軍事作戦の遂行上、重要な任務の1つが偵察だ。
古今東西の軍隊において活用される偵察任務。自衛隊には陸上自衛隊と航空自衛隊に偵察を任務とする部隊が所在するが、どのような偵察を行っているのだろうか?
安全保障環境の変化や装備品が進化し、偵察部隊もまたそれに対応をしている。偵察任務に従事する陸自の部隊を取材した。
変革期を迎えている陸上自衛隊の偵察部隊
陸上自衛隊の防衛シフトは日本列島をくまなく守る体制が長らく敷かれていたが、近年になり南西シフトが敷かれるなど新しい局面を迎えている。
時代の変化に対応する偵察隊の動きと、偵察要員を育てる教育システムについて、話を聞いてみた。
陸上自衛隊は創設以来、各師・旅団ごとに担当エリアを防衛する地域配備型の配置をしていた。だが冷戦が終結し世界のパワーバランスが変化すると、防衛省は中国の海洋進出に対応するため南西諸島の防衛を固める方針を2010年の「防衛計画の大綱(防衛大綱)」で決定する。
これにより陸自では部隊の改編・新編が実施され、偵察隊も「偵察戦闘大隊」への改編・新編が進む。
偵察戦闘大隊は情報を収集する偵察中隊と、MCVを装備し戦闘任務にあたる戦闘中隊で構成。装輪式で機動力があり戦車と同等の火力を持つMCVの配備は、偵察中に発見した敵に対する威力偵察での活躍も期待されている。
23年4月現在、全国に15個ある偵察隊のうち4個が偵察戦闘大隊に改編・新編(同年度末、新たに3個の偵察戦闘大隊が改編予定)。7個の偵察戦闘大隊と8個の偵察隊の編成になる予定だ。
偵察要員としての基礎は3カ月間の教育で学ぶ
陸自偵察要員の教育は新隊員として自衛官の基礎を身に付けたのち、機甲科に配属された隊員が偵察の知識や技能などの基本を学ぶ。期間は約3カ月間だ。
「偵察要員に必要な教育は、偵察に使う装備の取り扱いや整備、通信の基礎、戦闘訓練などです」と教官の飯野拓哉陸士長は話す。
偵察隊から偵察戦闘大隊へ改編が進むと偵察要員の教育内容も変わるのだろうか。同じく教官を務める江里口雄大3等陸曹はこう続ける。
「主要装備であるMCVなど新装備の取り扱いや整備などの教育が増えました。ですが教育の本質は変わりません。偵察要員に必要なのは、目で見た情報から相手の本質を見抜く洞察力です。基礎を教えた上でより正確な任務遂行力を指導します」
(MAMOR2023年10月号)
<文/臼井総理 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです