•  2024年1月1日16時10分。最大震度7の巨大地震が石川県の能登半島を襲った。

     発災直後には、航空自衛隊千歳基地のF-15戦闘機などが被災地の偵察のために発進。その後、石川県知事からの災害派遣要請を受け、本格的に災害派遣活動を開始し、翌2日に防衛省・自衛隊は統合任務部隊を編成、最大で約1万4000人態勢をもって、被災地で救難・支援活動を行った。2月2日には統合任務部隊を解散。

     マモルでは、その32日間に自衛隊がなにをしたかを記録した。

     前編に続いて今回は、2024年1月15日~2月2日の活動をご紹介します。

    災害派遣部隊の活動実績

     能登半島地震の発生により、自衛隊では陸・海・空各自衛隊が1つになって災害派遣活動を行う、統合任務部隊(注1)を編成した。

     これは、東日本大震災、熊本地震に次いで、大規模地震災害では3例目の編成となる。

     被災地は道路の寸断などで、報道関係者が立ち入れない場所などもあって、テレビなどではあまり目にすることができなかった活動なども含めて、自衛隊員たちが行った活動を発災日から日にちを追って紹介する。

    (注1)有事や大規模な災害などの際に陸・海・空各自衛隊の部隊を統合して編成される部隊

    1月15日:避難者などの人員輸送を空自が航空機で実施

     空自航空救難団が輪島港から避難者約20人の輸送を実施。また、海自の護衛艦『ゆうだち』、『せとぎり』に搭載のSH-60などが空自輪島分屯基地へ物資輸送を行った。

     陸自第35普通科連隊は輪島市にある諸岡公民館の破損した屋根を補修するため、ブルーシートを張った。また、継続して陸自第372施設中隊などが土砂・がれきの除去を実施。

     さらに、空自第15高射隊などが給水支援を行い、空自第3移動警戒隊などが給食支援を、陸自第13後方支援隊などが入浴支援を行った。

    1月16日:衛生隊や予備自衛官が衛生支援活動を実施

     感染症の感染が危惧される避難所などにおいて、陸自中部方面衛生隊や第10後方支援衛生隊、予備自衛官などが、珠洲市、輪島市、能登町、穴水町、七尾市で被災者への医療や防疫を行う衛生支援を実施した。

     また、空自第23警戒隊が能登空港へ被災者の2次避難のための輸送を行った。陸自第35普通科連隊などが輪島市内の集会所の屋根をブルーシートで補修する作業に従事。

     また、この日も陸・海・空多数の部隊による、給水支援、給食支援、入浴支援が行われた。

    1月17日:在日アメリカ軍のヘリコプターが被災者物資輸送支援に参加

    画像: 入間基地から小松基地まで消防車両の輸送を行う大型輸送機C-2

    入間基地から小松基地まで消防車両の輸送を行う大型輸送機C-2

     被災地から生活環境の整った場所へ避難する2次避難を支援するため、陸自中部方面航空隊、第10飛行隊、空自入間ヘリコプター空輸隊、航空救難団、第23警戒隊、第6航空団が避難者の輸送を実施。

     また、陸自第10飛行隊が宝立山と高洲山へ消防隊員2人と物資の輸送を行った。さらにこの日は、在日アメリカ軍が多用途ヘリコプターで被災者への支援物資、カップラーメンや紙おむつなどを能登空港まで輸送した。

    1月18日:輸送艦『おおすみ』などがLCACの揚陸適地を調査

    画像: 『おおすみ』で運搬した陸自の重機を大川浜に揚陸するLCAC

    『おおすみ』で運搬した陸自の重機を大川浜に揚陸するLCAC

     空自航空救難団が輪島市の鵜入漁港から輪島港へ被災者を輸送し2次避難を行った。空自第2輸送航空隊は入間基地から小松基地へと輸送機C-1で救援物資と人員を輸送。

     海自の『おおすみ』は、能登周辺にある鵜入漁港、大沢漁港など、数カ所の海岸で、海自のLCACによる物資の輸送支援に適した場所の調査を行った。

     また、空自の高射隊をはじめ、幹部候補生学校、中部航空警戒管制団など、多数の部隊がこの日も給水支援、給食支援、入浴支援を実施した。

    1月19日:道路が寸断され孤立した地域の巡回診療を実施

     陸自中部方面航空隊、空自入間ヘリコプター空輸隊、第3輸送航空隊が輪島港や能登空港などから被災者の2次避難輸送を実施。

     その際、空自第23警戒隊などが能登空港において日用品などの配布を開始。陸自第372施設中隊は珠洲市県道52号線の倒木の撤去や道路補修を行った。空自第23警戒隊が輪島病院で医療施設の運営支援を実施。

