日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は長崎県福江島分屯基地の「五島盛りだくさんうどん」。自然豊かな五島列島に伝わる五島うどんにあごだしスープをかけ、牛肉のしぐれ煮などをトッピングした基地一推しの麺料理です。
世界文化遺産・五島列島にある、福江島分屯基地
長崎県の西方沖に位置する、大小合わせて100以上もの島々からなる五島列島。古くは遣唐使、近世では“隠れキリシタン”ゆかりの地が点在する、世界文化遺産の島として広く知られています。また、釣りやビーチ・リゾートを楽しめる観光地としても人気です。
航空自衛隊福江島分屯基地は五島列島最大の島である福江島の北西部にあり、周辺には歴史を感じられる建造物、美しい海岸、釣りの聖地といわれる豊かな漁場などがあります。
1954年に開庁した当基地は、第15警戒隊が所属している空自春日基地(福岡県)の分屯基地です。航空警戒監視業務を主としており、東シナ海に面する西海の要衝として領空を常時監視し、不明な航空機の早期発見に力を尽くしています。
特産品「五島うどん」を使った具だくさんメニュー
今回紹介する「五島盛りだくさんうどん」は、島の特産品である五島うどんを用い、これ1杯で自衛官のおなかが満たされる具だくさんのオリジナル料理を作ろうということから誕生したメニュー。
あごだし(九州ではトビウオをアゴと呼ぶ)を使ったスープと五島うどんの相性は抜群!さらに隊員食堂では、近海で水揚げされた魚のすり身から手作りしたさつま揚げをのせているのだそう。
栄養面と彩りを考え、牛肉のしぐれ煮、錦糸卵、野菜もトッピング。今回紹介するレシピはあったかバージョンですが、夏はゆでたうどんを水でしめ、小松菜の代わりにキュウリの千切りをのせた、冷たいスープのひんやりバージョンで提供されています。
勤務で疲れた体を癒やしてくれる1品!
隊員たちに食べた感想を聞いてみると……
「うどん好きにはたまらないもちもち食感の五島うどんが食べられてうれしい。勤務で疲れた体を癒やしてくれる1品」【士長/女性・20代】
「地元に戻ってきて久しぶりに食べた五島うどんは、隊員食堂ならではのアレンジがしてあり、おいしさ倍増でした」【1曹/男性・40代】
「あごだしの効いたスープと五島うどんの塩気、牛肉のしぐれ煮の甘さとさつま揚げの風味の相乗効果がスゴイ!」【2曹/男性・40代】
「工夫を凝らした料理を提供していきたい」
【航空自衛隊 福江島分屯基地 第15警戒隊 給養係 空士長 新垣悠人】
沖縄県出身なので、五島列島での生活は自然に受け入れることができました。入隊して4年目。現在は3人のシフト制となっていて、実際の現場では、2人で約90人分の調理をしています。自分が一番年下なので、迷惑をかけないよう、やけどや包丁の扱いに注意を払っています。
栄養バランスを考えて献立を作成してくれる栄養士の方と連携をとりながら、自分で食べておいしいと思える料理を提供していきたいです。肉料理が好まれがちなのですが、魚もフライにしたりソテーにしたりして、工夫を凝らしています。
「五島盛りだくさんうどん」のレシピを紹介
【材料(2人分)】
うどん(乾麺・あれば五島うどん):140g
さつま揚げ(市販品・食べやすく切る):60g
[牛肉のしぐれ煮]
牛もも薄切り肉:160g
タマネギ(薄切り):小1/2個(100g)
[A]
砂糖、しょうゆ、みりん:各大さじ1
酒:大さじ4
[あごだしスープ]
水:2+1/2カップ
あごだし(顆粒):大さじ1弱
みりん:小さじ1
薄口しょうゆ、塩:各小さじ1/2
[トッピング]
錦糸卵(市販品):1/2袋(20g)
小松菜(塩ゆでし、ざく切り):80g
トマトのくし形切り:2切れ
万能ネギ(小口切り):適量
【作り方】
- 牛肉のしぐれ煮を作る。鍋に[A]を入れて火にかけ、牛肉とタマネギを加えて汁気がなくなるくらいまで煮る。
- あごだしスープを作る。鍋に水とあごだし、調味料を入れて火にかけ、ひと煮立ちさせる。
- 鍋にたっぷりの湯(分量外)を沸かし、うどんを入れて表示どおりにゆで、湯をきり、器に盛る。
- (3)の上に(1)とさつま揚げ、トッピングを彩りよくのせ、(2)を器の縁から注ぎ入れる。
注目食材:五島うどん、あごだし
五島うどんは、五島列島の特産品である椿油を塗りながら生地を細長く引き延ばしていく伝統製法によって生み出される。つやがあり、直径約2ミリメートルという細さながらコシが強く、喉ごしがなめらか。
その五島うどんのおいしさを一層引き立てるのがあごだしだ。トビウオを乾燥させて取ったあごだしは、ほかの魚より雑味が少ないといわれ、上品ですっきりとした味わい。トビウオ漁の盛んな五島列島のもう1つの特産品である。
(MAMOR2023年2月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林 絋輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>