万が一の事故に備え、24時間365日態勢で出動に備えている百里救難隊。彼らを指揮する救難隊長、松瀬瀬実2等空佐に、部隊の目指すことや救難隊の実績について話を聞いた。併せて、あらゆる状況でも対応するために、救難隊が日ごろどんな訓練をしているのか、その一部を紹介しよう。
人の命を救う責任を自覚し、プロとして技量を追求する
百里救難隊を「関東一帯の捜索救助の専任部隊である責任を自覚し、献身的に動く部隊」と表現する松瀬2佐。ここは「大変な面もあるが、楽しくやりがいがある職場」だと語る。「災害救助の業務上、頑張った分だけ人の命を救えて、救助をした方から感謝されることもある。手紙をもらったり目に見えて気持ちが伝わるので、やりがいを直接的に感じやすい」そうだ。
「自衛隊の組織は上下関係があり、私が強く言うと萎縮させたり雰囲気を悪くすることもある。自分の考えを押し付けすぎると、言ったことをやるだけになるので、自主的に動いてもらえるように気を付けます。指揮官の威厳も大切ですが、部下の意見に耳を傾ける“聞く力”も非常に重要だと思います」
現場の雰囲気作りで心掛けるのは、太陽のような明るさ。「救難隊の任務は大変ですが、どうせなら楽しく働きたいし、明るく前向きに行動したほうが結果も変わる。厳しさも必要ですし安全も強く意識しますが、同じぐらい明るさを大切にしたいです」。
厳しい訓練を重ね続け、いち早く現場に駆け付ける
1958年に編成された臨時救難航空隊が、71年に航空救難団へ改称。救難隊は全国10カ所(千歳、秋田、松島、百里、新潟、浜松、小松、芦屋、新田原、那覇)に配置され、隊員はあらゆる状況を想定した厳しい訓練を年間300日ほど行っている。
救難隊の任務は、航空救難、災害派遣、航空輸送の3点。主任務は航空機墜落事故が起きた際の航空救難だ。これまで251件、151人の救難の実績がある(2022年2月時点)。だが、その救難技術の高さから、海上保安庁や消防、警察などが対応できない海難・山岳事故の捜索依頼も多い。救難団のモットーは「That others may live(かけがえのない命を救うために)」。救難隊は、遭難などの事態や戦闘機が緊急発進した際の事故に備え、24時間365日態勢でクルーがスタンバイしているのだ。
(MAMOR2022年5月号)
<文/守本和宏 写真/赤塚 聡>