•  自衛隊の航空機が事故を起こしたときなど、素早く事故現場に駆け付けて搭乗員を救い出す任務を負っている航空自衛隊航空救難団。通称PJ(Pararescue Jumper)と呼ばれる救難団の救難員たちを育成する役目を担うのが、救難教育隊だ。

     そこで、テレビドラマの舞台にもなった救難教育隊の概要を説明しよう。

    過酷な現場に駆け付ける人命救助最後のとりで

    画像: 救難教育隊は、教育隊長の下、准曹士先任が隊長をサポート。安全班、総括班、教育班、整備小隊、救難研究班に分かれている。教育班は救難員課程、救難操縦課程、機上整備員課程の教育を行う

    救難教育隊は、教育隊長の下、准曹士先任が隊長をサポート。安全班、総括班、教育班、整備小隊、救難研究班に分かれている。教育班は救難員課程、救難操縦課程、機上整備員課程の教育を行う

     航空自衛隊航空救難団の救難員は、厳しい訓練を受けて能力を高めているだけでなく、中には、適切な救命措置を行うため准看護師や救急救命士などの資格を取得している隊員もいる。

     一般人が被災した事案でも、警察や消防では対処できない状況では、都道府県知事などの要請を受けて災害派遣に出動し、救助作業に当たることがある。

     災害派遣は1958年の創隊から2025年5月まで、累計2709件の出動実績があり、7466人を救助してきた。救難団は、その高い専門性と能力から「人命救助の最後のとりで」と呼ばれている。

    画像: 救難教育隊が所在する航空自衛隊小牧基地。1958年の創設以来、航空救難団で最も長い歴史を持つ部隊として救難に携わる隊員を育成する

    救難教育隊が所在する航空自衛隊小牧基地。1958年の創設以来、航空救難団で最も長い歴史を持つ部隊として救難に携わる隊員を育成する

     航空救難団は1958年に空自浜松基地(静岡県)で編成された臨時救難航空隊に端を発する。その後、千歳(北海道)、小牧(愛知県)、新田原(宮崎県)など各基地に救難分遣隊が新設され、分遣隊から救難隊、救難団へと組織改編していった。

     現在は航空総隊隷下として入間基地(埼玉県)に司令部があり、救難に関わる隊員を育成する救難教育隊は小牧基地にある。

    ファミリーといわれるほど抜群のチームワークを作る

    教育隊長の德田2佐。「私も教官経験者です。ここでは実部隊勤務のための土台をしっかり作る教育を実施します」

     出動要請を受けると、救難隊はジェット機のU−125AとヘリコプターのUH−60Jで現場へと飛ぶ。速度の出るU−125Aが先行し情報収集や要救助者を捜索。救難員を乗せたUH−60Jが実際の救助に当たる。

     迅速かつ的確な救助を行うため、救難に関わる隊員には、息の合った行動が求められる。

     教育部隊である救難教育隊の教育隊長・德田2等空佐は、「救助活動を担う救難員、航空機の操縦士、機内で操縦士や救難員をサポートする機上整備員(FE)の育成をしています。

     指導は厳しいですが、教育を通して、他部隊から『救難ファミリー』といわれるほど強い団結力の醸成や、冷静な判断力などを技術と併せ教えます」と話す。

    画像: 救難現場へと飛ぶU-125AとUH-60J。先行するU-125Aが集めた現地の天候や地形などの情報を頼りに、UH-60Jが救助を行う。その機内では、集まった情報を頼りに、救難員が現場に持ち込む器材の準備などを行い救助活動に備える

    救難現場へと飛ぶU-125AとUH-60J。先行するU-125Aが集めた現地の天候や地形などの情報を頼りに、UH-60Jが救助を行う。その機内では、集まった情報を頼りに、救難員が現場に持ち込む器材の準備などを行い救助活動に備える

    【UH-60J】
    航続距離が長く広範囲の捜索活動が可能な救難ヘリコプター <SPEC>全幅:16.36m 全長:19.76m(全幅・全長はローター部を含む) 全高:5.13m 最大速度:約265km/h 航続距離:約1300km 乗員:5人

    【U-125A】
    捜索レーダーと赤外線暗視装置を搭載した救難機。捜索のため機体側面には大型の窓が付いている <SPEC>全幅:15.66m 全長:15.60m 全高:5.36m 航続距離:約4000km 最大速度:約820km/h 乗員:4人

    (MAMOR2025年9月号)

    <文/古里学 写真/村上淳 写真提供/防衛省>

    これが本当のPJ教育隊だ!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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