自衛隊の新型航空機をはじめ、航空機に搭載されるミサイルなどの兵装、アビオニクスと総称される航空機に搭載される電子機器類などの開発には、テストパイロットが大きな役割を果たしている。
卓越した操縦技能だけでなく、技術的な知識も必要とされる、その任務を紹介しよう。
民間のメーカーと協力し新型航空機を生み出す

試作機に乗り込み、テストフライトに向かうテストパイロットと最終調整を行う整備員。フライトごとに試験項目が異なるため、毎回入念にチェックを行う
自衛隊の新型機開発は、どのような手順で行われるのだろうか。装備品開発の一般的な流れを紹介する。
始めに、装備品のユーザーとなる自衛隊から、どのような装備品が必要なのかを伝える「開発要求」を防衛装備庁に出す。
それを踏まえて、防衛装備庁では技術的な面も含めた「開発計画」を策定する。これを防衛省内でも議論して「概算要求」を行う。財務審議などを経て政府予算案に計上、その後国会で予算が認められた段階で、初めて開発に着手できるようになる。
装備品開発の中心となる防衛装備庁では、自衛隊からの要求、過去に行われた開発、装備庁が蓄積してきた知見、経験を踏まえ、実際に設計や生産を行うメーカーに発注するための「仕様書」を作る。契約にあたっては、各メーカーから提案された構想を精査して選定を行うこともある。メーカーとの「契約」が成立したら、そこからはメーカー側での設計作業が始まる。
実際の開発作業は、基本設計、細部設計と段階を踏んで、その設計に基づいて試作機の製造を行い、少なくともフライトができるようになるまではメーカー側で行うことが、契約に含まれているのだという。
1機の開発に10年を要したことも
開発中の防衛装備庁との関わりについて、防衛装備庁で技術部門を統括する堀江防衛技監は語る。
「新型航空機開発の場合には、仕様書を作って契約して納入されたら終わり、という単純な話にはなりません。技術的にも難しいですから、われわれ装備庁の専門家や関連部隊の隊員などが開発の折々で『審査』という形でメーカー側の成果を議論するプロセスがあります」
こうして開発作業が進み、試作機が完成、納入されると、防衛装備庁および自衛隊による試験の段階がスタートする。ここからは防衛省・自衛隊がイニシアチブを取り、メーカーの協力を得ながら修正を行い、すべてをクリアすると開発終了。装備品を量産、部隊に配備して使われるという流れになる。
こうした一連の航空機の開発プロセスはどのくらい時間を要するのか。堀江技監は次のように述べた。
「航空機の場合、過去の例では1機を新規開発するのに10年ほどかかっています。もちろん個々の事例で開発期間は異なりますし、今後どうなるかはわかりませんが、かなり長いスパンで考えて作られているのです」
【堀江防衛技監】
防衛装備庁のナンバー2で、技術者のトップ。防衛技官としてF-2などの開発に関わる。2023年12月より現職
(MAMOR2024年9月号)
<文/臼井総理 写真/山田耕司(空自隊員)、星亘(堀江技監)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです