•  日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。

     今回は鹿児島県鹿屋航空基地の「豚骨のみそ煮込み」。骨付き豚肉、ダイコン、ニンジン、コンニャクなどに甘辛いみそ味をしっかり染み込ませた、鹿児島県定番の煮物です。ご飯が進むおふくろの味!

    かつては特攻隊が飛び立った、海上自衛隊鹿屋航空基地

    画像: かつては特攻隊が飛び立った、海上自衛隊鹿屋航空基地

     海上自衛隊鹿屋航空基地は、九州の最南端となる鹿児島県大隅半島のほぼ中央に位置し、温暖な気候と豊かな自然を生かした農業や畜産業が盛んな鹿屋市にあります。

     当地には1944年まで旧鹿屋海軍航空隊が所在し、太平洋戦争末期に多くの特別攻撃隊が飛び立ったことでも有名です。終戦後の54年、海自の発足に伴い、現在の基地が誕生。周辺海域の警戒・監視、離島からの急患輸送、ヘリコプター・パイロットの養成などを任務とする、全部で9つの部隊が配置されています。

    西郷隆盛も愛した鹿児島のご当地グルメ「豚骨のみそ煮込み」

    画像: 西郷隆盛も愛した鹿児島のご当地グルメ「豚骨のみそ煮込み」

     基地の隊員食堂で提供される「豚骨のみそ煮込み」は鹿児島県の代表的な郷土料理の1つ。その昔、薩摩武士たちが猟場や戦場で作った野外料理が始まりで、西郷隆盛の好物だったともいわれています。現在も各家庭で作られており、学校給食でも提供されているそうです。

     当基地内で勤務する隊員の約半数が県内出身のため、多くの隊員にとってなじみのある味。本来は骨付き豚肉を焼き、芋焼酎で炒りつけ、熱湯をかけて脂を抜きますが、隊員食堂では大量調理のため、ゆでることで脂抜きをしています。みそはやはり、九州で作られている麦みそがお勧め。麦特有の香ばしい風味と甘口なのが特徴です。

     また、砂糖の代わりに黒糖やザラメを使うとより一層コクが出て味わい深くなるそうです。豚軟骨で作る場合は、時間をかけて煮るため、骨もとろとろになって食べられるのだとか。濃いめの味なので、隊員食堂では酢の物やあっさりとしたあえ物、すまし汁などとともに提供されています。

    甘い味が口いっぱいに広がって…

    画像: 甘い味が口いっぱいに広がって…

    「食べた瞬間とろけるような食感。甘いながらもさっぱりとした味付けなので、整備作業で疲れた体にもすっと入りました」(3曹/男性・20代)

    「鹿児島を代表する豚骨と甘いみその優しい味わいで、遠く離れて住むお母さんの顔を思い出してしまう料理でした」(士長/女性・20代)

    「100点満点!甘い味が口いっぱいに広がり、後から鼻に抜けて浮上してくる感じです。まるでお肉の潜水艦みたいや!」(3曹/男性・30代)

    隊員に郷土料理が喜ばれる

    画像: 隊員に郷土料理が喜ばれる

    【海上自衛隊 鹿屋航空基地隊厚生隊給養班 栄養士 飯田麻衣子】

     鹿屋市の隣の垂水市出身。2001年の入隊前に勤めていた病院では約150人分の献立作成でしたが、約350人分となり、当初は戸惑いました。地産地消と旬のものを使うことを心掛けています。

     人気メニューはチキン南蛮やステーキ、麺類。ハンバーガーを個包装して提供するととくに若者には受けます。今回紹介した料理のほかにも「鶏飯」や「がね」(千切りにしたサツマイモやニンジンに衣を付けて揚げたもの)など郷土色豊かな料理も喜ばれます。「がね」という名前は見た目がカニ(鹿児島弁でがね)に似ているからだそうです。

    「豚骨のみそ煮込み」のレシピを紹介!

    <材料(3〜4人分)>
    骨付き豚肉(スペアリブ、軟骨など):400g
    ショウガ(薄切り):1かけ
    コンニャク(一口大に切り、
    熱湯に通してアク抜きする):1枚(200g)
    ダイコン(厚めのイチョウ切りにし、下ゆでする):中1/2本(500g)

    ニンジン
    (乱切りにし、下ゆでする):中1本(200g)
    麦みそ:80g
    砂糖:50g
    酒:大さじ11/2
    しょうゆ:小さじ11/2
    インゲン(塩ゆでして3、4等分に切る):2本

    <作り方>
    1:肉は1つが50gくらいの大きさに切る(家庭で骨ごと切るのは難しいため、購入する際に切ってもらう。切ってあるものはそのままの大きさでよい)。
    2:鍋にたっぷりの湯を沸かし、①を入れ、10分くらいゆでてザルに上げ、脂を抜く。
    3:鍋に5カップの水(分量外)、②とショウガを入れて強火で煮る。沸騰したら、麦みそと砂糖をそれぞれ半量加え、アクを取りながら弱火で煮込む。肉がやわらかくなったら、コンニャク、ダイコン、ニンジンを入れ、残りのみそと砂糖、酒、しょうゆを加えて弱火で1時間ほど煮込む。途中こまめにアクを取る。
    4:器に盛り、インゲンを飾る。

    注目食材:骨付き豚肉

    画像: 注目食材:骨付き豚肉

     日本全国に約400種類あるブランド豚(品種、飼料、育成環境などが審査されて認定)の中でも有名な「かごしま黒豚」。産地の鹿児島県は豚肉の飼育、生産量が日本一。

     一般に豚骨といえばラーメンのだしなどに使う肉の付いていない骨を指すことが多いが、県内では郷土料理として人気の「豚骨のみそ煮込み」に使う骨付き豚肉のことを「豚骨」と称し、市販されている。豚肉に多く含まれるビタミンB1は糖質を効率よくエネルギーに変えるため、疲労回復効果があるとされる。

    <調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林絋輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>

    (MAMOR2023年4月号)

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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