日本の空を守るためには、さまざまな分野で活動する専門家や技術者が必要だ。全国には4万人以上の航空自衛官が約60種の職種に分かれて活躍している。
その中から主な21の職種を選び、それぞれを担当する隊員たちの声を聞いた。今回は前半として10つの職種を紹介する。
操縦:戦闘機や輸送機などを操縦し、上空から日本の空を守る
【畠伸一郎1等空尉】
新田原基地(宮崎県)にある第305飛行隊所属のF-15パイロット。普段からトレーニングを欠かさない

上下左右に高速移動する戦闘機では、重力加速度「G」により体に負荷がかかる
「戦闘機のパイロットとして、日本の領空に侵入しようとする航空機に対処しています。それ以外では、各種訓練を通じて操縦技術向上に努めています。任務を完遂し、日本の平和に貢献したことを最前線で実感できる職種です」
宇宙:宇宙空間の安定的利用に対する脅威に対応するため監視を行う
【須田山裕伍3等空尉】
宇宙作戦群第1宇宙作戦隊・計画班、訓練係。宇宙状況把握(SSA)任務を行う

広大な宇宙の状況を把握するために、地上から観測されたデータを基に監視を行う
「日本の衛星に他国の衛星が接近することや宇宙物体の大気圏への再突入など宇宙の状況を監視し、衛星事業者や陸・海・空各自衛隊の部隊など、関係する部署に情報提供を行います。新たな知見を得られるので充実感を感じます」
航空管制:航空機を安全に運航させるため、管制塔から指示を出す
【栗林慶1等空曹】
航空保安管制群本部・防衛部運用班所属。空自航空管制員の養成に貢献。育成方法の見直しに取り組む

基地の管制塔から離着陸を行う航空機に対して指示を行う航空管制の隊員ら
「航空管制の任務は『空の交通安全を守る』こと。マイクを持ち、英語でスマートに任務をこなすイメージがありますが、交通量が増大すると汗でシャツが重くなることも……。簡単ではありませんが、やりがいの大きな仕事です」
電算機:システムの構築・保守に加えサイバー攻撃からも守る

【宮城雄太3等空曹】
航空システム通信隊システム監査隊・システム監査員。システム脆弱性の洗い出しやサイバー攻撃対処に携わる
「空自で使うあらゆるコンピュータシステムの構築、および保守を行っています。最近では、外部からの『サイバー攻撃』への対応も私たちの任務。『第5の戦場』とも呼ばれるサイバー空間を守るのも私たちの仕事なのです」
兵器管制:日本の周辺を常時監視し、戦闘機の誘導も行う
【住永由希3等空尉】
西部防空管制群防空管制隊・運用訓練班員。兵器管制官として対領空侵犯措置における戦闘機の管制を行う(写真右)
「日本の周辺を常時監視し、接近または侵入してくる航空機などを早期発見・識別し、必要に応じて戦闘機の誘導を行います。上空のパイロットと無線交信で連携を図り、通話のタイミングなどを試行錯誤しながら任務に臨んでいます」
気象:運航に必要な気象情報を収集・提供して空の安全に寄与する
【邑中健志3等空曹】
航空気象群春日気象隊・運用班員。築城基地(福岡県)、新田原基地(宮崎県)との情報共有を主に担当

操縦員が求める地域や高度に合わせ、気象データを収集・分析する邑中3曹
「飛行場における風・視程(肉眼での見通し距離)や雲の観測、観測情報資料の作成・他部隊への共有などを行います。四季折々、さまざまな気象現象に触れることができます。大変ですが、航空安全に直結する重要な任務です」
高射:迎撃ミサイルを運用し、空の脅威から基地や施設を守る
【和田修治空士長】
第5基地防空隊・射撃小隊所属。以前は看護師を目指していた。医療と同様、人を助ける仕事を志して空自に入隊

迎撃用ミサイルの操作を行う和田空士長。防空の「最後の砦」として任務にあたる
「『基地防空用地対空誘導弾』を用いて空の脅威から基地を守ることが任務です。特に私たち基地防空隊は『最後の砦』と呼ばれ、防空任務の要です。いついかなるときも防空任務を達成できるように日々訓練に励んでいます」
無線レーダー整備:基地の無線通信やデータ通信を担う

【益田叶乃空士長】
第17警戒隊所属。現在は、見島分屯基地(山口県)で地上無線整備員として勤務し、各種無線施設の保守を行う
「航空機に搭載する電子機器や、基地の無線設備、レーダーなどを整備します。私の任務は、地上に設置されている通信電子機器の保守整備がメインです。重要な任務で、自分が整備した器材が使われると誇りに感じます」
消防:航空機や建物火災に対処し、火災現場で人命救助を行う
【増田航大3等空曹】
第5航空団基地業務群施設隊・消防小隊第2分隊副分隊長。分隊長の補佐や後輩隊員の育成に取り組む

火災の消火訓練を行う消防の隊員。航空燃料火災の消火は非常に危険が伴う
「航空機や建物火災への対処、搭乗員の救出、消防用設備などの維持管理が主な任務です。隊員の命を守る専門職として、日々訓練しています。『消防員がいるから安心して飛行訓練ができる』と言われたときには報われたと感じます」
車両整備:基地で使うさまざまな車両の整備を一手に担う
【伊藤康寿3等空曹】
第5航空団・車両器材隊車両外注整備係。新田原基地(宮崎県)にて車両整備技術員として勤務する

小型車両の整備を行う伊藤3曹。車両整備は、大型車両や重機などの整備も行う
「基地で保有する車両の点検整備および故障時の修理などが主な任務です。普通車両から大型車両、特殊車両、重機など幅広い車両を扱うのが特徴です。整備した車両の使用者から感謝の言葉をかけられると達成感を感じます」
(MAMOR2024年7月号)
<文/臼井総理 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです