日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回は北海道美幌駐屯地の「焼肉屋の息子丼」。隊員から絶大な人気を誇る、サーロインステーキの丼です。インパクトのある料理タイトルの謎も解き明かします。
北方防衛の拠点、陸上自衛隊美幌駐屯地
陸上自衛隊美幌駐屯地は、北海道の北東部、流氷が押し寄せるオホーツク海沿岸から30キロメートルほど内陸の、美幌峠、屈斜路湖などの大自然に恵まれた網走郡美幌町にあります。1951年に創設され、2022年で創立71周年を迎えました。
現在所属するのは、第6普通科連隊をはじめ、第101特科大隊、駐屯地業務隊、第375会計隊などの9個部隊。北方防衛を目的とし、特に道東地域を守るため、予測不能な危機に対して、いつでも対応できる態勢を整えています。
また、当駐屯地には正面の庁舎から各隊舎へ通じる「雪中廊下」と呼ばれる長さ約200メートルの廊下があります。雨や雪の日でも、ぬれずに、食堂や生活隊舎などへ移動できる便利な廊下で、現在は両側に壁がありますが、昔は壁がなく、冬季になると雪に囲まれたことからこの名が付いたのだそうです。
「焼肉屋の息子丼」名前に隠されたヒミツ
今回紹介する料理は、月に1度、隊員の誕生日を祝う日など、特別な日に提供されるメニュー。ぜいたくにもジューシーで柔らかいサーロインステーキがご飯にドーン! 元は「ステーキと目玉焼き丼」と、スペシャル料理にしては平凡すぎるネーミングでした。
そこで一度聞いたら忘れない、印象に残る料理名を考えることになったのだとか。糧食班長である長島拓志3等陸尉が美幌町で人気の創業40年の焼肉店の息子ということがよく知られており、それでは、と現在の「焼肉屋の息子丼」に改名されたのだそうです。
ステーキがのっていて豪華!
隊員たちに食べた感想を聞いてみると……
「サーロインステーキにソースが絶妙に絡んでおいしい。そしてご飯によく合う。見た目、ボリューム、味、全て良好!」【2曹/男性・40代】
「ステーキがのった豪華な丼は食べ応え十分なうえ、野菜も散りばめられていてバランスも◎。活力の源になります!」【3曹/男性・30代】
「柔らかくてジューシーなサーロインステーキは食べやすいです。目玉焼きとのコラボも食欲をそそります!」【士長/男性・20代】
「心遣いを感じてもらえたら」
【陸上自衛隊 美幌駐屯地 補給科 糧食班 管理栄養士 竹田未来】
以前は病院に勤務していたのですが、こちらに入隊して3年目になります。生まれも育ちも美幌町、実家の隣のおじさんも自衛官でした。美幌駐屯地とは縁が深いんです。病院時より1人分のボリュームが2倍以上になる献立作成に最初は戸惑いましたが、ようやく慣れました。
地元の食材を取り入れながら、手間暇をかけて作る食事への心遣いを感じてもらえるとうれしいです。オホーツク海に現れる流氷をイメージして作った当駐屯地のご当地スイーツ「オホーツク流氷ゼリー」など、オリジナル料理を考えるのも楽しいです。
「焼肉屋の息子丼」のレシピを紹介
【材料(2人分)】
ご飯:丼2杯分
乾燥パセリ:少々
[ステーキ]
ステーキ肉(サーロイン):2枚(1枚120g)
塩、黒コショウ、ガーリックパウダー:各適量
サラダ油:少々
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ステーキソース(市販品):大さじ3
大根おろし:大さじ2
[目玉焼き]
サラダ油:少々
卵:2個
[付け合わせ]
タマネギ(千切り):1/5個(40g)
紫タマネギ(千切り):少々(20g)
ニンジン(千切り)、水菜(ざく切り):各少々(各10g)
ホールコーン:大さじ1
【作り方】
1:ステーキを作る。肉はめん棒やビンの底などで少したたき、塩、黒コショウ、ガーリックパウダーをふって下味を付ける。フライパンにサラダ油を熱し、肉を入れる。焼き色が付いたらひっくり返し、少し火を弱め、好みの加減に焼いて取り出す。ボウルにⒶを混ぜ、ステーキソースを作る。
2:フライパンをきれいにし、サラダ油を熱し、卵を割り入れ、目玉焼きを作る。
3:付け合わせのタマネギと紫タマネギはさっと水にさらし、水気をきり、ほかの材料とざっくり合わせる。
4:器にご飯を盛り、③をのせ、①のステーキを食べやすく切ってのせ、ステーキソースをかける。仕上げに②をのせ、その上に乾燥パセリをふる。
注目食材:美幌町のタマネギ
さまざまな料理に合わせやすく、日持ちすることから常備野菜として人気のタマネギ。降雨量が少なく、寒暖差のある気候、ミネラル分豊富な土壌、日照時間が長いことなどがタマネギの生産に好適な北海道美幌町のタマネギは、ずっしりと大きくて色つやがよく、比較的辛みが強いが加熱すると甘みを増すのが特徴。
辛み成分のアリシンには疲労回復、コレステロール低下、血糖値上昇抑制などの効果があるといわれる。
(MAMOR2022年11月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山川修一(扶桑社) 写真提供/防衛省>