資格があれば50代前半まで応募可能 技能公募予備自衛官
自衛隊には「予備自衛官」という、普段は学生や社会人として生活を送り、いざというときには自衛官として任務に就く制度がある。一般人が予備自衛官になるには、まず「予備自衛官補」として採用され、教育訓練を修了した上で予備自衛官になる必要がある。この予備自衛官補には33歳まで応募できる「一般公募」のほか、高度な資格を保有する人が対象で、保有する資格に応じて18歳以上から50代前半まで応募できる「技能公募」がある。
取得が難しい資格や特技を生かせる予備自衛官
防衛省人事教育局で予備自衛官室長(取材時)の武田学先任部員は、技能公募予備自衛官についてこう説明する。
「技能公募は自衛隊の任務が多様化するに伴い、自衛隊内ではすぐに育成することが難しいプロフェッショナルを募集する予備自衛官制度です。例えば衛生分野では医師、看護師、歯科衛生士など。法務分野では弁護士、建設分野では1級・2級建築士などの資格を持っている方を求めています」
技能公募予備自衛官になるには、一般公募の予備自衛官と同様に、まず予備自衛官補の採用試験を受け、合格しなくてはならない。合格後、技能公募の場合は、2年以内に10日間、約80時間の教育訓練を履修する必要があり、教育修了後に技能公募の予備自衛官として任官する。
任官後の配属先について、武田先任部員は「技能公募の予備自衛官は、保有する資格を『特技職』として管理しています。そのため、特技職に応じて能力を生かせる部隊に配置されます。例えば、医師の特技職は『医官』となり、自衛隊の病院や衛生科の部隊などに配属されることが多いです」。
運用法を想定し訓練 技能資格も増加傾向
技能公募の予備自衛官は、その専門知識を生かした訓練も行われるが、訓練内容に課題もあると武田先任部員。「例えば建築士の資格を持った方は、陣地の構築などを行う施設科に配属され、射撃や体力錬成といった予備自衛官として必要な基礎訓練も行います。専門的な訓練は部隊が陣地に建物を作る際、どのように設計するか、地盤など建設場所に問題はないかなど、建築士としての知見が求められる場面を想定して行います。
ほかにも、例えば『語学』であれば通訳に関する訓練など、『整備』なら車両や装備品の点検・整備などの専門訓練を実施します。専門知識を生かした訓練は十分とはいえず、充実できるよう計画中です」
さらに技能公募予備自衛官に求める資格について、毎年のように追加されていると武田先任部員は話す。
「新しい分野としては、サイバーセキュリティー関連の資格を持った方や、保育士が挙げられます。ほかにも東日本大震災での教訓から、ご遺体を丁寧に扱う重要性に鑑みて納棺師や遺体衛生保全士を、またメンタルケアの重要性から臨床心理士などを追加しています」
仕事で磨いた技術や経験を生かして、長く国のために活動できるのが技能公募予備自衛官なのだ。
自衛隊が求める予備自衛官の技能資格とは?
予備自衛官補(技能)
衛生:医師、歯科医師、薬剤師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、診療放射線技師、臨床工学技士、臨床検査技師、看護師、准看護師、救急救命士、栄養士、歯科衛生士、歯科技工士など
語学:英語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語
整備:1級大型または小型自動車整備士、1級または2級二輪自動車整備士、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車整備士
システム防護(サイバー):CISSP、SSCP、情報処理安全確保支援士など
情報処理:基本情報技術者、応用情報技術者、ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリストなど
通信:第1級・2級・3級総合無線通信士、第1級・2級陸上無線技術士、アナログ・デジタル総合種工事担任者など
電気:第1種、第2種または第3種電気主任技術者免状の交付を受けている者
建設:1級または2級建築士、測量士、測量士補、木造建築士など
放射線管理:第1種または第2種放射線取扱主任者
法務:弁護士、司法書士
人事:遺体衛生保全士(エンバーマー)、納棺師、保育士
海上予備自衛官補(技能):船舶1級・2級・3級・4級・5級海技士(航海もしくは機関)
(注)応募に必要な技能資格の条件などの詳細は、地方協力本部にお問い合わせください
(MAMOR2022年10月号)
<文/臼井総理 撮影/村上淳>