日々、厳しい任務に取り組む自衛隊員の健康と鋭気を生み出す隊員食堂。マモル本誌では連載ページ「隊員食堂」で全国の隊員食堂の自慢メニューを紹介しているが、本記事では、その調理場に注目!
陸・海・空さまざまな任地の中から、今回は熊谷基地の調理場に潜入してみた。
1400人分の食事を一度につくる、熊谷基地の調理場
イラストはイメージです
1日3食、大量の食事を提供する航空自衛隊熊谷基地(埼玉県)の隊員食堂。自衛隊最大級の厨房スペースには各種大型調理器具がずらりと並び、調理を担当する給養員が休む間もなく立ち働いている。そのありさまはまさしく戦場、自衛隊の最前線は基地の中にもあるのだ。
【熊谷基地隊員食堂情報】
喫食数:最大1400食
特徴:1度に約700人が食事できる広さ。大きな窓から光が入り明るい
雰囲気:新入隊員教育を行っているので、若い隊員が多く活気に満ちあふれている
人気メニュー:熊谷基地オリジナル空上げ(深谷ねぎを使用したオリジナルソースをかける)
熊谷基地の春から夏は“行列のできる隊員食堂”
熊谷基地には、新隊員への教育を行う第2教育群やさまざまな技能の習得を目指す第4術科学校など、各種教育機関が置かれている。そのため、隊員の胃袋を満たす隊員食堂では、普段は1回600~1000食程度の料理が、新隊員課程が始まる4月から7月の間、多いときには約1400食にまで激増する。隊員食堂の席数は約700席。
昼食の始まる11時30分前から隊員が並び、ドアが開くと瞬時に席が埋まる。そして13時に食堂が閉まるまで、ほぼ満席状態が続くのだ。1400食といってもなかなか想像しづらいが、そのボリュームは材料を見ればよく分かる。
例えば昼食に1259食の牛スジカレーを作ったときの食材は、米176キログラム、ジャガイモ約450個、タマネギ約740個、ニンジン約130本、福神漬けだけでも24キログラムを使う。こうした膨大な量の材料をもとに、給養員らが毎食の食事を隊員食堂の開場に間に合うように調理しているのだ。
調理場の舞台裏を紹介!

長さが1メートルほどある大きなスパテルを両手でしっかりつかみ、煮物を混ぜる給養員。家庭料理と違って量が膨大なので、食材を入れる、調味料を入れる、混ぜるだけでも重労働だ。

一釜でみそ汁なら600人分作れるというガス回転釜が10個並ぶ。回転することで釜を傾けることができ、大量調理でも取り出しやすくなるのだ。ふたを開けると勢いよく湯気が上がり、夏は暑い戦場と化すそう。

8時25分、調理をする給養員が調理場の一角に集まって「厨房朝礼」と呼ばれるミーティングを行う。その日に作るメニューの確認や、切り方など調理上の注意点などを確認する。

洗米から炊飯までできる連続炊飯器。この日はメニューに合わせ、五目釜めしの素を混ぜ込んで適量の水を加え、22釜分を準備。一釜で50人分のご飯が炊けるのだ。

炊き上がった五目釜めしが入った釜がベルトコンベヤーで続々と運ばれてくる。それを待ち構える給養員。五目釜めしが釜から専用容器に移されると、具材が均一になるようしゃもじで素早く混ぜ合わせていく。

丼の具材となる鶏肉は、均一の大きさに切ってオーブン皿に並べてセット。オーブンで自動的に焼き上がる。

焼き上がった鶏肉は、熱いうちに給養員によって味付けされる。焼くのは自動でも、下準備と調味に人の手は欠かせないのだ。給養員の舌と腕が試される。
(MAMOR2024年10月号)
<文/古里学 撮影/山田耕司 イラスト/園内せな 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです