•  万が一の事故に備え、24時間365日態勢で出動に備えている百里救難隊。彼らを指揮する救難隊長、松瀬瀬実2等空佐に、部隊の目指すことや救難隊の実績について話を聞いた。併せて、あらゆる状況でも対応するために、救難隊が日ごろどんな訓練をしているのか、その一部を紹介しよう。

    人の命を救う責任を自覚し、プロとして技量を追求する

    U-125A、UH-60J両機の操縦資格を所有する松瀬2佐。ミッションに合わせクルー配置を考え、現場を指揮する。また、訓練の管理で段階的に隊員をステップアップさせる役割を担う

     百里救難隊を「関東一帯の捜索救助の専任部隊である責任を自覚し、献身的に動く部隊」と表現する松瀬2佐。ここは「大変な面もあるが、楽しくやりがいがある職場」だと語る。「災害救助の業務上、頑張った分だけ人の命を救えて、救助をした方から感謝されることもある。手紙をもらったり目に見えて気持ちが伝わるので、やりがいを直接的に感じやすい」そうだ。

    画像: あらゆる現場での救助活動に対応するため日ごろから鍛錬を重ねるだけでなく、岩壁登坂や冬季の低温潜水など過酷な環境での訓練を重ねている

    あらゆる現場での救助活動に対応するため日ごろから鍛錬を重ねるだけでなく、岩壁登坂や冬季の低温潜水など過酷な環境での訓練を重ねている

    「自衛隊の組織は上下関係があり、私が強く言うと萎縮させたり雰囲気を悪くすることもある。自分の考えを押し付けすぎると、言ったことをやるだけになるので、自主的に動いてもらえるように気を付けます。指揮官の威厳も大切ですが、部下の意見に耳を傾ける“聞く力”も非常に重要だと思います」

    画像: 雪山の救難ではストレッチャーに要救助者を乗せて搬送することも。救難員は65キログラムの荷物を背負い安全な場所まで進む雪山訓練を行う

    雪山の救難ではストレッチャーに要救助者を乗せて搬送することも。救難員は65キログラムの荷物を背負い安全な場所まで進む雪山訓練を行う

     現場の雰囲気作りで心掛けるのは、太陽のような明るさ。「救難隊の任務は大変ですが、どうせなら楽しく働きたいし、明るく前向きに行動したほうが結果も変わる。厳しさも必要ですし安全も強く意識しますが、同じぐらい明るさを大切にしたいです」。

    厳しい訓練を重ね続け、いち早く現場に駆け付ける

    画像: 小さな部品でも上空で外れたら事故につながるため細部の整備が重要。整備員同士で都度マニュアルを確認し、慎重に点検作業を行う

    小さな部品でも上空で外れたら事故につながるため細部の整備が重要。整備員同士で都度マニュアルを確認し、慎重に点検作業を行う

     1958年に編成された臨時救難航空隊が、71年に航空救難団へ改称。救難隊は全国10カ所(千歳、秋田、松島、百里、新潟、浜松、小松、芦屋、新田原、那覇)に配置され、隊員はあらゆる状況を想定した厳しい訓練を年間300日ほど行っている。

    画像: 百里救難隊には80人程度の隊員がいる。整備員もパイロットなどと同様に24時間態勢で整備作業を行い、いつでも離陸できるよう準備を整える

    百里救難隊には80人程度の隊員がいる。整備員もパイロットなどと同様に24時間態勢で整備作業を行い、いつでも離陸できるよう準備を整える

     救難隊の任務は、航空救難、災害派遣、航空輸送の3点。主任務は航空機墜落事故が起きた際の航空救難だ。これまで251件、151人の救難の実績がある(2022年2月時点)。だが、その救難技術の高さから、海上保安庁や消防、警察などが対応できない海難・山岳事故の捜索依頼も多い。救難団のモットーは「That others may live(かけがえのない命を救うために)」。救難隊は、遭難などの事態や戦闘機が緊急発進した際の事故に備え、24時間365日態勢でクルーがスタンバイしているのだ。

     (MAMOR2022年5月号)

    <文/守本和宏 写真/赤塚 聡>

    命を救うためのワンチーム!

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