練を重ねた隊員の経験や技術を頼りに悪天候下の中を飛行するよりも、はるかに確実で短時間の遭難者発見につながるのだ。
※漫画の内容は、想定に基づくイメージです
(MAMOR2022年8月号)
<漫画/吉田健二 文/古里学>