わが国固有の領域防衛について、陸・海・空各自衛隊は日本の全周を囲むように部隊を配置し、24時間、365日態勢で対処している。
3自衛隊がどんな装備品でどのように防衛をしているのか、基礎と最新の態勢、未来への取り組みについて一部を紹介しよう。
わが国の領域を防衛する装備たち
【F-15】
F-15は千歳基地(北海道)、小松基地(石川県)、新田原基地(宮崎県)、那覇基地(沖縄県)に配備。基本設計が優秀で改修を加えながら40年以上運用されている。

【レーダーサイト】
空からの外敵の侵入を防ぐため、空自は目標の方位、距離、高度を同時測定できる3次元レーダーなどを備えたレーダーサイトを運用。日本を全周する形で28カ所設置。

【哨戒ヘリコプターSH-60J/K】
海自に配備されている哨戒ヘリコプターSH-60J/K。キャビンの拡大やエンジンが改良された能力向上型であるSH-60Lの配備も進められている。

【護衛艦『まや』】
2020年に就役した護衛艦『まや』。多機能で高精度なレーダーや、防空能力を持つ「イージス・システム」を搭載している。

【F-2】
アメリカのF-16を基に日米共同で開発されたF-2。百里基地(茨城県)、築城基地(福岡県)に配備されている。

【E-767】
高高度の領空警戒監視を担う早期警戒管制機E-767。航続時間が長く、長時間の警戒監視が可能。

【E-2C】
円盤型のレーダーを搭載したE-2C。地上や艦載のレーダーでは水平線の陰になり探知不能となる、低空を飛行する目標などを監視。

【F-35A】
高いステルス性能を持っている最新鋭の戦闘機F-35A。2018年より三沢基地(青森県)に配備されている。

【P-1】
2013年から運用開始された海自のP-1。P-3Cより巡航速度や航続距離が向上し、操縦性、レーダーの性能も優れている。現在34機が鹿屋、厚木、下総の各航空基地に配備されている。

(写真/GA-ASIウェブサイトより)
【無人機MQ-9B】
海自では洋上における情報収集・警戒監視を強化するため、2024年11月15日に無人機MQ-9B(シーガーディアン)導入を決定。

【護衛艦『もがみ』】
護衛艦は55隻体制で日本の領海警備などを行なう。2027年度からは写真の『もがみ』型に続く新型護衛艦の就役も計画中だ。
最新の防衛体制を紹介!


北海道・本州に配備された部隊と装備

本州・四国に配備された部隊と装備

九州・南西諸島に配備された部隊と装備

九州・南西諸島に配備された部隊と装備
ミサイル艇が不審船対処にあたる

艦対艦ミサイルを主兵装とするミサイル艇。赤外線暗視装置や防弾板の装着など不審船対処への対策も施されている。
潜水艦が領海を監視

(イラストはイメージ)
潜水艦は海中からわが国の領海を警戒・監視している。2025年2月28日現在、22隻体制で任務にあたっている。
各部隊で連携し、離島部の防衛を強化

陸自では宮古島、石垣島、奄美大島に警備隊を新編。人員を増やし、離島部の警備強化を図っている。
PAC-3で弾道ミサイルを迎撃

地対空誘導弾PAC-3
空気抵抗の少ない成層圏を飛行する弾道ミサイルを地上付近で迎撃する地対空誘導弾PAC-3。レーダーや発射機などが改修され、防護範囲が広い「PAC-3 MSE」も配備が進められている。
共同部隊「自衛隊海上輸送群」を発足

現在、陸自は海自輸送艦や空自輸送機などを利用し南西諸島に部隊の展開や物資輸送を行っているが、島しょ防衛の体制強化のため、より迅速な展開を目指して2024年度末に共同部隊「自衛隊海上輸送群」が発足予定。部隊には陸上自衛官が主体で運用する輸送艦『にほんばれ』 などを配備予定だ。
海上保安庁と共同訓練を実施

海自では領海や周辺海域の警戒監視について海上保安庁との連携を図っている。写真は2022年6月実施の海保の巡視船「みやこ」(右)と護衛艦『あまぎり』の共同訓練。
「電子作戦隊」を新編

陸自は2022年に電子作戦隊を新編。ネットワーク電子戦システム(NEWS)を用い、ドローンや対象目標の通信、レーダーの阻害、軍用電波を発する外国の部隊・装備の位置情報の収集などを行う。久里浜駐屯地(神奈川県)所在の陸上自衛隊通信学校も24年に「システム通信・サイバー学校」へと改編している。
領土奪還を行う「水陸機動団」を新編

2018年に陸自に新編された水陸機動団。主たる任務は、水陸両用車AAV7などを用いて、万が一、領土の島が敵の手に落ちた際に奪還する。これまでの陸自にはない戦い方のため、アメリカ海兵隊と共同訓練を重ね、部隊を精強化させている。
警戒監視の網を張り巡らし、領域を防衛する

沿岸部では、沿岸監視隊が付近を航行する船舶などの警戒監視、情報収集を実施。日本最西端に位置する与那国島にも部隊は所在し、国境を守る。
24時間365日、情報収集・警戒監視するのが自衛隊の領域防衛に対する姿勢だ。
航空自衛隊は全国28カ所に設置された地上レーダーサイトに加え早期警戒機 、早期警戒管制機早期警戒管制機により空からの侵入に備える。それらの監視網でわが国の領空を侵犯する恐れのある航空機を探知した場合、対領空侵犯措置を行う。
具体的には戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、領空からの退去警告や最寄りの飛行場へ強制着陸させるなどで対処。現在7つの基地に所在する戦闘機部隊は4機の戦闘機とパイロットが常時待機している。
一方海からの侵入に対しては護衛艦が領海を警備し、海上自衛隊のP−1とP−3C、SH−60、潜水艦などが監視。護衛艦は省人化などが図られており、最新の『もがみ』型護衛艦はレーダーに映りにくい高いステルス性能を持ち、機雷処分などの掃海も担う艦艇になっている。
また主要な海峡には陸上自衛隊の沿岸監視隊が日本の沿岸を航行する船舶の情報収集や監視をしている。沿岸部の治安維持は海上保安庁が第一義的に担うが、海保で対応しきれない場合、治安出動の発令で海自の艦艇や航空機が出動。そのため海保と海自は共同訓練を実施し、連携を高めている。
さらに空自は2022年から無人偵察機RQ-4Bの運用を開始。海自も無人機MQ−9B(注)の導入を決定し情報収集・警戒監視能力を強化。また陸自は、南西諸島の防衛強化のため各島に沿岸監視隊や警備隊を新編。万が一、島しょ部が占拠された際に奪還を担う水陸機動団も3個部隊編成となり、南西諸島の領域防衛を強化中だ。
<文/古里学 写真提供/防衛省(特記を除く)>
(MAMOR2025年5月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

