•  なぜ防駐官になりたいと思ったのか、派遣が決まってからどんな準備をしたのか。エストニア初の防衛駐在官であり、かつ、陸上自衛隊初の女性防駐官となる伊代野2等陸佐に話を聞いた(2025年1、2月取材)。

    赴任先:エストニア共和国 / 伊代野2等陸佐の場合

    ●赴任期間
    2025年3月~28年3月予定

    ●赴任前の所属
    防衛装備庁国際装備課

    ●防駐官を希望したのはいつ?
    赴任の約2年前

    ●同行者
    夫、長女(17歳)、長男(9歳)、次女(5歳)
    ※子どもの年齢は赴任時

    不安より楽しみが大きい。陸自初の女性防駐官として初派遣国に赴任

    画像: エストニア語の先生とマンツーマンレッスン。絵がかわいらしい教材で楽しみながら学習したという

    エストニア語の先生とマンツーマンレッスン。絵がかわいらしい教材で楽しみながら学習したという

     小国でありながらバルト海の要衝の地であり、サイバー先進国としても近年注目を浴びるバルト三国の1つ、エストニア。伊代野2等陸佐は、その初めての防駐官であり、また陸上自衛隊初の女性防駐官にもなる。

    陸上幕僚監部防衛装備庁、陸自サイバー部隊などでの勤務を通じて海外と交流を持つ機会があり、以前から国際的な活動を通じて日本の平和に貢献したいと思っていました。3人の子育てが一段落ついた2年前に防駐官職を希望したところ、エストニアへの赴任が決まりました」

     伊代野2佐の夫も陸上自衛官(注)で、子どもは高校2年生の長女と小学3年生の長男、幼稚園に通う次女の3人。不安はあるけれど海外生活を体験できる楽しみのほうが大きいと、家族みんなで行くことを決めたという。

    (注)自衛隊では公務員の「配偶者同行休業制度」が適用され、配偶者の海外勤務に同行するときは、最長3年間の休業を取得できる

    難解なエストニア語を楽しみながら勉強

    画像: 伊代野2佐がエストニア語の勉強に使用した教材と、エストニアの文化や歴史を学ぶために読んだ書籍など

    伊代野2佐がエストニア語の勉強に使用した教材と、エストニアの文化や歴史を学ぶために読んだ書籍など

     内示が出てから赴任までの準備期間は8カ月。

     エストニア語は1つの名詞が前置詞とくっついて14種に変換されるなど、世界的にも難しい言語の1つといわれている。そのため伊代野2佐は、多くの研修と平行して、エストニア語は先生について一から学習。特に日常会話に欠かせない食べ物の名前などをしっかりと覚えたそう。

     現地では、エストニア語を通じて自身や日本を身近に感じてもらい、円滑なコミュニケーションができることを楽しみにしているという。

    画像: お茶をたてる伊代野2佐。日本の伝統文化を学ぶのと同時に、今、外国人観光客から人気の日本の観光スポットを把握することにも努めたという

    お茶をたてる伊代野2佐。日本の伝統文化を学ぶのと同時に、今、外国人観光客から人気の日本の観光スポットを把握することにも努めたという

    「赴任国での文化交流の場で日本文化をお披露目するため、夫や長女も私と一緒に茶道や着付けを習ったり、下の子どもたちもけん玉や折り紙の練習に励むなど、家族全員で同じ目的に進んでいたので、私も頑張ることができました」

    画像: 夫(左)は、他国武官を招いてパーティーをする日に備え、大阪名物のたこ焼きを焼く練習もしているそう。右は一緒に着付けも習った長女

    夫(左)は、他国武官を招いてパーティーをする日に備え、大阪名物のたこ焼きを焼く練習もしているそう。右は一緒に着付けも習った長女

     エストニアに住む日本人は約200人。初の防駐官の配置ということもあり、日本とエストニアの架け橋になりたいという伊代野2佐。

    「長年剣道をやっているので、エストニアにも防具一式を持っていきます。現地で剣道の普及活動を行って、剣士を育ててみたいですね」と希望を語る。

    (MAMOR2025年6月号)

    <文/古里学 写真/星 亘(プロフィール、教材) 写真提供/防衛省>

    平和を結ぶ“大使”、防衛駐在官

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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