•  陸上自衛隊では、日ごろの訓練の熟練度を測るため、敵、味方に分かれての模擬戦を行い、戦地における行動、判断、 作戦能力などを審判が判定する「訓練検閲」という“実地試験”がある。

     小隊レベルの少人数で行うものから、師団レベルの大規模なものまでさまざまだ。

     その中から、2025年9月に東富士演習場で、第14普通科連隊(14普連)と 第35普通科連隊(35普連)が、攻撃側と防御側に分かれて7日間戦った「第10師団訓練検閲」をピックアップ。ここでは、訓練の最初の3日間で陣地を構築する様子をリポートする。

    14普連が35普連の前線突破を狙う戦い

    富士山の麓側(左側)に陣地を構えた35普連は、10高射と10偵戦の隊員と共に、14普連(右側から)の攻撃を防御する7日間の戦いが始まった ※イラスト内に描かれている隊員や車両の数はイメージです

    「第10師団訓練検閲」は、東富士演習場内の4、5キロメートル四方ほどの区域が戦場として設定された。そのほぼ中間を流れる河川の周辺を最前線とし、防御側の35普連がその両岸に沿って陣地を構築。

     81式短距離地対空誘導弾(短SAM)や93式近距離地対空誘導弾(近SAM)を運用する第10高射特科大隊(10高射)と、16式機動戦闘車を運用する第10偵察戦闘大隊(10偵戦)と共に力を合わせて死守する。

     対する14普連は、南東の方角から敵陣地への侵入・攻撃を開始。35普連の前線を突破し、同連隊が防御する地域の奪取を狙う。

    攻撃側:第14普通科連隊

    画像: 石川県金沢市に所在する、陸上自衛隊金沢駐屯地に駐屯する第10師団隷下の普通科連隊。今回の訓練検閲には約600人が参加

    石川県金沢市に所在する、陸上自衛隊金沢駐屯地に駐屯する第10師団隷下の普通科連隊。今回の訓練検閲には約600人が参加

    戦闘力:600人
    16式機動戦闘車3両
    軽装甲機動車11両
    戦闘機(想定)
    ヘリコプター(想定)

    防御側:第35普通科連隊

    画像: (左上)愛知県名古屋市に所在する、守山駐屯地に駐屯する第10師団隷下の普通科連隊。訓練検閲には約600人が参加 (右上)豊川駐屯地(愛知県)に駐屯する第10師団隷下の機甲科部隊。訓練検閲には約30人が参加 (左下)豊川駐屯地(愛知県)に駐屯する第10師団隷下の高射特科部隊。35普連の空を守る精鋭たち (右下)豊川駐屯地(愛知県)に駐屯する第10師団隷下の高射特科 。訓練検閲には約100人が参加

    (左上)愛知県名古屋市に所在する、守山駐屯地に駐屯する第10師団隷下の普通科連隊。訓練検閲には約600人が参加 (右上)豊川駐屯地(愛知県)に駐屯する第10師団隷下の機甲科部隊。訓練検閲には約30人が参加 (左下)豊川駐屯地(愛知県)に駐屯する第10師団隷下の高射特科部隊。35普連の空を守る精鋭たち (右下)豊川駐屯地(愛知県)に駐屯する第10師団隷下の高射特科 。訓練検閲には約100人が参加

    戦闘力:700人
    16式機動戦闘車3両
    軽装甲機動車22両
    81式短距離地対空誘導弾2両
    93式近距離地対空誘導弾3両

    DAY 1〜3【陣地構築】3日かけて穴を掘りつづけ、擬装をして陣地を構築した

    35普連が陣地を構築するなか、14普連の偵察部隊が35普連の陣地を密かに偵察。攻撃できそうな侵入経路を模索している(図中の番号は写真番号)

