•  どんなに厳しい状況でも生き延びて任務を果たす、陸上自衛隊レンジャー隊員。そんな彼らが身に着けている究極のサバイバル術を一部公開。

     今回は、「飲み水」「火起こし」「鶏の調理」について紹介する。。

    飲み水をつくる

    画像: 木の枝にポリ袋をかぶせて結び、葉から発散する水滴を集める

    木の枝にポリ袋をかぶせて結び、葉から発散する水滴を集める

     人間が生きるために、食料同様に重要になるのが「水」だ。川や海などの水がない場所で、レンジャー隊員が飲み水をつくり出す2つの方法を紹介しよう。まずは、ポリ袋などを使い、植物が発散する水蒸気を集める方法。葉の多くついた木の枝などをポリ袋でくるみ、内側に結露する水を集める。

    画像: 地面に穴を掘って水を集める方法を実践。どちらもポリ袋が重要なアイテムとなる

    地面に穴を掘って水を集める方法を実践。どちらもポリ袋が重要なアイテムとなる

     もう1つ、木がない場所や砂漠でも使えるのが、地面から水を集める方法だ。穴を掘って中央にコップなど水を受けるものを置き、穴をふさぐようにポリ袋をかぶせ、水蒸気が逃げないようにきちんとポリ袋の周囲を土で押さえてから、中央に小さい重石を置く。地面から蒸発する水蒸気をポリ袋が受け止め、滴となって容器に入るという仕組み。

     季節などによっても異なるが、どちらの方法も24時間で30ミリリットル前後、採水できる。

    火打ち石と鋼を使って火を起こす

     マッチやライターがなくても火を起こせる方法はいくつかあるが、レンジャー隊員が習得する方法のうちの2つを紹介しよう。

     1つ目は「火打ち石と鋼を使った火起こし」で、まずは火種を作るための「火口」を作る。よく乾いた植物の繊維や鳥の羽毛、木くずなどを集める。

    画像: 火打ち石と鋼を打ち合わせ、火花を火口に当てて火を起こす

    火打ち石と鋼を打ち合わせ、火花を火口に当てて火を起こす

     これだけでもよいが、これに火薬を混ぜたりすれば、よりたやすく燃える。火打ち石(硬い岩石)と、ナイフなどの鋼を鋭くかき落とすように打ち合わせて火花を出し、火口に当てる。いぶり始めたら、静かに吹くかあおぐかして燃え上がらせ、たきつけ(紙や細く裂いた木、乾いた杉葉など)に火を付ける。

    画像: 双眼鏡の対物レンズを外し、火口に太陽光を集めて火を起こす

    双眼鏡の対物レンズを外し、火口に太陽光を集めて火を起こす

     2つ目は「凸レンズを使った火起こし」で、火口の作り方は前述同様。レンジャー隊員は、携帯している双眼鏡の対物レンズを取り外し、それを使って太陽光を火口に向かって集め、点火する。

    鶏をさばいて調理する

    画像: さばいた鶏は、傷まないうちにすぐに調理して食べる

    さばいた鶏は、傷まないうちにすぐに調理して食べる

     隠密行動を主とするレンジャー隊員は、作戦行動中に食料などの補給を受けることは困難な場合が多い。そこで、食べ物を自足するが、ここでは捕まえた鶏をさばく方法を紹介しよう。

    首を落とし、血抜きした鶏を運ぶ幹部レンジャー学生

     まず、鶏の頭を落として血抜きをする。通常は鶏を逆さまにつるしたら、頸動脈2カ所に切り目を入れて締めるが、レンジャー方式の場合は、つるした後、一気にナイフで首を落として血抜きをし締める。このときナイフを持たないもう1人はしっかりと鶏を押さえ、バタつかないようにする。血抜きができたら解体にかかる。

    画像: ナイフと手を使って、順序どおりに鶏をさばいていく。内臓を傷つけないようにさばくには、慎重さも求められる

    ナイフと手を使って、順序どおりに鶏をさばいていく。内臓を傷つけないようにさばくには、慎重さも求められる

     通常は鶏皮も食用として使うため、湯に浸けて羽を抜きやすくするが、作戦行動中は水の使用量に制限がかかるので、そのまま首元に切り込みを入れて手で破くように皮を剥ぐ。剥ぎにくいところはナイフで切り込みを入れる。この際、肉や内臓を傷つけないように丁寧に行うことが重要だ。手羽先と鶏足は食べないので折って捨てる。

     次に内臓を取り除く。股関節部分を広げ、肋骨の下部分に切れ込みを入れて肋骨を丸ごと頭の方向に起こすようにし、白い食道に切り込みを入れて肋骨の内側から内臓を包む薄膜ごと剥がす。

     刃物は使わず手で丁寧に剥がさないと、内臓を包む膜が破れるので注意する。剥いだ皮と膜に包まれた内臓が尻の部分にまとまったら、ナイフで内臓を傷つけないように切り込みを入れて、皮と内臓を身から外す。あとは、モモを股関節から外して、手羽を取り、ささみ部分は筋を切った上で外すと解体終了。

    画像: 解体作業終了後には、全員で手を合わせ、命をくれた鶏に感謝の祈りを捧げる

    解体作業終了後には、全員で手を合わせ、命をくれた鶏に感謝の祈りを捧げる

     膜に包まれた内臓からは心臓(ハツ)、レバー、砂肝が取れる。レンジャー隊員が隠密行動中に、山中でさばいた鶏を食する場合は、地面にかまどを作って火を起こし、煙やにおいが立たないように処置を講じながら、直火焼きにして食べる。

    レンジャー隊員によるさばいた鶏の料理例

    画像: 豪快に骨付き肉をそのまま投入したチキンカレーと、鶏の素揚げ

    豪快に骨付き肉をそのまま投入したチキンカレーと、鶏の素揚げ

    (MAMOR2025年4月号)

    <文/臼井総理 写真/村上淳 写真提供/防衛省 イラスト/内山弘隆>

    レンジャー隊員の究極サバイバル術

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

    This article is a sponsored article by
    ''.