• 画像: 人命救助のエキスパート! 「航空自衛隊救難隊」の訓練に密着

     国の危機に立ち向かう自衛官に何かがあったとき、すぐに救助に向かい復帰させ、自衛隊の戦力を落とさない。それが航空自衛隊救難隊の役目です。他を生かすために自分の持てる力のすべてを発揮する任務。それは、航空クルー、救難クルー、地上クルーらが1つになったチームによって達成されます。日々の訓練を怠らず、昼夜を問わず常に出動準備をしているワンチームの、ある日の訓練に同行取材しました。

    昼夜を問わず救助に向かう救出訓練に密着取材

    画像: UH-60Jに搭乗するパイロット、救難員、機上整備員が集まりブリーフィングから訓練はスタート。気象や訓練地域の情報などお互いに注意点を確認し合う

    UH-60Jに搭乗するパイロット、救難員、機上整備員が集まりブリーフィングから訓練はスタート。気象や訓練地域の情報などお互いに注意点を確認し合う

     マモル取材班はUH-60J救難ヘリコプターがほぼ毎日行っている救出訓練に同乗する機会を得た。山岳に不時着した海上自衛隊のパイロットを救出する想定で行われた実践的な訓練を、準備から救出まで追いかけてみた。

    画像: 救難隊が装備する、捜索機U-125AとUH-60J救難ヘリコプター。24時間365日、待機(アラート)態勢を取り、任務に備える

    救難隊が装備する、捜索機U-125AとUH-60J救難ヘリコプター。24時間365日、待機(アラート)態勢を取り、任務に備える

    【捜索機U-125A】
    捜索レーダーと赤外線暗視装置を搭載し高い捜索能力を誇る救難機。救難捜索のため機体側面には大型の窓が付いている

    <SPEC>全幅:15.66m 全長:15.60m 全高:5.36m 航続距離:約4000km 最大速度:約820km/h 乗員:7人

    【H-60J救難ヘリコプター】
    赤外線暗視装置、気象レーダーなどを搭載した救難ヘリコプター。捜索用に機外に半球状に張り出した窓(バブルウインドー)がある

    <SPEC>全幅:16.36m 全長:19.76m(全幅・全長はローター部を含む) 全高:5.13m 最大速度:約265km/h 航続距離:約1300km 乗員:5人

    離陸前には入念なチェック。日々の訓練に臨む救難隊員

    ブリーフィングを終えクルーは訓練の準備へ。機上整備員がヘルメットや個人装具などを身に着ける

     山岳地に不時着したパイロットの救難命令が航空救難団司令より百里救難隊に下命された想定で訓練が始まった。救難隊員は各自が必要な装具を手際よく身に付ける。

    装具の準備を終えた救難員は、UH-60Jに救助活動に使用する個人装具を運び、不備がないか最終点検

     準備が整うと救難ヘリコプターUH−60Jへ向かい、離陸前の最終点検を行う。パイロットはプロペラに傷がないか何度も点検し、救難員は現場到着後すぐに展開できるようロープを確認。細部にこだわる姿に職人魂を感じる。

    UH-60Jのエンジンが始動すると整備員は機体を1周し安全確認。準備から出発まで約15~30分で済ませる

     同行取材のため機内に入ると、天井の低さに驚く。中腰で移動するUH−60Jのキャビンは、普段の生活では味わうことのない非日常の空間だ。操縦席やその後ろに控える機上整備員の周りには多くの計器が並び、互いにエンジン出力の数値などを報告し合った後、離陸する。

     UH−60Jは空中で停止するホバリング後に発進。機首を下げ、一気にスピードを上げて訓練場所である山岳に向かった。一刻を争うような機体の急旋回に、体は強いGに押し付けられる。後でパイロットに話を伺うと「今回の離陸はいつもよりゆっくりめです」と笑顔で返された。緊急時はどれくらいのGが掛かるのかと思うのと同時に、パイロットの見事な操縦に熟練の技を感じた。

    平常心を保つのも難しい非日常の機内空間での配慮

    画像: UH-60Jを操る機長(右)と副操縦士の2人のパイロット。お互いをカバーしながら繊細な動作で機体をコントロール

    UH-60Jを操る機長(右)と副操縦士の2人のパイロット。お互いをカバーしながら繊細な動作で機体をコントロール

     航空自衛隊の救難任務では、U−125AとUH−60Jを運用。速度が速いジェット機U−125Aが現場で要救助者の捜索をし、その位置が判明すれば、あとに続くUH−60Jが救助活動を行う手順だ。今回の訓練はUH−60Jのみで実施された。