     また、海自の『あさぎり』に搭載されているSH-60により人員を輸送し、輪島市内の道路が寸断されて孤立していた地域で巡回診療を実施。また、17日に続き、在日アメリカ軍が支援物資を能登空港まで輸送した。

    1月20日:自衛隊音楽隊が避難所で慰問演奏を実施

    大型輸送機C-2(画像はイメージです 出典:https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/yusouki/C-2/index.html

     空自第2輸送航空隊が大型輸送機C-2により、能登空港から小松空港まで被災者の2次避難輸送を実施。また、陸自第33普通科連隊、空自第23警戒隊などが、珠洲市と輪島市の公民館や小学校などに物資輸送を行った。

     陸自第14普通科連隊などが珠洲市大谷町で土砂・がれきの撤去を行うとともに行方不明者の捜索を実施。

     この日は、陸自第3音楽隊、第10音楽隊、海自舞鶴音楽隊、空自中部航空音楽隊による慰問演奏が穴水町や志賀町などの避難所で行われた。

    1月21日:陸自第10飛行隊が輪島市で航空偵察活動を実施

     陸自第10施設大隊、第6施設群などが珠洲市で土砂崩れの整備を行うとともに行方不明者の捜索活動を行った。陸自第33普通科連隊などが珠洲市と輪島市で物資輸送を実施。

     空自西部高射群、中部航空警戒管制団などが給水支援を行い、陸自第13後方支援隊、空自第1航空団、第4術科学校などが給食支援を実施。

     また、陸自第10特殊武器防護隊や需品教導隊などが入浴支援を実施した。陸自第10飛行隊が珠洲市と輪島市の被害状況を確認するために航空偵察を実施した。

    1月22日:被災者休養施設となっている『はくおう』で慰問演奏を実施

     陸自第6施設群、第14普通科連隊、第10施設大隊が珠洲市で行方不明者を捜索するために土砂やがれきの撤去を行った。陸自中部方面航空隊が輪島分屯基地から小松基地へ2次避難者の輸送を行った。

     陸自中部方面衛生隊や予備自衛官などが、珠洲市と輪島市で巡回診療を行った。

     また、防衛省が被災者の休養施設としてチャーターした大型フェリー『はくおう』船内で海自舞鶴音楽隊が慰問演奏を行った。

    1月23日:各部隊が被災者の生活支援活動を実施

     空自第23警戒隊がかほく市で被災者の避難支援を実施。また、陸自第33普通科連隊、空自第6航空団などが輪島市内や能登空港などに物資輸送を実施。

     孤立状態が続く仁江町などで陸自第10施設大隊と第6施設群が土砂の撤去を、第10特殊武器防護隊などが給水支援を、空自中部航空施設隊などが給食支援を、海自舞鶴地方隊などが入浴支援を行った。

     さらに、陸自第10音楽隊が能登町の中学校で中学生や被災者のために慰問演奏を実施した。

    1月24日:DMATが使用する医薬品を搬送支援

    画像: 寸断された道路の土砂やがれきの撤去を行う陸自第10師団の隊員たち

    寸断された道路の土砂やがれきの撤去を行う陸自第10師団の隊員たち

     陸自第10施設大隊は土砂崩れで通行不能となった仁江町と高屋町の土砂やがれきの撤去を行った。また、陸自第33普通科連隊が輪島市内にある中学校や公民館などへ物資輸送を実施。

     さらに、陸自中部方面衛生隊などが珠洲市、輪島市において診療支援を行った。またこの日、同隊による、DMAT(災害派遣医療チーム)が使用する医薬品の搬送支援が実施された。

     陸自第10施設大隊は土砂崩れで通行不能となった仁江町と高屋町の土砂やがれきの撤去を行った。また、陸自第33普通科連隊が輪島市内にある中学校や公民館などへ物資輸送を実施。

     さらに、陸自中部方面衛生隊などが珠洲市、輪島市において診療支援を行った。またこの日、同隊による、DMAT(災害派遣医療チーム)が使用する医薬品の搬送支援が実施された。

    1月25日:衛生隊や後方支援連隊などが患者搬送や巡回診療を実施

     陸自第6施設群、第7施設群、第10施設大隊が珠洲市にある道の駅「すず塩田村」周辺などの土砂やがれきの撤去と行方不明者の捜索活動を、空自第23警戒隊が輪島市内で物資輸送を行った。

