「働き方改革」が進められ、ワーク・ライフ・バランスを意識することで、仕事にやりがいや充実感などの幸福を強く求めるような社会になってきた。
よりやりがいのある仕事を求めて転職するのが当たり前の時代になったといえよう。
それならば、Z世代の転職先には自衛隊がピッタリなのでは?と考えたマモルは、他業種から転職して入隊した自衛官に話を聞いた。
山ノ井智史1等陸尉:不動産会社営業職から陸上自衛隊の警務科隊員へ
入隊前
入隊前の月収:約30万円
生年:1979年
学歴:一般大学卒業
前職:不動産会社営業職(2002年入社~03年退社)
家族:妻、長男
趣味:1人カラオケ
入隊後
月収:約50万円
陸上自衛隊入隊:2005年
所属部隊(現在):陸上自衛隊警務隊本部
任務:全国の陸自に関わる犯罪捜査の状況の把握、捜査指導
入隊後取得した資格:第1種大型自動車免許、第1種けん引免許、自動車整備士3級、玉掛け技能講習修了
任務の相棒:警務隊の職務を遂行するための規則などを整理したファイル
民間企業ではできない仕事を得られた
30歳まではいろいろな経験をしたいと思っていたという山ノ井1尉。大学卒業後に入社した投資用マンションの販売会社を1年で退職し、以後、期間工や酪農スタッフなど、約十業種の短期の仕事を渡り歩いた。そんなある日、自衛官募集のポスターを街頭で目にする。
「自衛隊でなら、民間の企業ではできないような経験ができると思い、お試しで入隊してみようと考えました」
2年の任期を経験するうちに国防という崇高な任務と、公務員としての安定した生活に魅力を感じていったという山ノ井1尉。試験を受けて陸曹となり、整備員として従事するなかで転機が訪れる。
「東日本大震災が発災して、自衛隊は10万人態勢で被災者のために日夜活動していたのですが、同時期に自衛官による犯罪行為に関するニュースを耳にして、非常に憤りを感じました。そしてその時に、自衛隊から犯罪を無くさなければならない、そのためには警務官にならなければならないと決意しました」と語る山ノ井1尉。
任期満了で退職のつもりが自衛隊生活18年に
その後、幹部候補生試験を希望職種の「警務科」として臨み、試験に合格し、晴れて警務官となった。
「警務隊へ転属して、よし防犯に心血を注ごうと意気込んでいたのですが、最初の任務は儀じょう隊でした。ここでは同僚に恵まれたと思います」
「あるとき、私は急に今までできていた儀礼刀の持ち方が分からなくなり“本番で落としそうだ”という不安にとらわれたことがありました。同僚に相談すると『一緒に解決しよう』と親身になって教えてくれてスランプから解放されたのです」
「現在は警務隊本部の捜査科に所属しています。全国で発生した陸自隊員による事件の報告を受け、その捜査が刑事訴訟法や犯罪捜査服務規則などの法令や規則に照らして適正か否かを確認し、必要な場合は指導を行うなどしています」
隊員たちを前にして、窃盗や暴行・傷害などの犯罪を未然に防ぐための講演をする「防犯講話」にも力を入れている。日本全国の駐屯地で講話を行い、自衛隊の犯罪を撲滅するのが、今の目標だ。
「自衛官をリクルートする地方協力本部のような活動もしたいと思っています。まずは私のように任期の間だけ挑戦してみるのをお勧めしたいです」
「任期満了後に民間企業に行ってもいいですし、自衛隊で自分に合った仕事が見つかったら、そのまま自衛隊で勤務してもいい。2年の任期で辞めようと思っていたのに、気がついたら18年も自衛隊で勤務していたという私が、その良い例です(笑)」
(MAMOR2024年4月号)
<文/魚本拓 撮影/Yuh 写真提供/防衛省>
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※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです