陸、海、空自衛隊の42基地にある163航空保安施設の飛行点検を実施している飛行点検隊。現在はU-125を2機、U-680Aを3機運用して任務を遂行している。これらの機体と退役したYS-11FCを比較してみよう。
50年以上も運用された歴史を感じるYS-11FC
![画像: 【主翼】YS-11FC151号機の主翼は飛行中に氷が付着するのを防ぐため、内部で熱した空気を循環させている](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/06/7e06231db662a0462fe97de4e997d267abacc624_xlarge.jpg)
【主翼】YS-11FC151号機の主翼は飛行中に氷が付着するのを防ぐため、内部で熱した空気を循環させている
【エンジン】
昨今の大型ジェット旅客機と比べれば小さいが、機体の近くに立てばその威容に圧倒されるYS−11FC。クラシックな趣のあるプロペラエンジンを眺めながらタラップを昇り搭乗口に着くとこれが小ぶりで、背を屈めてくぐった先のキャビンの天井も低かった。
![画像: 【コックピット】YS-11FCの操縦席だけリクライニング機能がない](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/06/812d96c5e4b29e78ab7558240d77bc5c5026350e_xlarge.jpg)
【コックピット】YS-11FCの操縦席だけリクライニング機能がない
コックピットに入るとそこには計器類がびっしり。全ての位置と用途を覚えるのは並大抵の労力ではないだろう。興味深かったのは、管制官とやりとりするためのヘッドセットにはマイクがなく(手持ちのマイクが別にある)、キャビンとの通信にはこのマイクと座席後方に取り付けられた黒電話の受話器(!)で対応しているという。
![画像: 【用器材】スイッチの数が多く、登場初期のパソコンを彷彿とさせる、YS-11FCのドイツ製点検装置](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/06/d9e3387816a372f96203daede583319f64b2bcfa_xlarge.jpg)
【用器材】スイッチの数が多く、登場初期のパソコンを彷彿とさせる、YS-11FCのドイツ製点検装置
![画像: 【キャビン】スペースが広いYS-11FC](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/06/d4d1455c6fc80a6b87211afcd96e9e2c8e3a2147_xlarge.jpg)
【キャビン】スペースが広いYS-11FC
キャビンの前部に設置された自動飛行点検装置は開発当初のコンピュータのように大きく、キャビンの横幅の約半分を占めている。点検装置はレトロな外観で、ディスプレーに表示されるのは文字情報のみだ。機内の設備も飛行点検用の器材も、何から何までベテランの風格があるYS−11FCだった。
機体や飛行点検装置がスリムになったU-125
![画像: 【コックピット】U-125の操縦かんはほかの2機が山の字形なのに対し、M字形なのが特徴だ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/07/200fb41b005fdc1f4913c2dd2266a43ad6bd0505_xlarge.jpg)
【コックピット】U-125の操縦かんはほかの2機が山の字形なのに対し、M字形なのが特徴だ
![画像: 【エンジン】YS-11FCのターボプロップエンジンと違い、ほかの2機はターボファンエンジンを搭載。U-125の主翼上部に設置された「ウイングフェンス」は飛行性能を向上させる](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/07/187986e02fb856050c666a15d22d3b9358fdcbfd_xlarge.jpg)
【エンジン】YS-11FCのターボプロップエンジンと違い、ほかの2機はターボファンエンジンを搭載。U-125の主翼上部に設置された「ウイングフェンス」は飛行性能を向上させる
![画像: 【主翼】U-125の主翼上部に設置された「ウイングフェンス」は飛行性能を向上させる](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/10/06/618ed4781162f149ebd5f184873c421a68ba3295.jpg)
【主翼】U-125の主翼上部に設置された「ウイングフェンス」は飛行性能を向上させる
イギリスのブリティッシュ・エアロスペース社製のビジネス用ジェット機を原型とするU−125。1960年代に開発されたとはいうものの、機体やエンジンが改修・換装されながら現在でも生産が続けられているというだけあって、YS−11FCのような古風なイメージではない。コックピットの計器類も少なくなっているし、もちろん通信用のヘッドセットマイクも装備されている。自動飛行点検装置もかなりコンパクトだ。
【キャビン】U-125のキャビンは隊員同士がすれ違うのも難しい
【用器材】U-125に設置されたドイツ製の点検装置
ただし、ビジネスジェットとして開発された機体なので機体自体もかなりコンパクト。さまざまな器材を搭載したキャビンはとにかく狭い。YS−11FCとU−680Aの中間に位置する、過渡期の機体という印象を受けた。
機体も点検機材も最新鋭。空間も広いU-680A
![画像2: 【エンジン】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/07/4e2f8e7dc35cd79bdcb473aa7ece157d5931682a_xlarge.jpg)
【エンジン】
![画像: 【主翼】主翼の先端をカーブさせた「ウイングレット」により主翼の乱流を制御し、燃費や飛行性能を向上させているU-680A](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/07/ef36f7005fb16bd5d77707fcaeac17070d6c82e2_xlarge.jpg)
【主翼】主翼の先端をカーブさせた「ウイングレット」により主翼の乱流を制御し、燃費や飛行性能を向上させているU-680A
美しい流線形の外観は一見してピカピカでツルツル。アメリカのテキストロン・アビエーション社製のビジネスジェット機を原型とするU−680Aは、なにより新品感が際立つ。
![画像: 【キャビン】高級感のある内装のU-680A](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/07/48709dd0d66393d9ae2798329509c4adc616a1e9_xlarge.jpg)
【キャビン】高級感のある内装のU-680A
![画像: 【用器材】見違えるほどコンパクトになったU-680Aのノルウェー製点検装置](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/07/4800b203f660994e1b513a1a96b33bd295021bed_xlarge.jpg)
【用器材】見違えるほどコンパクトになったU-680Aのノルウェー製点検装置
キャビンに一歩足を踏み入れると、そのゆったりした空間はハリウッドスターやアラブの石油王のプライベートジェットを思わせる。YS−11FCのように大きな箱型の点検装置ではなく、ノートパソコンのようなコンソールとプリンターのみという構成だ。
![画像: 【コックピット】YS-11FCからU-125、U-680Aへと機体が新しくなるにつれてアナログ計器が減少し、モニターが増えている。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783594/rc/2021/07/07/71aa23024deed5ed9ff7e321d579b00c766a0f67_xlarge.jpg)
【コックピット】YS-11FCからU-125、U-680Aへと機体が新しくなるにつれてアナログ計器が減少し、モニターが増えている。
コックピットにはアナログ計器が1つもなく、MFD(マルチ・ファンクション・ディスプレー)をはじめ、各種データがディスプレーに表示されている。操縦席は外車のシートのような高級感があり、これならパイロットの負担が軽減されるというのもうなずける。この最新鋭の機体であれば、飛行点検任務がはかどるに違いない。
(MAMOR2021年7月号)
<写真/荒井健 文/魚本拓>