なぜ防駐官になりたいと思ったのか、派遣が決まってからは何をしていたのか。
防駐官になるまでのプロセスを、防駐官として赴任が決まり、準備に余念がない防駐官と、かつて防駐官赴任を経験した自衛官に語ってもらった(2025年1、2月取材)。
このようにして、防駐官はつくられるのだ。
赴任先:トルコ共和国 / 齊藤2等海佐の場合

トルコ語の授業を受ける齊藤2佐
●赴任期間
2025年3月~28年3月予定
●赴任前の所属
護衛艦『きりさめ』艦長
●防駐官を希望したのはいつ?
赴任の約18年前
●同行者
妻、長女(7歳)、長男(3歳)
※子どもの年齢は赴任時(以下同)
親日国なので少しでもトルコ語を話したい
防衛大学校時代に、将来は国際的な仕事をしたいと思い、幹部候補生学校時代に防駐官を目指すことを決めたという齊藤2等海佐。それから18年後の2025年春に、念願かなってトルコの防駐官に赴任することに。
自衛官として海賊対処の有志連合部隊があるバーレーンで勤務したり、国際関係学を学ぶためアメリカの大学院に留学した経験から英語は話せた上、趣味でフランス語も勉強していたので、新たな準備としては語学学校でトルコ語を習ったそう。
トルコ語の習得のために使用した教材
「1890年にトルコの軍艦エルトゥールル号が和歌山県沖で遭難したとき、地元住民が救出にあたったり、イラン・イラク戦争のときにトルコの救援機で在イラン邦人が脱出したりと、両国は相互に支え合ってきた歴史があります。私もその架け橋になれるよう努めていきたいですね」と、齊藤2佐は語る。
赴任先:マレーシア / 五十嵐2等海佐の場合
レセプションにて、他国の駐在武官と写真に収まる五十嵐2佐(中央)
●赴任期間
2019年3月~21年7月
●赴任前の所属
統合幕僚監部指揮通信システム部
●防駐官を希望したのはいつ?
赴任の約10年前
●同行者
夫、長女(中学生)
英語力を更新し、宗教的なタブーも確認
女性初の防駐官として2019年にマレーシアに派遣された五十嵐2等海佐は、「入隊前から身に付けていた語学力を生かした業務に就きたいと希望し、アメリカ海軍や他国との防衛交流に関わる業務を10年以上担当していましたが、女性が防駐官になった前例がなかったので、まさか自分がなれるとは思ってもいませんでした」と話す。
準備期間には、最新のニュースなどから英語力のアップデートに努め、またマレー語を勉強しつつ現地の文化や歴史などもリサーチ。イスラム教国なので宗教的なタブーなども確認したそう。
「シーレーン(注)の要衝として国際的にも存在感を増しているマレーシアに赴任したことで、コミュニケーションの重要性を再認識しました」と五十嵐2佐は振り返る。
(注)海上交通路のこと。国内で消費する燃料、食料の半数以上を輸入に頼っている日本の生命線といわれる
赴任先:イタリア共和国 / 小山1等空佐の場合
イタリア語のオンライン授業を受ける小山1佐
●赴任期間
2025年3月~28年3月予定
●赴任前の所属
航空幕僚監部運用支援・情報部
●防駐官を希望したのはいつ?
赴任の約3年前
●同行者
なし(子どもの教育のため)
イタリア語で日記をつけ、語学習得に工夫
航空自衛隊の次期戦闘機の共同開発国として、国防面でも日本とつながりが深いイタリアの防駐官になる小山1等空佐。準備期間中の外務省での研修では、外交官として必要な知識を学び、語学力の向上に努めた。

使用したイタリア語やイタリア史の教材
「イタリア語は英語と比べ、文法や時制が複雑なので、理解するのに苦労しました。そのため、授業以外にもイタリア語で日記をつけたり、イタリア料理の本を読むなどして、少しでも身に付くよう努力しました」
また、在日イタリア大使館の人たちと交流することでも、イタリアに関する知識を蓄えていったという。
「自衛隊と共同訓練を行う機会も増え、イタリアがインド太平洋地域に関心を深めていると感じています。両国の安全保障面での関係強化に力を尽くしていきたいですね」
(MAMOR2025年6月号)
<文/古里学 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです




