日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は長崎県佐世保基地の「レモンステーキ」。地元の名物料理を隊員食堂でおいしく味わえるなんて! 牛肉とタマネギを炒めてさっぱりソースでからめるだけ。レモンの香りと酸味で、後味も爽やかです。
海上防衛の重要拠点、佐世保基地の任務とは
佐世保基地がある佐世保市は、かつては旧海軍の鎮守府が置かれ、軍港として栄え、現在はアメリカ海軍基地と共存する、海上防衛の重要拠点です。
当基地は市内複数の地区に所在し、各部隊を総括する佐世保地方総監部をはじめ、佐世保教育隊、佐世保警備隊など11の部隊で編成され、佐世保地方隊は2023年で創設70周年の節目の年を迎えます。
(注)旧日本海軍において、各軍港の警備と新兵の教育にあたった部隊
「佐世保バーガー」と並ぶ地元の絶品グルメ「レモンステーキ」
今回、紹介する「レモンステーキ」は、アメリカ海軍基地からレシピを聞いて作ったのが始まりとされる「佐世保バーガー」と並ぶ地元の絶品グルメ。
今では市内だけにとどまらず、長崎県内外にまで広がった料理です。いくつもの店で提供されているため、ひと口にレモンステーキといってもさまざまなのだそう。共通しているのは、日本人の口に合うように作られたしょうゆベースのレモン風味ソースです。
隊員食堂でも鉄板で提供し、肉が焼き上がる直前にソースをかけてジューと音がするのを楽しんでもらいたかったそうですが、大量調理のため、断念せざるをえませんでした。それでも店で食べるのと同じ、いえそれ以上のおいしさだと大好評なのだとか。栄養的にも、レモンのビタミンCが牛肉に含まれる鉄の吸収を促進するのでパワーアップにつながります。
副菜にはワカメサラダ、ミニグラタン、スープ、フルーツを添えるなどボリューム満点の献立ながら、爽やかな味わいは胃にもたれないと女性隊員にも喜ばれているそう。
レモンソースが爽やかで暑い季節にも食べやすくお勧めです。
「『レモンステーキ』の日は早めに食堂に向かってしまう」
「普段は小食なのですが、『レモンステーキ』の日ばかりは、ご飯の盛りを多くして、モリモリ食べてしまいますね」(3曹/女性・20代)
「佐世保基地に着任してから初めて『レモンステーキ』を食べましたが、レモンと牛肉がこんなに合うなんてビックリ!」(3曹/男性・30代)
「『レモンステーキ』の日は早めに食堂に向かってしまいます。疲れた体に、酸味の効いたさっぱりしたお肉が力をくれます」(2曹/男性・30代)
「隊員食堂に行けばおいしい料理が食べられる!」と思ってもらいたい
【海上自衛隊 佐世保基地 業務隊 防衛技官 栄養士 有馬 薫】
出身は神奈川県ですが、母の実家が佐世保という縁があり、栄養士の資格を取得してから、1988年に入隊しました。制服の格好良さに憧れていたというのも入隊の理由かもしれません(笑)。
献立作りで大切にしていることは、パッと見た全体のイメージです。主菜が洋風なら副菜も洋風にして、味がバラバラにならないよう統一感を持たせます。
彩りを意識した盛り付け、旬のものを取り入れる、できる限り地産地消を心掛ける、など工夫を凝らし、“隊員食堂に行けばおいしい料理が食べられる!”と思ってもらえるといいですね。
「レモンステーキ」のレシピを紹介!
<材料(2人前)>
牛ロース薄切り肉(食べやすく切る):300g
塩:少々
コショウ:少々
バター:10g
タマネギ(薄切り):1/3個
グリーンリーフ:適量
レタス:適量
万能ネギ(小口切り):適量
レモン(輪切り):2枚
[レモンソース]
タマネギ(すりおろす):大さじ1
しょうゆ:大さじ1
砂糖:大さじ1
酒:大さじ1
レモン汁:大さじ1/2
みりん:小さじ2
おろしニンニク:小さじ1/2
<作り方>
1:牛肉に塩、コショウして下味をつける。
2:小さめのボウルにレモンソースの材料を合わせておく。
3:熱したフライパンにバターを入れ、タマネギを中火で炒める。少し透明になったら強火にし、1を加えて色が変わるまで炒める。2を回しかけてさっと炒め合わせる。
4:器にグリーンリーフをちぎってのせ、3を盛り、万能ネギを散らしてレモンを添える。
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。
佐世保の「レモンステーキ」とは
長崎県佐世保市で1955年ごろから親しまれている郷土料理。戦後、アメリカ海軍の基地ができた影響で流行したステーキを、日本人の口に合うようにと考案されたもの。
肉厚のステーキ肉ではなく薄切り肉を使い、焼き上がる直前にレモン汁+しょうゆのソースをかけるのが特徴。店では鉄板で提供されることが多く、肉を食べ終わった後、その鉄板にご飯をのせ、残った肉汁とソースにからめて食べるのが地元流。
(MAMOR2023年10月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/星 亘(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです