•  日本が外国からの侵略を受けた場合、最後の砦となるのが、わが国土を地上戦で守る陸上自衛隊である。その任務を担う部隊は、あらゆる事態に備えてさまざまな訓練をしているが、実戦を想定した戦闘訓練を企画し、敵役を務める部隊がいる。その名も「部隊訓練評価隊」。

     彼らの役目は国防の最前線に立つ部隊を鍛え上げること。そのためには、自身が最強でなければならない。国防の魂を燃やす強者どもの訓練に同行した。

     2夜3日、昼夜ぶっ通しで行われる対抗訓練。前回は入念な準備や作戦会議を経ていよいよ戦闘が始まった3日目の早朝をリポート。今回は攻撃開始からの“戦況”を攻撃陣、防御陣それぞれの立場からお届けしよう。

    防御陣

    AM8:00

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     少し開けた高台から攻撃陣を見張る装甲車。敵の戦車や装甲車を撃破すべく、待ち構える。

     特科部隊による砲撃は、実際に砲弾を撃ち込むわけにはいかないので、各種装置で模擬する。砲の射撃距離や方角を端末に入力すると、コンピュータが射撃の効果を自動的に判定する。写真は砲弾が着弾したことを音とスモークで表す装置。

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     防御陣は、自衛隊が通常装備していない装備も使えるという想定。これは通常、機関銃などが装備されている96式装輪装甲車に、対戦車ミサイル発射装置を取り付けた対戦車用改造車両だ。

    AM9:30

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     あちこちで空包による銃声が響き始めた。前線の戦闘は本格化している。防御陣地で待ち受ける隊員の顔にも緊張感が浮かぶ。人数の少ない防御陣は、敵の攻撃を受け流すかのように後退を続け、次の防御陣地へと向かう。

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     防御陣の戦車に乗り込み、敵を待ち受ける。味方の各部隊と連携を取って戦わねば、数に劣る防御側の苦戦は必至だ。

    AM10:00

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     砲撃からの防御や、敵から発見されづらくするために掘られた戦車用の塹壕。硬い装甲を持つ戦車・装甲車にとって、下部は一番防御力が弱い。壕に入れば、弱い面を守ることができる。ここに潜み、出撃の時を待つ装甲車。

    攻撃陣

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     地雷が埋まっていそうな場所を丁寧に手で掘っていく。国際条約で禁止され、自衛隊では装備していない「対人地雷」についても、敵軍が使うことを想定して訓練が行われていた。

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     埋まっていた対戦車地雷を掘り出す隊員。竹竿などを地面に突き立てたり、不自然に盛り上がっている場所を探したりして、地雷を発見。埋まっている場所を見つけた後は、そっと手作業で掘り出していく。

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     砲塔を左右に振り、警戒しながら進撃する攻撃陣の90式戦車。この後、攻撃により破壊されたことを示す、赤旗を立てて戻っていく戦車の姿も確認できた。最前線では激戦が始まっているようだ。

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     敵との接触に備えて周囲を警戒する隊員。どこから敵が現れるか分からないためか表情は固く、敵を先に発見しようと鋭い眼光を向ける。

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     進撃予定の道にあった地雷などの障害を処理し終え、発見した防御陣の斥候を排除した攻撃陣。中隊長は総攻撃を決心し、中隊の主力が装甲車やトラックに分乗して道路沿いを疾走。一気に防御陣の本拠地に迫っていく。

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     戦死判定を受けた隊員は、ヘルメットに白いタオルを巻くか、首に白いタオルを巻いた上でヘルメットを脱ぐなどして、後に収容されるまでその場にとどまる。

    PM2:00 攻撃陣の勝利に終わる

    画像1: PM2:00 攻撃陣の勝利に終わる

     防御陣の本拠地近くで敵部隊と接触した後、空包の音が多数聞こえた。この訓練で一番大規模な銃撃戦が発生したのだ。敵の戦力をそいだ後、一時防御陣が態勢を立て直したが、数的に優位な攻撃陣の勢いは止まらない。

    画像2: PM2:00 攻撃陣の勝利に終わる

     何度も敵の攻撃を受け流し、敢闘した防御陣。攻撃陣によって本隊が突破されたあとも、残存部隊が再集結して果敢に戦いを挑んだが、衆寡敵せず。攻撃陣の破竹の勢いにジリジリと押し迫られ、後がなくなった防御陣は無念の敗北となった。

    (MAMOR2022年12月号)

    <文/臼井総理 写真/臼井総理、荒井健、村地雄介>

    戦え!防御陣VS攻撃陣 最強の敵役が国防を鍛える

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