世界で唯一の電子戦機であり、“珍機”ともいわれるEC-1を運用し、訓練を重ねる電子戦隊。その部隊には、どのような任務が与えられ、日々、どのような活動が行われているのだろうか。
電子戦隊の指揮をとる隊長に話を聞くとともに、同隊を編成する各部署の役割について探った。これまでミステリアスな存在だったこの部隊の実態をスクープする!
電子戦隊の各部署が連携し高いレベルで任務を達成
F‐15のパイロットだった時から電子戦に関わってきたという松﨑2佐。その経験が今でも役立っている
「電子戦隊には、大きく分けて3つの任務があります。1つ目は、EC−1による『電子攻撃』や、ほかの部隊がそれに対処する訓練で培う『電子防護』です。
2つ目は、戦闘機をはじめ、いろいろな航空機が持っている電子戦器材の作動条件などを設定する『電子戦支援』です。
3つ目は、電子戦の専門家を育てる『電子戦教育』です。これら電子戦について広く、航空自衛隊が持てる能力を最大限に発揮し、さらに向上させるために存在する唯一無二の部隊が電子戦隊です」
そう語る電子戦隊の隊長・松﨑2等空佐。電子戦隊の各役割について説明してくれた。

電子戦隊の部隊マークは、古来より世界各地で「知恵の伝達者」といわれているカラスがモチーフとなっている
「電子戦隊は、EC−1を操縦する『飛行』と、電波妨害装置を操作する『電子操作』と、同機に搭載された電波妨害装置などの電子機器を整備し、維持管理する『整備』、電子戦に関わる各種データの作成などを行う『データ管理』、電子戦に関する研究を行いそれをリポートにまとめる『研究』で編成されます」

迷彩柄の輸送機C‐1(写真手前)と電子戦の訓練を終えて入間基地に帰還するEC‐1。珍しく改良元の機体と改良機が並んだ
電子戦隊のもう一つの任務
電子戦隊に与えられたもう1つの重要な役割は、電子戦に関わる人材育成だと、松㟢2佐は言う。

電子作戦群電子戦隊の隊舎。前身の電子戦支援隊と電子情報測定隊から、2014年に航空戦術教導団隷下に改編された
「電子戦は各国の技術力の戦いでもあり、電子攻撃と電子防護の技術を更新し合ういたちごっこの様相を呈しています。そのため、電子戦に関して専門的な知識を持った人材を継続的に育成することが必要になります。本隊が担う『電子戦教育』で電子戦機の統制幹部と操作員を養成することで、自衛隊の新領域の1つである電磁波領域を支援することは、見えない敵から国を守る重要な任務だと考えています」
そのため、松㟢2佐は、各部署の連携も重視している。
「業務を皆が経験する研修などを実施して、電子戦隊の各機能を横断的に発揮し、常に高いレベルで任務を達成するよう心掛けています」
<文/魚本拓 写真/荒井健>
(MAMOR2025年4月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです