•  15歳から18歳という、遊びたい盛りの青春期を、わが国を守るために、勉学と訓練に費やす若者たちがいます。

     その学び舎は、高機能化・システム化された防衛装備品を運用する自衛官となる者を育成する陸上自衛隊高等工科学校。

     親元を離れ、校内の生徒舎で規律正しい団体生活を送りながら、日々、奮闘する生徒たちにとって、年に1度の「開校祭」は、解き放たれて楽しむ貴重な時間です。

     開校祭では、日ごろのクラブ活動の成果や、生徒会主催のイベントを披露。その“青春の爆発”を3部構成でお届けします。

     前編となる今回は、午前中に開催されたドリル演技や、文化系クラブの活動の様子ををご紹介します。

    秋晴れに恵まれた開校祭で体も心も爆発!

    画像: 秋晴れに恵まれた開校祭で体も心も爆発!

    「令和5年度、開校祭を実施します!」。

     雲1つなく晴れわたった工科学校の開校祭当日、午前8時30分。生徒代表がグラウンドで高らかに開校祭の開始を宣言した。

     開校祭は、翌日に控えた同校の創立記念行事を含め、一般開放される。コロナ禍による中止や入場制限を経て、完全に一般公開されるかたちでの開催は4年ぶりとなった。

    日ごろのクラブ活動の成果を年に1度の開校祭で披露

    画像: ドリル部のパフォーマンス

    ドリル部のパフォーマンス

     生徒たちは、入学とともに、体育系、文化系両方のクラブをそれぞれ1つずつ選び入部する。文化系クラブは月曜日のみの活動となっている。

     そのほかに、学校周辺で行われる祭りなどの学外のイベントにも参加する、技術の習得を必要とする特定クラブがある。

     吹奏楽部、ドリル部、和太鼓部、サイバー・コンピュータ部がこれにあたり、これらのクラブを選んだ部員たちは、水曜日以外の週4日、1日に2時間ほどの練習や活動に励む。そうした日ごろのクラブ活動の成果を、生徒たちは開校祭のこの日に披露するのだ。

     開校祭の今年のテーマは「拡大せよ。団結の輪。これは委員長の命令だ!」。このテーマに基づき開校祭実行委員の生徒をはじめ、一般生徒も「団結の輪」を拡げ、一丸となって準備を進めてきた。

     グラウンドではドリル部の演技と「ダンスバトル」を開催。講堂では和太鼓部や吹奏楽部、弁論部、吟詠剣詩舞部の発表が行われ、多くの観客を魅了した。

     また、各文化系クラブの活動の発表、展示が行われた教室にもたくさんの人が来場。来場者のなかには生徒たちの家族の姿も。寮生活で普段は会えない息子、きょうだいの晴れの舞台を見ようと、全国各地から集まっていた。

