日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は石川県金沢駐屯地の「金屯ライス」を紹介します。地元のB級グルメをアレンジしたメニューはボリュームたっぷり、1度食べたら忘れられないひと皿です。
城下町の歴史感じる金沢駐屯地
加賀百万石の城下町として、歴史的遺構が数多く残る石川県金沢市の南端にある陸上自衛隊金沢駐屯地。正門と警衛所は金沢城にちなんだ城壁風の造りになっています。明治時代に建てられた旧軍の将校集会所「尚古館」は、明治から昭和にかけての軍服や装備品、文書などを展示する貴重な資料館として残されており、駐屯地の一般開放日、もしくは事前手続きによって見学することも可能です。(※金沢駐屯地ホームページをご確認ください)
当駐屯地は、自衛隊の前身である警察予備隊が創設された1950年、金沢営舎として発足しました。その後、改称・改編を経て、現在は北陸3県の防衛と警備を担任する基幹部隊である第14普通科連隊をはじめ、6個部隊が駐屯し、金沢駐屯地業務隊が食事を提供しています。
数あるメニューの中から今回紹介する料理は、地元のB級グルメの1つ「ハントンライス」をアレンジしたもので、「金屯ライス」という名前は、お察しの通り、金沢の“金”と駐屯地の“屯”から名付けられました。
デミグラスソースとトマトピューレで炒めた本格的な味わいのご飯の上にオムレツをのせ、濃厚なハヤシソースをかけ、さらにエビフライとタルタルソース。これぞ洋食の代表的メニューの結集、パワーアップすること間違いなしの味わいで、月1回の金屯ライスの日を心待ちにしている隊員が多いのもうなずけます。
副菜にはキャベツ、トマト、コーンなどを合わせたサラダなど、あっさり系が箸休めとなり、お勧めだそうです。
隊員も絶賛!金屯ライスの評判は
「タルタルソースとハヤシルウが絶品で、フライやオムレツとの相性も抜群。金屯ライスは私の中で飯流スターです(笑)」【1士/女性・10代】
「口の中では、ライスとフライとオムレツとソースが大運動会状態に(笑)。これ以上はない幸せな追い駆けっこです」【2曹/男性・40代】
「実家の母が作るハントンライスよりおいしくて、胃袋だけでなく心も満たされます。金屯ライスの日が楽しみでなりません」【士長/男性・20代】
「金沢駐屯地の食堂はおいしい」という評判がプレッシャーに
【陸上自衛隊金沢駐屯地 業務隊補給科糧食班 管理栄養士 楠田直美】
陸自に入隊し、管理栄養士としての勤務経験は13年目に入りますが、こちらに異動してからはまだ1年ちょっと。以前から“金沢駐屯地の隊員食堂のご飯はおいしい!”という評判を聞いていたので、その味をキープしてさらにグレードアップさせるのは大変だなぁと、かなりプレッシャーがありました(笑)。
昼食時に400〜500人が利用します。少しでも多くの隊員の活力源になるように、今までにない新しい料理やデザートなど、バリエーションをさらに増やして飽きのこない献立にチャレンジしていきたいと思っています。
金屯ライスのレシピを紹介
<材料(2人分)>
エビフライ(小さめ・市販品):4尾
[デミグラスソースライス]
バター:4g
牛バラ薄切り肉(細かく切る):60g
タマネギ(みじん切り):大さじ6(約1/4個分)
<A>
デミグラスソース:80g
トマトピューレ:大さじ1
顆粒コンソメスープ:小さじ1
塩、コショウ:各適量
ご飯:丼2杯分
[タルタルソース]
ゆで卵(みじん切り):1/2個分
マヨネーズ:大さじ3
キュウリのピクルス(みじん切り):大さじ2
タマネギ(みじん切り):大さじ11/2
塩、コショウ、練りがらし:各少々
[オムレツ]
溶き卵:4個分
牛乳:小さじ2
塩、コショウ:各少々
バター:10g
[ハヤシソース]
バター:6g
タマネギ(薄切り):1/6個
水:11/3カップ
ハヤシフレークまたはルウ:50g
<作り方>
1:デミグラスソースライスを作る。フライパンにバターを溶かし、牛肉とタマネギを炒め、Ⓐを入れて炒め合わせる。さらにご飯を加えて全体を混ぜ炒める。
2:タルタルソースを作る。ボウルに全ての材料を入れて混ぜ合わせる。
3:オムレツを作る。溶き卵に牛乳、塩、コショウを入れてかき混ぜる。小さめのフライパンにバターを溶かし、半量の卵液を流し入れ、半熟状のオムレツを作る。同様にもう1つ作る。
4:ハヤシソースを作る。フライパンにバターを溶かし、タマネギを炒め、水を加えて煮立たせ、ハヤシフレークを入れ、さらに少し煮込む。
5:ライス型(なければ茶わん)に①を詰め、ひっくり返して器に盛る。③をのせ、中央を割り開き、④をかける。さらに上にオーブントースターなどで温めたエビフライをのせ、②をかける。
ハントンライスとは?
1960年代後半から金沢市の洋食店などで食されている、オムライスに白身魚のフライをのせてタルタルソースをかけた料理。金沢の老舗パン店「ジャーマンベーカリー」が、市内にレストランを出店する際、料理長が、修業時代にまかない料理として食べていたマグロのフライがのったバターライスを元に作ったのが始まりともいわれる。その後、アレンジを加えて広まり、今では市内の十数店舗で食べられる。
“ハン”は白身魚のフライにタルタルソースをかけるハンガリーの食文化から 、“トン”はフランス語とハンガリー語でマグロを意味することが名の由来とされるが、真相は定かでない。
(MAMOR2021年11月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林紘輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>