     また、陸自第3後方支援連隊、需品教導隊などが給水支援を、第13後方支援隊、空自第12高射隊などが給食支援を実施。

     また、海自舞鶴地方隊などが入浴支援を行った。陸自中部方面衛生隊、第10後方支援連隊などは輪島市、穴水町、七尾市で患者搬送や巡回診療を行った。

    1月26日:陸自第33普通科連隊などが患者救護や健康相談を実施

     陸自第7施設群が珠洲市で除雪作業と道路修復を行った。空自第3輸送航空隊が能登空港へ人員と資器材などを輸送支援。

     陸自第33普通科連隊と空自第23警戒隊が珠洲市と輪島市で物資輸送を、陸自第10師団司令部付隊、空自第13高射隊などが給水支援を、陸自第3後方支援連隊、空自西部航空警戒管制団などが給食支援を、海自舞鶴地方隊などが入浴支援を、陸自第33普通科連隊などが、輪島市と七尾市で患者の救護や被災者の健康相談を行った。

    1月27日:土砂・がれきの撤去と捜索活動を引き続き実施

     陸自第10施設大隊が消防や警察と連携し、道の駅「すず塩田村」周辺で行方不明となっている被災者の捜索活動やがれきの撤去を行った。

     また、陸自第33普通科連隊が輪島市と志賀町で物資輸送を実施、第10特殊武器防護隊、空自第6高射隊などが給水支援を、海自舞鶴地方隊などが入浴支援を、陸自中部方面衛生隊などが、珠洲市、輪島市、七尾市で患者の救護や被災者の健康相談を実施した。

    1月28日:生活支援を中心に被災地で活動を継続

     陸自第10施設大隊が珠洲市内の土砂崩れが起きた現場で土砂やがれきの撤去を行い、行方不明者の捜索を実施した。

     また、陸自第33普通科連隊は輪島市内の小学校などに物資輸送を行った。陸自中部方面衛生隊などは珠洲市、能登町で診察などを実施。

     またこの日も、陸・海・空の多くの部隊が給水支援や給食支援、入浴支援などを行った。

    1月29日:行方不明になっている被災者の捜索を実施

     珠洲市にある道の駅「すず塩田村」周辺で行方不明になっている被災者の捜索を行うため、陸自第10施設大隊は土砂やがれきの撤去を実施した。

     陸自第33普通科連隊と空自第23警戒隊が輪島市で物資輸送を実施。また、この日も、陸・海・空の多くの部隊が給水支援や給食支援、入浴支援などを行った。

     さらに、陸自北部方面後方支援隊が穴水町で診察などを行った。

    1月30日:被災者の生活を守るため給水・給食・入浴支援を継続

     仁江町の土砂崩れが起きた現場で、陸自第10施設大隊が土砂やがれきの撤去を行い、行方不明者を捜索。

     また、陸自第33普通科連隊と第49普通科連隊が輪島市の公民館などに物資輸送を実施。また、陸自中部方面衛生隊などが輪島市と珠洲市で被災者の医療支援などを行った。

     この日も、陸・海・空の多くの部隊が給水支援や給食支援、入浴支援などを実施。

    1月31日:輪島市や珠洲市の小学校や公民館に物資の輸送を実施

     珠洲市仁江町で陸自第10施設大隊が土砂やがれきの撤去を実施。

     また、陸自第14普通科連隊と第33普通科連隊、空自第23警戒隊などが、輪島市と珠洲市の小・中学校や公民館に物資輸送を行った。また、陸自中部方面衛生隊が輪島市と珠洲市で巡回診療などを実施した。

     この日も、陸・海・空の多くの部隊が給水支援や給食支援、入浴支援などを各所で実施。

    2月1日:被災者のニーズを踏まえ、被災者に寄り添ったきめ細やかな活動を継続

     珠洲市内で陸自第10施設大隊が警察・消防と連携して行方不明者の捜索活動を行った。また、陸自第14普通科連隊、第33普通科連隊などが、輪島市と珠洲市で物資輸送を実施。

     陸自中部方面衛生隊が輪島市と珠洲市で巡回診療などを行った。この日も陸・海・空の多くの部隊が給水支援や給食支援、入浴支援などを各所で実施した。

    2月2日:統合任務部隊から陸自中部方面隊を中心とした約1万人の態勢に移行

    画像: 志賀町文化ホールで行われた陸自第3音楽隊による慰問演奏

    志賀町文化ホールで行われた陸自第3音楽隊による慰問演奏

     2月2日に自衛隊は統合任務部隊を解散。災害派遣任務を陸自中部方面隊を中心とする約1万人の災害派遣態勢に移行。

     引き続き、被災者に寄り添った支援を行うことを決定した。

    (MAMOR2024年5月号)

    <文/魚本拓 写真提供/防衛省>

    ※当記事は2024年3月6日時点における内閣官房・防衛省・自衛隊のホームページなどの情報をもとに編集しています

    能登半島地震・統合任務部隊31日間の記録

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