「防衛装備品」というと、戦車や護衛艦や戦闘機などを思い浮かべるが、国を守る道具は、私たちに身近なモノから、「これは何?」と見ただけでは用途が分からないモノまで、多岐にわたる。
そこで、マモルでは、自衛官が任務を遂行するために、日ごろから使っていて、しかし、私たちの目に触れることが少ない道具を中心に紹介する。
「能書は必ず好筆を用う」という。はたして、国防の志士たちが駆使する道具とは?
自衛官が使う珍しい道具を一挙大公開!
防衛装備品は、国を守るための道具。それだけに、自衛隊以外ではあまり使われない特殊な装備品もたくさんあり、見ただけで興味を引かれる道具もある。
道具を知れば任務が分かる。日本の防衛に対して、多くの方に関心を持っていただきたいと考えるマモルは、魅力的(?)な道具を集めてみた。
迷彩用顔料
顔を迷彩色に塗り周囲の草木に溶け込む

<SPEC> ケースの縦:約8cm、横:約8cm、重さ:約75g
山林に潜みながら作戦を遂行するときなど、敵から見つからないように顔などに塗って擬装するための迷彩用顔料。茶、黄、緑、黒の4色を使って、周囲の植物の色調に合わせる。
汚染標旗

特殊な武器で汚染された場所を示す
特殊武器防護隊の隊員が生物兵器などで汚染された地域を表すために置く道具。青地に「BIO」と表記された旗は生物兵器で汚染された場所を示し、黄色地に「GAS」と表記された旗は有毒ガスに汚染された場所を示している。
18式個人用防護装備防護マスク/防護マスク用メガネ
有毒ガスなどから隊員の身を守るマスク

18式個人用防護装備防護マスク

防護マスク用メガネ
有毒物質などで汚染された地域で活動する際に着けるマスク。化学剤や放射性物質、生物剤などが口や目などから体内へ侵入するのを防止するために、外気を一切通さない仕様になっている。隊員の視力に合わせた専用のメガネもマスク内部に装着できる。
メモ帳
雨天の訓練時に欠かせないメモ帳
<SPEC> 縦:約10cm、横:約7.5cm、重さ:約30g
野外で命令や作戦などをほかの隊員に正確に伝達するためのメモ帳。防水加工がされており雨天の際にもメモができ、破れにくく耐久性にも優れたアイテムだ。
個人携行救急品
負傷した隊員が使用する応急処置のギア
<SPEC> 縦:約17cm、横:約9cm、重さ:約700g
戦闘に関わる陸自隊員が任務中に負傷した際に応急処置をとるための救急品が入った袋。中には包帯や止血帯、はさみ、ガーゼなどが入っていて1人で応急処置ができる。
13式空挺傘
第1空挺団が使用するパラシュート

<SPEC> 傘体直径:約1.17m、重さ:約18kg(開傘時)
落下傘(パラシュート)は、有事の際に航空機で現場まで移動し、降下・潜入してさまざまな任務を遂行する、空てい部隊に必須な装備品。
航空機から落下傘を開いて降下する第1空挺団の隊員たち
飯ごう
野外で2合のごはんが炊けるアイテム

<SPEC> 長さ:約18cm、幅:約12cm、高さ:約11cm、重さ:約310g
野外で使用する2合の米が炊ける飯ごう。野外で調理できる装備品「野外炊具1号」 で作られた料理が配給される際は食器として使用することもある。その際は飯ごうの本体にご飯、上蓋をひっくり返して汁物、中蓋に主菜や副菜を入れている。

左上:本体、右上:上蓋、中央:中蓋
儀じょう隊矯正具
儀じょう隊の新隊員の足の角度を矯正
<SPEC> 長さ:約95cm、幅:約25cm、高さ:約85cm、重さ:約1kg
儀じょう隊の新隊員に対して、教育期間中に使用される道具。整列しているときに、足を開く角度を60度に保つように矯正する道具だ。
γ線用線量率計
大気中の放射線を検知・警告する装備