    画像: パイロットの後ろで計器類の確認などを行う機上整備員。操縦席から見えないキャビン内の確認など求められる役割は大きい

    パイロットの後ろで計器類の確認などを行う機上整備員。操縦席から見えないキャビン内の確認など求められる役割は大きい

     現場到着まで2人のパイロットは、計器を見ながら風の強さ、雲の有無など確認。副操縦士が左前方に発見した小さな鳥の存在も、トラブル回避のため報告していたのが印象深い。

    画像: 救難員はキャビンの両翼に待機し、左右の窓から外の様子を伺う。障害物がないかなど監視し、パイロットへ報告・確認をする

    救難員はキャビンの両翼に待機し、左右の窓から外の様子を伺う。障害物がないかなど監視し、パイロットへ報告・確認をする

     やがてパイロットから「富士山やスカイツリーは見えた?」といった話も出る。そのやりとりは同乗するメンバーの緊張感を和らげるだけでなく、取材班へ安心感を与えるメッセージのようにも感じた。そんな“場作りの努力”が、現場に向かう数分間にも垣間見えた。

    救難隊が追い求める“人を救う”意味とは

    要救助者をUH-60Jに収容。つり上げ時にストレッチャーが回転しないよう、左下に伸びたロープの先でもう1人の救難員が補助する

     訓練現場UH−60Jが到着し、要救助者役の隊員と2人の救難員、取材班を地上に降ろすため、ヘリは一度着陸。再び離陸した後、初めにストレッチャー搬送の訓練が行われた。山肌に取り残された要救助者が骨折など重傷だった場合、ストレッチャーで搬送をする。

    画像: 要救助者の容態を確認し救助を行う。ダウンウオッシュの影響を最小限にとどめるため、UH-60Jは少し離れた場所で姿勢を維持する

    要救助者の容態を確認し救助を行う。ダウンウオッシュの影響を最小限にとどめるため、UH-60Jは少し離れた場所で姿勢を維持する 

     2人の救難員は「大丈夫ですか? これから運びますよ」と要救助者に声を掛けながらストレッチャーに寝かせ、5カ所ある固定用ベルトで要救助者の体を固定。1つひとつの作業を声に出し、救難員同士で確認し合う姿が印象的であった。その声は、搬送される要救助者にとっても安心できる声だったに違いない。

     頭上に目を向けると、機上整備員がキャビンから身を乗り出しているのが見えた。機上整備員は、ヘリによる強烈なダウンウオッシュ(ヘリコプターから吹き降ろされる強風)が要救助者に当たらないよう、少し離れた場所で待機するUH−60Jを救助しやすい位置に誘導する。その誘導も「あと1メートル、OK」と細かくパイロットに指示。ベストの位置に到着すると、機上整備員はホイスト(要救助者をつり上げ/下げる装置)を慎重に操作し引き上げた。もう1人の救難員は地上に待機し、ストレッチャーが回転しないように補助用のロープを持って力強く支える。引き上げ後、救難員は要救助者の容態を素早く確認する。

    画像: スリングを使った救出訓練も実施。要救助者を支える救難員を、機上整備員がサポートしキャビンの中に素早く収容する

    スリングを使った救出訓練も実施。要救助者を支える救難員を、機上整備員がサポートしキャビンの中に素早く収容する

     ストレッチャーによる搬送訓練を終えると、UH−60Jは再び要救助者と救難員を地上に降ろし、今度は軽傷者などを搬送するスリング(救助用抱っこひも)での救出訓練を行う。首から膝まで支えられるため要救助者の負担が軽いスリングだが、つり上げ時は風の影響で大きく揺れることも。救難員は声掛けをしながら要救助者にスリングを取り付け、しっかり抱いて安全を確保。つり上げ中も、救難員の視線はヘリと要救助者の間を何度も往復し、確認を怠らない。そしてヘリ内の機上整備員と引き上げのタイミングをアイコンタクトで測る。

     そこにあったのは確かな技術と要救助者に負担をかけない尊い優しさだ。要救助者役の隊員からも「救難員の言葉が、こんなにも力強く安心できるとは思わなかった。不安なく助けてもらえた」と感想が出た。技術と力がなければ人は助けられない。だが思いやりなどの人間性も救難隊には求められると感じた訓練同行であった。

    (MAMOR2022年5月号)

    <文/守本和宏 写真/赤塚 聡>

    命を救うためのワンチーム!

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