日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は長崎県大村航空基地の「浦上そぼろ」を紹介します。その昔、ポルトガル人宣教師が伝えたとされる歴史ある料理は、豚肉と野菜がたっぷり入ったヘルシーなお総菜です。
戦前からの長い歴史を持つ、長崎県大村航空基地
海上自衛隊大村航空基地は、長崎県中央部にあたる大村市にあり、陸上自衛隊竹松駐屯地に隣接しています。1956年に開設された基地は、海自のヘリコプターを有しており、第22航空群司令部、第22航空隊、第22整備補給隊、大村航空基地隊、大村システム通信分遣隊などが所在。
飛行場は戦前からの長い歴史を持ち、基地内には当時使用されていた格納庫があり、今も現役で活躍中です。
哨戒ヘリコプターSH−60Kは護衛艦に搭載され、周辺海域の警戒監視活動、情報収集活動などを実施しています。また、航空救難や大規模災害への対応なども行っています。
市内の学校給食にも定着している「浦上そぼろ」
今回紹介する料理は、長崎市の観光名所として有名な「カトリック浦上教会」がある地区に伝わる「浦上そぼろ」。中世末期にキリシタンの里といわれた長崎市浦上村(現・松山町から本原町)で、肉を食べる習慣がない時代に、豚肉と野菜を砂糖としょうゆで甘辛く食べやすいように味付けして、ポルトガル人宣教師が広めたといわれる料理です。
「そぼろ」は方言で「千切りの油炒め」のこと。本来は地元特産品の「かんぼこ」と呼ばれる魚肉練り製品を使いますが、さつま揚げで代用できるそう。モヤシを下ゆでしておくと水分が出にくくなり、シャキシャキ感が持続するそうです。
冷めてもおいしく食べられ、食物繊維も豊富で栄養価も高いため、幅広い年代に人気。市内の学校給食にも定着しています。どんな料理にも合わせやすいオールマイティーな小鉢は、常備菜としてもお勧めです。
ほんのり甘みのあるどこか懐かしい優しい味わい
隊員たちに食べた感想を聞いてみると……
「口に入れた瞬間から広がる甘辛味は、疲れた体を回復させてくれます。子どもからお年寄りまでみんなが大好きな1品です」【士長/男性・20代】
「砂糖じょうゆの甘辛い味付けになっていますが、モヤシが入ることでさっぱりと食べられ、歯応えも良くなっています」【3曹/男性・40代】
「ほんのり甘みのあるどこか懐かしい優しい味わい。ごはんのおかずにも、お酒のつまみにも合う、ヘルシーな料理です」【1尉/男性・50代】
「食材のバランスと見た目にこだわっています」
【海上自衛隊 大村航空基地隊 厚生隊給養班 栄養担当官 久松 睦】
入隊から2年間は自衛官栄養士(技術海曹)として勤務していましたが、技官栄養士の補佐役だったため、管理栄養士合格をきっかけに献立作成や栄養管理全般を任される技官の採用試験を受け直しました。それから瞬く間の26年(笑)。
献立作成でこだわっているのは、食材のバランスと見た目です。調理員長と相談しながら、デパ地下の総菜コーナーのような映える盛り付けにするなど、工夫を凝らしています。食堂に行けば、いつでもおいしい料理が待っていると思ってもらえるとうれしいです。
「浦上そぼろ」のレシピを紹介
【材料(2人分)】
豚モモ薄切り肉(3㎝幅に切る):60g
ニンジン(千切り):60g
ゴボウ(ささがき):1/2本(100g)
シラタキ(5㎝長さに切って下ゆでし、水けをきる):100g
さつま揚げ(5㎜幅に切る):1枚(40g)
モヤシ(さっと下ゆでし、水けをきる):1/2袋(100g)
だしの素(顆粒):小さじ1/3
サラダ油:大さじ1
[A]
砂糖:大さじ1強
みりん:大さじ1
しょうゆ:大さじ1+1/2
【作り方】
- フライパンにサラダ油を熱し、豚肉を炒め、色が変わったらニンジン、ゴボウ、シラタキを加えて炒め合わせる。
- 全体に油がまわったら、[A]の調味料を入れてさらに炒める。
- さつま揚げとモヤシも加えて炒め、だしの素で味を調え、器に盛る。
注目食材:かんぼこ
長崎県では「かまぼこ」のことを「かんぼこ」と呼ぶ。その代表的なかんぼこが揚げかんぼこで、魚をすりつぶして調味料などを加えて練り、揚げたもの。原料は長崎で水揚げされたイワシ、アジ、アゴ、タチウオ、イトヨリなど。形や色はいろいろあり、豊かな味わいが特徴。
煮物、おでんや、さっとあぶってマヨネーズ、一味唐辛子、コショウなどで食す。揚げているが、魚肉が原料なため、低脂肪でたんぱく質が豊富。
※長崎県アンテナショップやオンラインショップで入手可能
(MAMOR2023年1月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山川修一(扶桑社) 写真提供/防衛省>