日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は海上自衛隊横須賀教育隊の「バッファローウイング」。サクッ、ジュワ〜、辛い! の食感と味がクセになります。食べるとパワーアップして勉強も訓練も頑張れると評判です。
女性自衛官を輩出する、海上自衛隊横須賀教育隊
海上自衛隊横須賀教育隊(以降、横教)は、神奈川県横須賀市の陸上自衛隊武山駐屯地内にあります。隣には航空自衛隊武山分屯基地もあり、同じ武山地区に陸・海・空3自衛隊の部隊がそろう全国でも珍しい環境です。
教育隊とは自衛隊における各種教育を担当する部隊のことで、海自には横教のほか、京都府・舞鶴教育隊、広島県・呉教育隊、長崎県・佐世保教育隊の計4つがあります。横教は1959年に開隊され、主として関東以北の出身者を中心とした新入隊員や一般曹候補生、予備自衛官などの教育が行われています。
また、横教では女性自衛官教育も行われており、全国で活躍する女性海上自衛官を輩出しています(女性の幹部海上自衛官の教育は広島県・幹部候補生学校にて実施されています)。
オリジナルソースが味の決め手
今回紹介する「バッファローウイング」は、多くの隊員が勉学や訓練の合間の楽しみとして利用する隊員食堂の人気メニュー。元来は鶏手羽肉とカイエンペッパー(赤トウガラシを乾燥させて作る辛味の強い香辛料)を用いるところを、鶏モモ肉とケチャップ、チリペッパーソース、酢で作った横教オリジナルソースを用い、辛味を抑えて食べやすく仕上げられています。
激辛好きの人はソースにカイエンペッパー、一味トウガラシ、タカノツメを細かく刻んだものなどを好みでプラスするといいのだそう。付け合わせにさっぱりとした味の野菜類を添えると食べやすくなり、お勧めです。
パンチがある味で食べ応え充分!
隊員たちに食べた感想を聞いてみると……
「外はカリッ、中はジューシーな鶏肉がとてもおいしいです。お肉と野菜のバランスがよく、栄養面でも満足のいく一皿!」【士長/女性・20代】
「日々、厳しい訓練に励む若い隊員にとっては、パンチのある味で食べ応えもあり、最高のメニューだと思います」【3曹/男性・30代】
「お店でも食べたことはありますが、隊員食堂のバッファローウイングのほうが、辛味や酸味が抑えられていて私好みです」【2曹/女性・40代】
潜水艦勤務22年のベテラン給養員
【海上自衛隊 横須賀教育隊 給養員 海曹長 小島裕二】
海自に入隊して約30年、給養員として潜水艦勤務が約22年と長かったので、横教に異動した当初は戸惑いました。食堂を利用する人数は潜水艦の10倍ほどで、器材や調理室の大きさにも驚きました。
毎年3月末から8月下旬までの隊員が多く集う期間は、およそ1回1000食、1日3000食の大量調理になります。私のモットーは「縦のつながりより横のつながりを大切に」です。調理員にとって楽しくチームワークのとれた職場であってほしいですね。全員の嗜好を満たすのは厳しいですが、試行錯誤しながら今後も頑張りたいです。
バッファローウィングのレシピを紹介
<材料(2人分)>
鶏モモ肉:1枚(250g)
塩、コショウ:各少々
小麦粉:適量
揚げ油:適量
[ソース]
バター:30g
ニンニク(みじん切り):1かけ
タマネギ(みじん切り):1/4個
ケチャップ:大さじ4
酢:大さじ2
チリペッパーソース:小さじ1〜2
[付け合わせ]
レタス(細切り)、トマト(くし形切り)、キュウリ(しま目に皮をむいてから蛇腹切りにし、ひと口サイズに切り、市販のめんつゆに1時間ほど漬けたもの):各適量
<作り方>
1:鶏肉は鶏肉は半分に切り、厚いところがあれば均一に開く。ペーパータオルで水気を拭き、塩、コショウでしっかり下味をつける。
2:1に小麦粉をまぶす。
3:170℃に熱した揚げ油に②を余分な粉をはたいて入れ、カリッとなるまで途中で返しながら5〜6分かけて揚げ、油をきる。
4:ソースを作る。フライパンにバターを溶かし、ニンニクとタマネギを炒める。タマネギがしんなりしたら残りの材料を全て入れ、弱火で2〜3分トロリとするまで煮る。
5:皿に3を盛り、4をかけ、付け合わせを盛る。
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。
バッファローウイングの名前の由来は?
鶏手羽肉を素揚げし、カイエンペッパーなどを用いた辛いソースをからめた料理。アメリカ・ニューヨーク州西部のバッファローが発祥の地とされることからそう呼ばれるように。ウイングは手羽の意。1980年代にアメリカ全土に広まり、ハンバーガー、フライドチキン、ピザと並ぶ定番のファストフード。日本でもビールのつまみ、ご飯のおかず、お弁当のおかずとして人気。
(MAMOR2021年8月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>