•  自衛隊はわが国固有の領域防衛について、宇宙からも24時間、365日態勢で対処。加えて、宇宙ごみや人工衛星の情報など宇宙から収集した膨大なデータの解析や監視なども行っている。

    自衛隊がどんな装備品でどのように防衛をしているのか、基礎と最新の態勢、未来への取り組みを紹介しよう。

    宇宙からの警戒監視を強化する領域防衛

    画像: 2020年に前身となる部隊が発足し、22年に新編された航空自衛隊宇宙作戦群。宇宙空間監視や対処など幅広い任務に対応するため、上級部隊として「宇宙作戦団(仮称)」の新編も進められている。

    2020年に前身となる部隊が発足し、22年に新編された航空自衛隊宇宙作戦群。宇宙空間監視や対処など幅広い任務に対応するため、上級部隊として「宇宙作戦団(仮称)」の新編も進められている。

     ロシアによるウクライナ侵略では実弾による戦闘のほか、大規模なサイバー攻撃なども繰り広げられ、情報・通信ネットワークを駆使したハイブリッド戦争が展開されている。防衛省・自衛隊ではサイバー攻撃の対処策として、専門知識を持つ隊員を4000人に、関連部隊の要員も含め2万人体制を目指す。高度な人材も育成中だ。

    より精密なデータを取得できる人工衛星「Xバンド」とは?

    画像: 軍事通信やレーダーなどで使用される周波数帯域Xバンドを用い、防衛省は3機の防衛通信衛星を展開。膨大なデータの高速伝送が可能になり、通信情報の秘匿性や通信妨害への対応力もアップした 図はイメージ/防衛装備庁ウェブサイトより

    軍事通信やレーダーなどで使用される周波数帯域Xバンドを用い、防衛省は3機の防衛通信衛星を展開。膨大なデータの高速伝送が可能になり、通信情報の秘匿性や通信妨害への対応力もアップした 図はイメージ/防衛装備庁ウェブサイトより

     宇宙空間を活用した領域防衛について、自衛隊はXバンドと呼ばれる秘匿性が高く精密な測定ができる周波数帯を利用した通信衛星「きらめき」を3機体制で運用。陸・海・空各自衛隊間でこれまで以上に正確な情報共有などを目指している。

     また弾道ミサイル防衛策として、高い高度で領空に入ったミサイルを海上からイージス艦が迎撃。撃ち落とせず落下した際は全国17カ所、28の高射部隊に配備されている地対空誘導弾PAC−3で迎撃する。

    小型衛星を“星座”のように配置する「衛星コンステレーション」

    画像: 同一の低軌道上に多数の人工衛星を配置する衛星コンステレーション。自衛隊では高精度の画像を数多く撮影することにより、地上の目標や極超音速ミサイルなどの動きの把握などを目指している (図はイメージ/防衛装備庁ウェブサイトより)

    同一の低軌道上に多数の人工衛星を配置する衛星コンステレーション。自衛隊では高精度の画像を数多く撮影することにより、地上の目標や極超音速ミサイルなどの動きの把握などを目指している 
    (図はイメージ/防衛装備庁ウェブサイトより)

     さらに、音速の5倍以上の速さで飛ぶ極超音速ミサイルなどの探知・追尾は、同一軌道上に約50機の小型衛星を配置した、星座を意味する“コンステレーション”の積極的な活用も目指す。例えばGPSなどの測位衛星を同一の軌道上に並べ、各衛星からの情報を集約して運用。これによりミサイル発射装置などの動向を逐次把握することが目的だ。

     こうした宇宙領域を活用するには人工衛星などの宇宙物体の軌道や、デブリと呼ばれる宇宙ごみ(地球の衛星軌道上を周回する不要の人工物体で、衝突による人工衛星破壊のリスクがある)などの位置情報など宇宙環境の把握が欠かせない。

     そのための専門部隊「宇宙作戦群」が2022年3月空自府中基地(東京都)に新編された。部隊は宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと協力し、宇宙ごみや人工衛星の情報など宇宙から収集した膨大なデータの解析や監視などを行っている。

    <文/古里学 写真提供/防衛省(特記を除く)>

    (MAMOR2025年5月号)

    ―自衛隊が守る日本の領空 領海 領土―

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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