     生徒の発表に目を細め、拍手喝采する。昼食も、この日は食堂で一斉に食べるのではなく、学校から支給された弁当を、家族と共に食べる姿が校内の随所で見られた。

    落ち着きのある統率されたパフォーマンスを見せた「ドリル部」

     ドラムの演奏に合わせて行進しながら隊形を変化させ、ライフルを使って敬礼などの複雑な動きを見せる「ファンシードリル」の演技を行うドリル部。

    画像: ドリル部キャプテンに「写真を撮らせてほしい」と依頼すると、キャプテンの「集合!」という一声で部員はすぐさま集まり、爽やかな笑顔を見せてくれた

    ドリル部キャプテンに「写真を撮らせてほしい」と依頼すると、キャプテンの「集合!」という一声で部員はすぐさま集まり、爽やかな笑顔を見せてくれた

     開校祭のオープニングとなる出番にもかかわらず、キャプテン(上写真最前列中央)の威厳のある指揮により、落ち着きのある統率されたパフォーマンスを見せた。

     29人の部員たちが十字に並ぶフォーメーションや、互いにライフルを投げての受け渡し、大音量の空包の発射など、繊細かつ気迫のこもった演技が観客を圧倒した。

    Family Voice「部員同士の深い信頼関係が見て取れた」

    画像: ドリル部キャプテン・長島拓希生徒(3学年)のご両親と妹さんはこの日のために北海道から駆けつけた

    ドリル部キャプテン・長島拓希生徒(3学年)のご両親と妹さんはこの日のために北海道から駆けつけた

    「ドリル演技は迫力があっていつ見ても感動します」と長島生徒の母。

     自身と長島生徒の兄も自衛官だという生徒の父は「本番はもちろん、練習風景が見られたのが良かった。彼と部員たちとの深い信頼関係が見て取れました」と話す。

    戦闘状況を模したジオラマを披露した「防衛(軍事)研究部」

    画像: 戦闘状況を模したジオラマを披露した「防衛(軍事)研究部」

     近代の軍事史や世界各国の軍事力に関わる研究を行うクラブ。今年の発表のテーマは「日本・中国・ロシアの戦力比較」だ。

     準備に半年を費やして各国の戦車や航空機といった装備品の数量などを調査し、軍事力を比較。部員が各国の戦闘服を身に着け、来場者に解説していた。

     写真は戦闘状況を模したジオラマに見入る、来場者の小学生に説明する部員たち。

     左から、陸自の戦闘服を着た吉野莉央生徒(3学年)、ロシア軍の戦闘服を着た白石拓跳生徒(2学年)、中国人民解放軍の戦闘服を着た熊谷慶祐生徒(3学年)。

    3人の1年生がそれぞれの主張を訴えた「弁論部」

    画像: 3人の1年生がそれぞれの主張を訴えた「弁論部」

     聴衆を前にして、決められた時間内で自分の意見を述べる訓練をする弁論部。講堂での発表では、3人の1年生がそれぞれの主張を訴えた。

     その内容は、「発声言語についての考察」と、「ルールを守ることの重要性」、「人はなぜ言い訳をするのか」について。

     弁論部のキャプテン・山田晟之生徒(3学年)は「彼ら1年生の成長が見られたので、今日の発表の出来は100点です!」と笑顔でピースサイン。

     写真は左から林田拓磨生徒(1学年)、山田生徒、安藤誠祥生徒(3学年)、澤田蓮生徒(2学年)。

    8組のバンドと3人のソロが演奏した「軽音楽部」

    画像: 8組のバンドと3人のソロが演奏した「軽音楽部」

     校内でライブを行った軽音部。8組のバンドと3人のソロが演奏した。

     入部してから楽器をはじめたという生徒も多く、週1回のクラブ活動では練習もままならないなか、皆が思い思いに演奏を楽しんでいた。

     演奏された曲は、優里やVaundy、菅田将暉など、音楽配信サービスで人気のJポップが中心だが、なかにはキーボードで久石譲の楽曲を弾く生徒も。

     写真は昼食後に演奏を行った軽音楽部の生徒たち。心地よい音楽で観客を魅了した。

    将棋・囲碁好きの人たちと対局に挑戦「囲碁・将棋部」

    画像: 将棋・囲碁好きの人たちと対局に挑戦「囲碁・将棋部」

     教室の壁には、模造紙に書かれたいくつもの詰将棋の問題や、囲碁のルール説明が張られていた。

     また、「将棋における勝利の要訣は、どのように自衛隊の指揮の要訣(リーダーの心得)に通じるか」をテーマとした研究発表も。

     体験コーナーでは、将棋・囲碁好きの人たちが部員との対局に挑戦していた。

     写真は左から十亀壮次生徒(1学年)、澁谷健呉生徒(1学年)、大谷翔馬生徒(1学年)、矢部蔵之介生徒(1学年)。

    Family Voice「小学生のときから、よく将棋を指していました」

    画像: 囲碁・将棋部の顧問の寺嶋悠紀教官(右)と将棋を指す古長谷生徒。生徒の背後で見守る生徒の父と母

    囲碁・将棋部の顧問の寺嶋悠紀教官(右)と将棋を指す古長谷生徒。生徒の背後で見守る生徒の父と母

     将棋好きの古長谷啓樹生徒(2学年)の部活はサイバー・コンピュータ部だが、囲碁・将棋部の顧問と対戦。

     生徒の父は「小学生のときから、私とよく将棋を指していました。この対局は先生が優勢ですが、なんとか頑張ってほしいですね」

    (MAMOR2024年2月号)

    <文/魚本拓 撮影/増元幸司 写真提供/防衛省>

    開校祭アルバム

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