特殊武器防護隊が放射線量を測定するために使用する装備。特定の地域や人、装備品が放射性物質で汚染されているかどうかを検知する。放射線を検知した場合にはブザーが鳴り、警告灯が点灯するようになっている。
携帯生物剤検知器
生物兵器を自動的に検知・識別する装置

空気中に浮遊する天然痘や炭疽菌などの有害な生物剤を自動的に検知・識別するために使用する生物剤検知器。持ち運びが可能な携帯型で素早く汚染源を特定することができる。
携帯除染器
除染剤を噴霧して装備品などを除染
化学兵器や生物兵器などで汚染された場所や装備品などを除染するための携帯型の装置。液体状の除染剤を、隊員が背負った装置から噴霧して除染する。1度の使用でトラック1台分の噴霧・除染が可能だ。
仮眠用覆い
夜間の監視任務で仮眠をとる際などに使用する

<SPEC>(展開時)縦:約150cm、横:約260cm
野営の際、テントを離れ、警戒・監視の任務に就くときや、演習などの屋外において仮眠する時などに使用。防水加工された大判のポンチョのような形で、帽子の部分が収納袋となっており、コンパクトにしまえる。

仮眠用覆いを2枚つなげて仮眠スペースを確保する陸自隊員たち
戦闘糧食 加熱用袋 簡易加熱材
陸自隊員が食べるミリメシ
戦闘糧食(さばトマト煮)

加熱用袋

簡易加熱材
有事や演習などの際に隊員に配給されるレーション(戦闘糧食)は21種類のメニューがあり、1食あたり約1000キロカロリーが摂取できる献立となっている。加熱用袋の中に水と戦闘糧食と簡易加熱材を入れれば化学反応で温められる。
土羽打ち
土のうをたたいて形成し強靭な陣地をつくる道具

<SPEC> 長さ:約40cm、幅:約10×10cm、重さ:約1kg
前線で陣地を形成する際に使う、土のうをたたいて形成する道具。台形に成形した土のうと平行四辺形に成形した土のうを交互に並べ、土羽打ちでたたきながら密着させるようにして積み上げていくと、耐久性を増した土のうによって強靭な陣地をつくることができる。
個人用暗視装置JGVS-V8
夜間の偵察などで使用する眼鏡

微量の光を増幅させて見ることのできる暗視眼鏡。夜間に周辺の偵察・監視に使用したり、敵に見つからないよう、灯りをつけずに地図を見たりするための道具。片方の目で使用する単眼式の装置で、88式鉄帽(ヘルメット)に装着して使用する。
携帯シャベル
隊員がえん体を掘るために使用する携帯シャベル


<SPEC> 長さ:約59cm(展開時)、幅:約16cm、重さ:約1㎏
陸自の隊員が、野外で敵の警戒や防護、射撃のための、えん体(穴)を掘るために使用するシャベル。コンパクトに畳める、折り畳み式となっている。
携帯シャベル袋
携帯シャベルを格納するための袋
<SPEC> 縦:約23cm、横:約16cm、重さ:約200g
携帯シャベルを入れるための袋。隊員が腰に着けているベルト(弾帯)や背のうに装着できるピンが着いていて、シャベルを格納したまま装着できる。
偽装網Ⅲ型(C型)
陣地や車両を発見されにくくする網

野外に設置された陣地や車両、火器が敵の航空機、最近は特にドローンなどから発見されにくくするために使用される擬装用の網。陣地や車両に合わせてさまざまなサイズがある。また、迷彩色というだけでなく、赤外線やレーダー波などの反射を抑え、敵から見つかりにくい素材を使用している。
※寸法などスペックの記載がないものは公表されていません
(MAMOR2024年8月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
<文/魚本拓 写真/星 亘(扶桑社)>