• 画像: 光学照準具を外した20式を持つ隊員。部隊には随時配備され89式と入れ替わる計画だ。写真/鈴木教雄

    光学照準具を外した20式を持つ隊員。部隊には随時配備され89式と入れ替わる計画だ。写真/鈴木教雄

     2020年に登場した20式5.56 ミリ(以下20式)小銃は、まだ陸上自衛隊に制式採用されたばかりの新型銃だ。現在は陸自の部隊を中心に配備が進められ、教育・訓練も始まっている。

     20式の教育内容や、慣れ親しんだ89式5.56ミリ(以下89式)小銃からの切り替えなどについて、陸自で小銃の教官を務める隊員に話を聞いた。合わせて世界の小銃と比べた20式の優秀な点を戦略アナリストのかのよしのり氏に聞いた。 

    陸自部隊を中心に配備が進み教育訓練も始まっている

     20式は2020年度より、島しょ防衛の主力部隊である水陸機動団をはじめ、全国の普通科部隊を中心に順次配備が進められ、今後、海上・航空各自衛隊にも配備される予定だ。

     20式の教育訓練について、陸上自衛隊富士学校で全国の陸自部隊で小銃の射撃術などを教える教官を育成する八木亜生都2等陸曹は次のように話す。

    「銃の取り扱いをはじめ、教育内容は89式とほとんど変わりません。ですが20式の性能を100パーセント引き出せるよう、標準装備になった照準眼鏡の取り扱いなど、新しくなった部分に対処できる教育を実施しています。照準眼鏡が故障したときのため、89式と同じ照準器(アイアンサイト)が20式にも付いているので、これを使った射撃訓練を行っています」

     2年ほど前に初めて20式に触れた八木2曹。最初は多少の戸惑いもあったと話す。「89式と比べ重心がグリップ側にあり保持しやすく、小銃を構える際の重量バランスが良いです。全てにおいて89式よりも上だと実感しました」。

    全てにおいて進化している20式の取り回しのしやすさ

    画像: 20式の射撃訓練。姿勢安定のため2脚兼用のフォアグリップをつかみ射つ

    20式の射撃訓練。姿勢安定のため2脚兼用のフォアグリップをつかみ射つ

     出動時に89式と20式、どちらかを選べるとすれば?と尋ねると「20式小銃」と即答した八木2曹。

    「20式は弾倉の交換が89式よりもスムーズに行えるようになりました。89式より部品点数が減っているので、整備にかかる時間も短くなっています。頬あての高さや銃床の位置も変えられるため体の小さい女性隊員にもフィットしやすく、体型によるハンディキャップが少なくなりました。

     また従来よりもさびにくい素材、加工がされ排水もしやすい構造のため、海から陸上へ部隊を送り込む水陸両用作戦などで使用する際のメリットも大きいです。23年度予算までに計上された20式の調達予定数は1万8130丁です。新しい小銃の普及が自衛隊の防衛力アップにつながると思います」

    【富士学校普通科部 八木亜生都2等陸曹】
    「慣れ親しんだ89式から形が変わったので最初はしっくりこなかったのですが、今は体になじんでいます」と話す富士学校普通科部の八木2曹

    20式を世界の小銃と比べると優秀な点はどこ? 戦略アナリストに聞いた

    画像: 訓練では、まず小銃の取り扱いを学ぶ。写真は弾倉の交換の訓練。何度も繰り返し会得する

    訓練では、まず小銃の取り扱いを学ぶ。写真は弾倉の交換の訓練。何度も繰り返し会得する

     20式の性能や機能は、世界各国の軍用小銃と比べてどのような点が優れていて、どのような違いがあるのだろうか?

     元自衛官で小銃に関する著書も多いかのよしのり氏に聞いてみた。

    「20式の採用にあたり、比較をしていた小銃がドイツヘッケラー&コッホ社製のHK416、そしてベルギーFNハースタル社製のSCAR-Lでした。これらの小銃を採用するか、日本の豊和工業が開発をした新型小銃を採用するか、この3種から防衛省は模索をしていました」

     かの氏によると、どの候補も性能面では問題がないとされ、最終的にコスト面などを重視して、豊和工業の国産小銃が採用されたと語る。

    「陸上自衛隊でも検証をしていますが、有効射程距離や精度といった性能面でいえば世界の主力小銃と20式はほぼ同じだと思います。ですが20式は日本人の体格に合わせ設計をした国産小銃です。この点は自衛隊向きで分があると思います」

    HK416(ドイツ/ヘッケラー&コッホ社製)

    画像: HK416(ドイツ/ヘッケラー&コッホ社製)

    <SPEC>重量:約3.1~4.2kg(モデルによって異なる)、全長:560~1037mm(モデルによって異なる)、給弾:30発入り弾倉

     光学機器などの取り付けが容易なレールを装備した小銃。アメリカ、フランス、ノルウェー各軍などが採用している。

    SCAR-L(ベルギー/FNハースタル社製)

    画像: SCAR-L(ベルギー/FNハースタル社製)

    <SPEC>重量:約3.2kg(標準モデルの場合)、全長: 825.5〜889mm、給弾:30発入り弾倉

     アメリカ特殊作戦軍の要求で開発された小銃。フランス陸軍なども採用。銃床(ストック)は20式小銃に似た形だ。

    写真/本人提供

    【戦略アナリスト かのよしのり氏】
    1950年生まれ。戦略アナリスト。著作に『銃大全』(SBクリエイティブ刊)など

    (MAMOR2024年6月号)

    <文/臼井総理 撮影/山川修一(扶桑社)、防衛省提供>

    自衛隊の小銃がすごい!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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