•  毎日のようにテレビ画面に映し出される戦争の最前線シーンを見ていると、兵士の任務は迫撃砲やミサイルを撃ったり、戦車や装甲車で進撃することと理解されている方も多いのではないだろうか? 

     しかし、その数百倍の兵士が後方で戦っている。自衛隊も同様だ。領空侵犯を阻止するため緊急発進する戦闘機や、領海への侵入を防ぐために監視する護衛艦、潜水艦、哨戒機などの任務は、報道などで国民の目に触れる機会もあるが、その任務を支えるために、国民の目に触れない多くの隊員が日本を守るために戦っているのだ。そんな“あなたが知らない自衛隊の仕事”を、マンガで紹介しよう。

    制動傘の折り畳み

    戦闘機の全長約20メートルもある制動傘を人力で畳んで収納する

    画像: 戦闘機の全長約20メートルもある制動傘を人力で畳んで収納する

    【航空自衛隊第7航空団整備補給群修理隊】

     F-2戦闘機は、着陸時に機体後部にある制動傘(ドラッグシュート)をパラシュートのように開いて減速する。使用する度に制動傘は機体から外され、乾燥させた後に折り畳み、再び戦闘機に搭載される。この作業、なんと人力で行われているのだ。

     まず、傘体を構成する24枚の布を1枚ずつチェック。次にひも部分の24本をチェックして破れや傷などの異常がなければ蛇腹に畳みバッグに収納する。バッグにしっかり収納するには重さ約10キログラムの金棒でたたく必要がある。この作業を、任務で飛行した戦闘機が着陸するたび、1日に何度も繰り返す。人命に関わる装備のメンテナンスだけに気の抜けない業務だ。

    馬の装蹄

    馬術競技の馬の世話や厩舎のそうじも自衛官が担当する

    画像: 馬術競技の馬の世話や厩舎のそうじも自衛官が担当する

    【自衛隊体育学校近代五種班】

     オリンピックなどで活躍するアスリートとその指導者を育成する自衛隊体育学校。競技種目に馬術がある近代五種の選手育成では、馬の世話まで自衛官が担う。エサやりやシャワー、ブラッシング、厩舎の清掃まで全てこなすのだ。

     とくに重要視されているのが、「装蹄」というひづめのメンテナンス。有蹄類の動物にとって第2の心臓といわれるひづめを月に1回、ケアする仕事だ。ひづめから蹄鉄を取り外し、伸びたひづめを削り、新しい蹄鉄に取り替えるという作業を定期的に行うことで、馬の健康状態を良好に保つ。この新品の蹄鉄を窯で焼き、馬に合わせて成形するのも自衛官の仕事というから驚きだ。

    航空路図誌の校正

    安全に飛行、航行するための、航空路図誌、海図を作成・修正している

    画像: 安全に飛行、航行するための、航空路図誌、海図を作成・修正している

    【航空自衛隊航空保安管制群飛行情報隊、海上自衛隊横須賀造修補給所】

     自衛隊の航空機が安全に飛行するためのさまざまな情報を扱う空自の飛行情報隊では、パイロットが使用する航空路図誌の作成・修正を行っている。航空機の待機経路や進入経路を線で図示し、無線施設をそれぞれのマークで示すなど、いわば「空の地図」をつくるわけだ。修正した図は3人の自衛官がチェックして見直している。同様に、海自の横須賀造修補給所では「海の地図」=海図の改訂作業を行っている。

     こちらは、空自とは違い、トレーシングペーパーを使って海図に直接、手書きで改訂を行っている。どちらにも間違いがあれば大事故につながるのでおろそかにできない、神経をすり減らすような任務だ。

    輸送機の洗機

    巨体な輸送機は7、8人の隊員が手作業で清掃している

    画像: 巨体な輸送機は7、8人の隊員が手作業で清掃している

    【航空自衛隊航空輸送部隊】

     C-2輸送機などの航空機の飛行前後の点検整備などを担う、整備員にとっては、航空機の機体を洗う「洗機」も重要な任務の1つだ。海の上空を飛行時に浴びる塩分やゴミなどを洗い流すのだが、全長約44メートル、全高約14メートルもあるC-2をわずか7、8の整備員で行うという。

     その手順は、機体に水をかけてから洗剤を付けたモップでこすって汚れを落とし、再度、水をかけて洗い流す、というもの。水を使った冬の洗機は、寒さと冷たさとの闘いだ。だが、操縦士の視界の確保や検査時に汚れで不具合の発見を見落とすのを防ぐためにも、洗機は欠かせない重要な仕事だ。

    (MAMOR2022年2月号)

    <文/魚本拓 漫画原案/岡田真理 漫画/日辻 彩 写真提供/防衛省>

    あなたが知らない自衛隊のおしごと

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

    This article is a sponsored article by
    ''.