2022年に放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。舞台となった平安~鎌倉時代以前から、わが国では諸国間で多くの戦があり、そこには、トップに立つ“将”に仕える“幕僚”がいたと考えられます。小説やドラマ、映画にも、多くの幕僚・参謀が登場して、それぞれにファンがいます。そこで、「幕僚」について学んできた幹部自衛官500人にアンケート調査をし、「好きな幕僚」を選んでいただきました。
1位:室井慎次(ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ))
警察機構の改革を掲げる、反骨のキャリア官僚
警察庁のキャリア官僚で、劇中の最終階級は警視監。当初は主人公たち所轄の警察官らと対立するが、やがて現場の人間が活動しやすいように警察組織の改革を目標として掲げるようになる。捜査本部の責任者を引き継いだ際には迅速に軌道修正を行い、所轄の意見具申を積極的に採用するなど的確で柔軟な指揮能力を発揮した。警察としての信念に従って上層部に反発することもある。
「組織の圧力に屈せず現場を支えたこと」(陸自40代 3佐)
「現場のスタッフの声に耳を傾け、それを上の仕事に反映させている姿は、参謀としてあるべき姿だから」(陸自30代 1尉)
2位:葛城ミサト(『エヴァンゲリオン』シリーズ)
人類を守る女性指揮官
「使徒」と呼ばれる人類の敵のせん滅を任務とする、特務機関NERVの戦闘指揮官。大胆な作戦立案を行いながらも、面倒見のいい人柄が魅力。
「部下の身の上を理解しようとする。失敗しても見捨てず、次のチャンスを与える」(海自50代 1佐)
「危機を脱する発想力と実行力」(空自40代 3佐)
3位:パウル・フォン・オーベルシュタイン(小説・アニメ『銀河英雄伝説』)
冷徹な無私の参謀役
徹底したマキャベリストと評され、主君に対しても忖度のない意見具申を行う。軍事・政務・策謀で手腕を発揮。
「他人から嫌われることを承知の上で、平然と冷酷な謀略を完遂する点」(陸自40代 1尉)
「理知的、合理的に物事を進める」(陸自40代 3佐)
ジャンル不問!自衛官の好きな「幕僚・参謀」たち
ジャンル問わず聞いたところ、少数だがこんな人たちの名前もあがりました。
藤沢武夫(1910~88年)
本田技研工業の創設者、本田宗一郎の名参謀と呼ばれた実業家。副社長、最高顧問などを歴任。本田が生涯を一技術者として過ごすことができたのは藤沢の存在ありきといわれている。
「本田の欠けているところを補い、ホンダを一流企業に育てた。2人がいたからこそ今のホンダ、世界のホンダがあると思う」(空自50代 3佐)
オードリー・タン(1981年~)
台湾のデジタル担当政務委員。ソフトウエア開発などで手腕を発揮。コロナワクチン接種の予約システムや、感染者や接触者の追跡ツール開発などでコロナウイルス封じ込めに貢献。
「デジタル技術を活用して、政府と民衆の境界を打ち破り、社会の声(ニーズ)が政府に伝わる仕組みを整えたから」(陸自40代 1尉)
耶律楚材(1190~1244年)
チンギス・ハンに仕えた初期モンゴル帝国の官僚。中国の伝統的な教養を備え、モンゴルの統治が円滑に進むよう文化の差に配慮した施策を建言したほか、内政手腕も発揮した。
「補佐役としていかに組織が円滑に動くかを考えていたから」(陸自50代 2佐)
「文民としての働きも抜群」(陸自40代 准尉)
武部沙織(アニメ『ガールズ&パンツァー』)
主人公の補佐役を務め、高いコミュニケーション能力を生かしてメンバーを的確に取りまとめる。状況整理能力にも秀で、前向きな性格からチームのムードメーカー的存在。
「ロジスティクスを重視し、後輩の面倒をよく見て、陰に陽に主人公のやりたいことの実現を図ることに尽力したので」(空自40代 3佐)
<文/帯刀コロク イラスト/江原ノブヒロ(室井慎次)>
(MAMOR2022年3月号)