わが国の危機に際して自衛隊が防衛活動するときに、国民の理解と協力、在日アメリカ軍との連帯が不可欠です。また、日ごろから、有事に備えて防衛施設の充実を図ることも大切です。そのために、日本各地で、表舞台に立つことなく黙々と汗をかくのが「地方防衛局員」たち。そんな地方防衛局員が、どんな思いを込め、どのように仕事しているかを知るために、全国の防衛局であった事実を基に、分かりやすい物語にしたマンガでお届けしよう。
「訓練中の漁業補償」の巻
北関東防衛局 矢内係長の場合
漁に出られない期間を補償
日本周辺の海には自衛隊や在日アメリカ軍が訓練などで使用する海域があり、自衛隊法などの規定で、漁船の操業禁止や制限ができる。そのため地方防衛局は漁協などを通して漁業者へ漁ができない期間を補償。北関東防衛局は硫黄島周辺、新島周辺、千葉県房総沖、青森県六ヶ所村沖の4カ所を補償している。
【矢内陽 北関東防衛局 管理部施設補償課 漁業補償第2係長】
2004年入局。福島県出身。小さいころからの航空機好き。今は英語とスペイン語を勉強している
「装備品の監督・検査」の巻
北関東防衛局 田島2等空尉の場合
装備品契約の監督・検査を実施
地方防衛局は防衛省・自衛隊に納入される航空機や火器など装備品の価格や契約などに関する監督・検査・監査を実施。北関東防衛局ではT－4練習機などに搭載されるF3ターボ・ファン・エンジンの監督業務を担当。T－4を使用するブルーインパルスの活動にも影響する、重要な監督・検査だ。
【田島誠司 2等空尉 北関東防衛局 装備部装備第2課 検査官】
南西航空警戒管制団、第9警戒隊、第2補給処などを経て現職
「地元との信頼関係醸成」の巻
南関東防衛局業務課の場合
地元と一体となり夜間巡回を実施
南関東防衛局は、神奈川県横須賀市内の繁華街での夜間巡回パトロールに参加している。このパトロールは地元町内会・商店街などが主催するもので、毎月第3金曜日の夜、神奈川県、横須賀市の両職員、防衛局職員と海上自衛隊横須賀地方隊関係者、在日アメリカ海軍横須賀基地関係者などが参加し、多いときは100人ほどで巡回している（注）。
パトロールの途中、会う人たちへの声掛けや吸い殻などのごみ拾いなどを行っている。この活動により町の防犯や環境美化に寄与することで、地元との信頼関係をさらに深めている。
(注)現在は新型コロナウイルス感染症の状況を見つつ、開催される際は参加人数を絞って巡回している
【南関東防衛局業務課】
日米地位協定に基づく損害賠償手続きなどを行う部署
「地域理解の促進活動」の巻
近畿中部防衛局 中村室長の場合
地域の清掃活動に積極的に参加する
自衛隊と在日アメリカ軍、地域住民の三者の交流として、近畿中部防衛局では管轄する京都府京丹後市袖志地区の海岸の清掃活動に参加。この地域には大量のごみが打ち上げられており、地元の要請で防衛局員や自衛隊員、在日アメリカ軍関係者が定期的に海岸清掃に協力。
ごみは大量で重さもあるため、力のある自衛隊員や在日アメリカ軍人が活躍。地元から「みんなに協力してもらい助かった」と感謝の声が寄せられた。在日アメリカ軍関係者からも「地元と関わるいい機会」と大好評。相互理解につながっている。
【中村晶平 近畿中部防衛局 企画部地方協力確保室長】
1994年防衛省入省。旅先で家族と満天の星空を見て以来、天体観測が趣味に
「防衛施設周辺の土地売買」の巻
近畿中部防衛局（東海防衛支局）施設補償管理課の場合
古い資料をたどり続けて問題解決
地方防衛局では、基地・駐屯地に隣接している国有地の売買などの行政手続きを担当している。駐屯地に隣接した隊員用宿舎を財務省に返還するため登記簿の整理などをする必要があった近畿中部防衛局東海防衛支局。法務局で調査をしたところ、土地の大まかな位置や形状を表した資料が白紙で境界が不明な状態だった。
過去の資料を探しても分からず、地元自治体や民間業者と協力し方々で調査を重ねると、区画整理が行われた1970年代の資料にようやくたどり着き、整理できることに。日ごろの協力が問題解決につながった。
【近畿中部防衛局（東海防衛支局）施設補償管理課】
自衛隊および在日アメリカ軍が使用する土地の買い入れなどや、施設の財産管理などを行なっている
（MAMOR2022年4月号）
＜文／古里学 撮影／村上由美 マンガ／やまがき秀＞