     訓練検閲初日。35普連の各部隊が隊長の指示に従い、分隊ごとに陣地の構築を始めた。

    画像: ①重機を使用して指揮所を構築:10高射の指揮所を重機を使用して構築。油圧ショベルで陣地に土のうを積み上げて補強する

    ①重機を使用して指揮所を構築:10高射の指揮所を重機を使用して構築。油圧ショベルで陣地に土のうを積み上げて補強する

     陣地に適するとされるのは、侵入する敵の姿を発見しやすく、また弾薬や食糧などの補給路ともなる道路に近くて、かつ目立ちにくい場所だ。

    画像: ②完成した指揮所を大隊長が点検:擬装のための作業も終わり、完成した10高射の指揮所の点検に訪れた大隊長

    ②完成した指揮所を大隊長が点検:擬装のための作業も終わり、完成した10高射の指揮所の点検に訪れた大隊長

     陣地の構築には、ひたすら穴を掘る作業が求められる。敵の攻撃から身を守るのと同時に、敵に見つからずに攻撃を仕掛けるためのえん体を構築するためだ。

    画像: ③交通壕を屈折させダメージを低減:大隊の指揮所の入り口 となる交通壕 (陣地と陣地をつなぐ壕のことで隊員が敵からの攻撃を避けながら通行できる)。通路が直線でなく屈折させているのは、敵から爆撃された場合、爆風を遮断し、ダメージを低減させるためだ

    ③交通壕を屈折させダメージを低減:大隊の指揮所の入り口 となる交通壕 (陣地と陣地をつなぐ壕のことで隊員が敵からの攻撃を避けながら通行できる)。通路が直線でなく屈折させているのは、敵から爆撃された場合、爆風を遮断し、ダメージを低減させるためだ

     8~10人で編成される分隊の隊員たちが交代で仮眠を取りながら、昼夜を問わず3日間で陣地を構築。訓練検閲の2日目からは雨が降り出し、泥に塗れながらの作業となった。

    陣地を発見されないようにするカムフラージュが重要

    画像: ④指揮所などと通信する有線電話を設置:指揮所などとの通信を可能にする有線電話などの通信設備を、陣地に構築する隊員

    ④指揮所などと通信する有線電話を設置:指揮所などとの通信を可能にする有線電話などの通信設備を、陣地に構築する隊員

     また、陣地には無線や有線の通信設備を設置。さらに陣地を敵から発見されないように擬装する。周辺の草を引き抜き陣地に被せ、周囲の環境に溶け込むようにカムフラージュするのだ。

    画像: ⑤陣地構築の間も敵の攻撃に備える:防御側の隊員が3日間寝ずに陣地を構築する一方、敵の襲来に備えて見張りを行う隊員

    ⑤陣地構築の間も敵の攻撃に備える:防御側の隊員が3日間寝ずに陣地を構築する一方、敵の襲来に備えて見張りを行う隊員

     10高射と10偵戦も防御準備を実施。えん体の構築に加え、近SAMと短SAM、16式機動戦闘車を偽装網で覆い、草木を貼り付けるなどしてカムフラージュする。

    画像: ⑥有刺鉄線で対人障害を設置:陣地近くの開けた場所に設置された対人障害。有刺鉄線を何重にも張りめぐらして敵の侵入を防ぐ

    ⑥有刺鉄線で対人障害を設置:陣地近くの開けた場所に設置された対人障害。有刺鉄線を何重にも張りめぐらして敵の侵入を防ぐ

     作業はそれだけでは終わらない。「対人障害」を設置する必要があるのだ。陣地へと続くあらゆる通路に有刺鉄線を張りめぐらして、敵の侵入を阻む。この作業は、敵が侵入する可能性のある全ての“穴”を塞ぐため、陣地構築後も継続して行われる。

     一方、攻撃側の14普連もすでに動き始めていた。敵の陣地の位置などの情報を探るため、偵察部隊が行動を開始したのだ。

    (MAMOR2026年2月号)

    <文/魚本拓 写真/村上淳 写真提供/防衛省>

    自衛隊、われらの7日間戦闘

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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